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相違(KFK-38)

 札幌の自宅に戻った私は、早速ルームメイトの後藤に告げた。意外にも反応は薄かった。

 それから少し日が経って、共通の友人が訪ねて来た。偶然なのか後藤が呼んだのか定かでない。

 共通の友人は時々遊びに来ていたから、たまたまなのかも知れない。

 私は二人に猛反対された。反対された理由が釈然としなかったからだろう。今は反対理由を詳しく覚えていない。

 そういえば居酒屋のバイトを応募した時も、後藤に反対されて結局諦めた過去がある。

 私は収入が欲しいので、出来る仕事はやりたかったのだが、後藤は職業に対するプライドがあって、私にもそれを要求していたのかも知れない。(いわゆる職業差別)

 居酒屋と自衛隊は普通の人が働く場所でない。体力と根性があれば出来る仕事だから、どんな人が居るか分からない。そんな恐ろしい職場は辞めろ…という事を言われたと思う。

 私は職業による差別自体の概念が無かった。誰しも生活のために働く。職種による上下なんて無いと思っている。

 職業に対して差別意識がある後藤に、私は釈然としない。

 そういえば、後藤がバイト先で先輩にイジメを受けた時のセリフを思い出した。
『俺はイジメられた。だから後輩をイジメてやる。』

 私は『それは違う』と力説したけど、彼は釈然としなかったようだ。自分だけ嫌な目に遭って、後輩は何もされないのは不平等だとも言っていた。

 後藤とは考えの根本が異なると、改めて感じていた。そして、考えの違う二人でよく同居したもんだと今は思う。

 私の就職問題は解決せぬまま、思いがけない出来事が始まるのだった。

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