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本当の理由シリーズ ~ベートーヴェンの肖像画~

「運命」や「第九(歓喜の歌)」など、現在でも知られている楽曲を上げればキリがないドイツの音楽家・ベートーヴェン。
ベートーヴェンという名前を聞いて、誰もが音楽室に飾られていたあの肖像画を思い出すことができるのではないでしょうか。そしてあの肖像画のベートーヴェンが怒っているように見えるというエピソードも。


ベートーヴェンは、元来肖像画を描かれることが好きではなかった。そこで家政婦は朝食にベートーヴェンの好きな料理をテーブルに並べ、少しでも前向きに肖像画に取り組んでもらおうと機転を利かせた。しかし、その料理があまり美味しくなった。
好きな料理ほど、期待しているし、舌が覚えているからハードルって上がっていますよね。そこでさらに怒ってしまったベートーヴェン。そのため肖像画に描かれている顔が怒っているものになってしまったという。

しかし実はもう一つ、本当の理由が隠されていたんです。


家政婦「ベートーヴェン様、本当にすいません。大好きなスープの味付けがいつもより濃くなってしまって・・・」

ベートーヴェン「いいんだよ。わたしが肖像画を描かれることが好きじゃないから、少しでも機嫌を良くしようと機転を利かせて急遽作ってくれたんだろ。その気持ちだけで十分だ。きょうは幸せな一日になりそうだ」

家政婦「そう言っていただけると私も幸せです。次からは気を付けます」

ベートーヴェン「本当に気にしないでくれ。そんなことで私は怒らないよ。きょうのは味付けが少し濃かったが美味しかったよ」

家政婦「はい、ありがとうございます。それにしても画家の方、遅いですね。もう約束の時間を30分も過ぎているのに」

ベートーヴェン「きっと何かあったんだろう。気長に待とうじゃないか。きょうは天気もいいし、蝶々を追いかけて遅くなってしまっているのかもしれないぞ。がっはっはっは~」

家政婦「まぁ、ベートーヴェン様ったら。ふふふ」


― 1時間後


家政婦「いくらなんでも遅すぎます。私ちょっとその辺を見てきます」

ベートーヴェン「まぁ慌てるな。もう来る頃だろう」

その時です。勢いよく扉が開いて、20代前半のドイツ界隈で今一番勢いに乗っている次世代のエースと呼ばれる画家が家に入ってきました。

画家「お待たせしました~」

家政婦「お待ちしておりました。お飲み物を持ってきます」

画家「きょうは肖像画ということで、雰囲気ある感じで、描かせてもらいますよ~」

ベートーヴェン「キミ、ちょっとそこに座りなさい」

画家「ここに座って描けばいいんですね、ういっス」

ベートーヴェン「描く前に言いたいことがある。まず筆を置け」

画家「なんすか?」

ベートーヴェン「まぁ遅刻したことはいいよ。誰しも遅刻をしてしまうことってあるものだ。そして遅刻して謝らないこともまぁ良しとしよう。若いうちは人に頭を下げることはなかなかできないものだ。私も人に感謝を伝えたり、素直になれたのは最近だと思う」

画家「なんすか?説教っすか?」

ベートーヴェン「その口の利き方、それもまぁ大目に見るよ。言葉とは時代と共に変わるもの。私の喋り方も私より年配の方が聞いたら、鼻に付く部分があると思う」

画家「じゃあ、なんすか。早く結論言ってくださいよ」

ベートーヴェン「まず遅刻の理由はなんだ?」

画家「寝坊っす」

ベートーヴェン「そうだよな。目が明らかに眠そうで、声も起きとらん」

画家「だから急いで来たんすよ」

ベートーヴェン「嘘を付くな!!寝坊したのに、髪の毛はメチャメチャ綺麗にセットされてるじゃねーか!!寝坊したのにシャワー浴びて、髪をセットしてくるとは何事だ!!!」

ベートーヴェンの怒鳴り声が屋敷中に響き渡りました。そして画家に掴みかかろうとしたその時、横から家政婦がベートーヴェンの体を抑え込みます。

家政婦「ベートーヴェン様、ここはわたしの顔に免じて~」

ベートーヴェン「こやつだけは断じて許すことはできん」

家政婦「ベートーヴェン様~」

女性ながらベートーヴェンの3倍は体重があろうかという家政婦の怪力で、若者画家の寸前のところでなんとかベートーヴェンを引き離します。

家政婦「ベートーヴェン様~」

ベートーヴェン「ハァハァハァ~」

画家「なんなんだよ~」

家政婦「ベートーヴェン様~」

ベートーヴェン「ハァハァハァ~」

家政婦の怪力でなんとか怒りを収めたベートーヴェン。ようやく始まった肖像画のデッサンだったが、画家には終始怒っているように見えたようで、あのような肖像画が完成してしまったのだった。まさかその画が何百年も飾られることになるとは。


この後、この家政婦が怪力を活かしてドイツ軍で大活躍するのだが、その話はまたどこかで・・・


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