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裂け目こそが、光の差し込む入口

こんにちは(*'▽')

台湾のオードリー・タンさん。デジタル担当政務委員(閣僚)で、現役のプログラマーということです。昨年、対談で彼女の喋っている姿を見まして、真の希望の持ち方とはこういうもんか~♪ そして物腰柔らか~♬ と魅入りました。
そして、個人的にタイムリーなことに、ダイナミック&音色豊かな大人の吹奏楽演奏会で(ノートルダムの)鐘の音を聴いてきたばかりで、自分のこれまで未踏の分野に行ってきますよという幕開け合図のようでした…!


Question
自分がすべきことを
どのように
見つけていけば
よいかわかりません。

Answer
まだ鳴ることのできる
鐘を鳴らそう。

 私がメッセージを求められた際にいつも参照している言葉は、前述したレナード・コーエンの歌『Anthem(アンセム:賛歌、祝歌という意味)』の一節です。ここでは長めに引用しましょう。

Ring the bells that still can ring
Forget your perfect offering
There is a crack in everything
That's how the light gets in
筆者拙訳:
まだ鳴ることのできる鐘を鳴らそう
完璧さを求めるのは忘れよう
すべてのものには裂け目がある
裂け目があるからこそ、そこから光が差し込むことができる

 もし、今のあなたが「まだ何かはわからないけれど、自分にとって何かすべきことがある」と感じているのなら、社会に出るのを待たずとも、できることは何かしらあります。
 今の世の中には貧困や格差や温暖化など、大きな問題がたくさんあります。
 たとえば〈SDGs〉が非常に大きな目標であるために、「今の自分には、とてもその大きな鐘を鳴らすことはできない」と思うかもしれません。でも、今のあなたにも何か小さな一つ、二つでも〈SDGs〉に貢献できることはあるはずです。
 たとえば、〈SDGs〉について学んでそれを誰かに教えてあげることはできますし、今している仕事に少し〈SDGs〉を意識した要素を加えることもできるでしょう。
 そうした意味で、私はあなたに “Ring the bells that still can ring(まだ鳴ることのできる鐘を鳴らそう)” と伝えます。あなただからこそできることはあります。

 もし、あなたが今「自分には何もできない」と思ってしまったとしたら、前項同様『Anthem』からの引用で、“There is a crack in everything. That's how the light gets in(すべてのものには裂け目がある。裂け目があるからkそ、そこから光が差し込むことができる)” という言葉を贈りたいと思います。
 何か完璧なことをしようとしても、自分にはそれだけの能力がないからといってそれを諦め、また別のことを思いついてはそれもまた諦め、「最後にはもう何もする気が起こらなくなってしまった」という人は、台湾にもいます。
 そんなあなたに聞きたいのは、「今のあなたにはどのような “ひび割れた裂け目” が見えていますか?」ということです。つまりそれは、社会の中の何かよくない部分です。あなたの友人や親戚、ご近所さんたちが、今何に苦しみ、悩んでいるかを思い浮かべたり、実際に聞いてみてください。
 それらを知り、“ひび割れた裂け目” が見えた時のあなたは、これまで「自分には、いったい何ができるのか」と嘆いていた時のあなたとは完全に違う自分になっているはずです。「“完璧な作品” を作ろう」ということではなく、「今この時に苦しんでいたり、不快な思いをしている人々の状況を、どのようにしたら少しはよくできるだろうか?」と考えられるようになっているでしょう。
 100%完璧でなくていいのです。そもそも一人の人間にできる100%の社会貢献なんて、この世には存在しないのですから。たった少し社会をよくしたり、問題を解決しただけで、たくさんの人を幸せにすることができます。
 そうなった時、あなたはすでに自分が何者であるかを証明する必要もありません。「あなたが人々を苦しみから救った」という結果ははっきり見えていますからね。
 そう、チャンスは万物の中に存在しているのです。

