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どくはく4「失敗した煮物」

小学校5年生の時ぐらいに、煮物を作ってみたかったので、親にお願いした。
母親が、冷凍の煮物野菜と鶏肉を買ってくれて、勝手にしていいといわれたので、袋に書いてあった作り方を見て、見よう見まねで作っていた。

その中で、大きな失敗をした。
料理の知識なんて全くなかった私は、煮物にいれる「だし600ml」という意味がわからず、「だし」を醤油のことかと勘違いしてしまった。
野菜や鶏肉を鍋で炒めて、熱々の鍋の中に、大量の醤油を注いだ。
一気に焦げ付く音と煙が上がり、たちまち焦げた香りが蔓延した。
びっくりして固まっていると、母親が叫びながら飛んできた。

「アンタなにやってんの!!」

私を押しのけ、火を止めて鍋をシンクに突っ込んだ。
そして私を見て、母親は怒鳴り散らした。

「ほんとなにやってるの馬鹿じゃないの!?」
「信じられない!」
「なんでそんなことするの!!??」
「私がなんで後始末しなきゃいけないの!!」

びっくりして怖くてとんでもないことをしてしまった、と、怖くて怖くて泣いていた。
すると母は、後処理をしたのちに私の目の前で祖母に電話をかけ始めて、勢いよく大きな声で怒鳴り出した。

「お母さん聞いて! きりしまが馬鹿な事やってね!? なんで私が全部後処理しないといけないのよ!! ほんとわけわかんない!!」

怖くて怖くて、申し訳なくて、なんで自分はこんなことしてしまったんだろう、料理したいなんていわなきゃよかった、自分が悪いんんだ、怖いよ、ごめんなさいごめんなさい。
ごめんなさい、とか細い声で泣くしかなかった。
なにもできなくて、自室に戻ってわんわん泣いた。
何もできなかった。
失敗した恥ずかしさと、自尊心を傷つけられた苦しみと、母親の形相の怖さが綯い交ぜになって、訳が分からなかった。

あのときの恐ろしさが、今でも抜けない。
私はなにか悪いことをしてしまったのだろうか。

怖かったねあのときの私。
辛かったね、あのときの私。
もうゆっくり休んでいいんだよ。

毎日のコーヒー代に。