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1ページのショートストーリー「新しく買った古着のシャツ」

昨日の休日に古着屋で服を買った。なんの変哲もない白いポロシャツ。1980円。

職場にも着ていけるし、古くなったら普段使いもできるしと、一瞬で先のことまで考え、一応試着して、サイズを確認してから買った。

値段的にも良い買い物をしたぞと、意気揚々と家に帰り、あした職場に着ていこうと、その日は気持ちよく寝た。

次の日、まさかの寝坊。

理由は見当たらない。早く寝たし、深酒をしたわけでもない。

自己嫌悪に陥っている気持ちを抑え、急いで服を着替え、駅へダッシュした。

もちろん着たのは昨日古着屋で買った。なんの変哲もない白いポロシャツ。1980円。

嫌な気持ちもこの服のお陰で幾分和らいだ。

買って早々寝坊とは縁起はよくないが、この白いポロシャツとの戦友感は増した。

なんとかいつもより1本遅いだけの電車に乗れ、車内で呼吸を整える。

ふと昨日古着屋で買った、なんの変哲もない白いポロシャツ、1980円の胸ポケットを見ると中になにか入っている。

二つ折りのメモ。

開いてみた。文字が書いてある。

ワキの下を見てみて。

ワキの下?

なんとか見ようとするが電車が混みあっていて、手を上げることができない。

服を引っ張ってなんとか見ようとするが、なんの変哲もなく、特に変わったことはない。

ワキの下を見てみて? なんのことだろう・・・。

なんとか会社の最寄り駅に着き、ダッシュすれば間に合う時間・・・、だが・・・。

ワキの下を見てみて・・・、気になる・・・。

思い切って駅のトイレに行き、個室に入ってシャツを脱ぎ、ワキの下を見てみた。

するとそこには、小さく・・・マジックで・・・

「ワーキ」

僕は会社に急いだ。


ひとり~の小さな手~♬なにもできないけど~♬それでもみんなの手と手を合わせれば♬何かできる♪何かできる♪