ワンオペ育児とはアイキャッチ

ストレス解消なんです


忘れられない出会いがあった。3年前のことだが、いまだにときどき思い出す。彼女はどうしているだろうか。

西武池袋線の池袋駅の階段途中で、あたりを見回してるベビーカーを持った女性がいた。階段のまさに途中だったので、持ちましょうか、と声をかけると、
「いえっ、女の人なら、自分一人で持てるんで!」と強い口調で拒絶される。

なおもキョロキョロしている。
男の人に持ってもらいたいんで、とこちらに言うでもなく言っている。

そこへ駅員さんが通りかかったので、わたし、おせっかいにもお願いしかける。じゃあ持ちましょうか、となったのだが、なぜか断る彼女。
「一人で持てるんで!」

そう? じゃあ、と年配の駅員さんは行ってしまう。
どうやら、自主的に名乗りをあげてもらいたいようだ。
その間、ベビーカー持ったまま、ぶんぶんするので、赤ちゃん、シートベルトしてるとはいえ、見ていて危ないことこの上ない。

一緒に持とうか? と何度か声をかけても、「女の人だと一人で持てないから」とか、「持ちたいの?!」と聞かれたりして。

そのうちに若いサラリーマン風の男性が通りかかる。彼女は彼を凝視する。そして彼は、ついに自分から声をかける。
彼女の願いはやっと叶った。

わたしはといえば、なんとなく去りがたく、そのやり取りをみていた。なぜかわたしまで、ベビーカーを運んでくれた男性にお礼を言ったりした。

電車に乗ると、彼女は隣に座ってきた。
申し出を断ってごめんなさい、という。
男の人にベビーカー運んでもらうのが、ストレス解消なのだ、という。
心、折れそうで、という。

子どもはベビーカーの子と、上に2歳違いの子がいるという。
上の子は、ママのために肉まんをチンしてくれることもあるそうだ。
ついでに夫のことも聞くと、フクシソウタ似で運動神経がいい、という。フクシソウタって誰だよ、とわたしは考えていた。

わたしは3駅目で降りた。
連絡先を渡そうか迷ったけど、渡さなかった。

楽しいことをしていきます。ご一緒できたら、ほんとにうれしいです!