 実際に動いてみると、それが実現できるのかどうか、どのように実現すればよいのか、不安になったり、自信が持てなくなったりするかもしれません。
 でも、不安な気持ちこそが好奇心や新しい人や物事と出会う原動力になってくれます。
 そんな時には、『Anthem』の一節 “There is a crack in everything. That's how the light gets in(すべてのものには裂け目がある。裂け目があるからこそ、そこから光が差し込むことができる)” という言葉を思い出してください。
 挫折したり、不安になることはとてもよいことなのですよ。なぜならそれらは、“あなたが新しい可能性を迎えようとしている” ことを示しているからです。現状に100%満足しているのなら、何か新しい関心事を見つけたり、好奇心を持ち続けることはできなくなってしまいます。
 私からの具体的な提案は、「急いで解決しなくてもいいのではないでしょうか」ということです。通常、不安という感覚は好奇心と表裏一体です。急いでそれをなんとかしようとしても、辿り着けるのはごくありふれた答えでしかなくて、あなたは結果的に挫折や焦りを味わうことになってしまうでしょう。けれど、「不安でもいいじゃないか」という気持ちでそれとうまく付き合おうとしてみると、次第に挫折や焦りはどこかへ消え去っていくというものです。
 それに、急いで解決しようとさえしなければ、自分に「裂け目こそが、光の差し込む入口だ」と言い聞かせてあげることができます。物事に対する不安な気持ちこそが、好奇心の源となり、私たちが新しく誰かと知り合ったり、新しいやり方を見つけるための原動力になってくれるのです。

Anthem - Leonard Cohen


Question
これからの世界を
生きていくために、
持っておきたい
価値観はありますか?

Answer
社会が用意した
脚本通りに
振る舞わなくても
いい時代です。

 私たちがもし社会において、たった一つのラベル――父であるとか、教師であるとか、女性であるとか、そうした「身分」と呼ばれるもの――に従って行動しなければならないなら、それは社会が用意した脚本通りに振る舞うということになります。そうなると、私たちのコミュニケーションは大きく制限されたものになってしまうでしょう。「人からそう呼ばれているから、とりあえずそれらしくしておこう」という考えになってしまいますよね。
 与えられたラベルについて、特に何も考えないまま人々とコミュニケーションをとり続けることは、もしかしたらとても楽だったりするかもしれません。
 ですが残念ながら、それは本当の意味で “社会と付き合っている” とはいえないのです。
 私が考えているのは、私たちはこうしたラベルにはとらわれず、ただ「私にはどういった経験があり、あなたにはどのような経験があり、私たちの間にはどのような共通の経験や知り合いがいるのか」といったことにだけ関心を持つようになってもよいのではないかということです。
 私の父が現役引退後に、コミュニティカレッジや青少年の哲学コミュニティでさまざまな領域の新しい友人たちと出会っていったように、それぞれが実際に経験した事柄によって討論していくことこそが、“社会と付き合っている” という状態であるように思えるのです。それは、私とあなたが “実質的な状態によって理解し合える関係である” ということで、そのほうがきっと自由でいられると思います。

オードリー・タン(Audrey Tang 唐鳳)

『まだ誰も見たことのない「未来」の話をしよう』(語り/オードリー・タン、執筆/近藤弥生子、SB新書、2022年)より


初耳学でマーケティングのプロ・森岡毅さんが話していたことですが、自分のベネフィット(便益/わたしを雇えばこんないいことがありますよ)をさらに磨いていきつつ、失敗成功どちらの経験も積みながら、不安な気持ちへの耐久性をつけていくというの、いいですね(´▽`*) なにもしないという選択だけはできるだけ避けたいなぁ。
「意識」はこの瞬間にも変えることができるけれど、「行動」はこれまでの神経回路と筋肉の使い方・癖のようなものがあり、誰もがすぐに変えるのが難しいらしいですが、「すぐに変えるの難しいよ」と見越しながら覚悟を決めて変えようと意思を持つのがGood!のようです。

なんちゅうか、大きく物事を変えていく力を持つ人と、身の回りの小さなことに繊細に or 丁寧に or ケースバイケースで柔軟に変えていく力を持つ人と、そのときどきの社会貢献の役割分担のようなもんかもしれませんね。
自分のことをメインに考え過ぎ、自己愛と自己嫌悪のドツボに嵌まるようなときは、ちょっと箱の中にちんまり納まっちゃって社会との関係が切れている可能性がありますね。
本当の意味で(!)社会と付き合っていきたいもんです。

Let's gather each bringing our own experiences when we discuss☆ 

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