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僕の毎日は、猫に救われてはじまっていく。

とある、猫。

猫は猫。というのが、僕が猫に向き合う時のスタンスです。飼っているという感覚もないし、過剰に敬ったりしない。猫の下僕という表現も、どうもしっくりこない。

ただ対等な関係として、リスペクトを持ちながら一緒に暮らしている。だから足りない部分を補い合う。だたそれだけ。

そんな僕も、三毛猫は贔屓目でみてしまう。

きっかけは大学受験を目前に控えた僕の目の前に現れた、1匹の猫。実家近くにある食品工場のねずみ取りに引っかかるという、笑えないエピソードを持つ、1匹の猫。

捕獲した職員さんが「保健所に連れて行く前に黛さん家に要るか聞いてみようと思って」と、平然とした顔で我が家へ連れてきました。驚く暇もなく、満場一致で我が家の一員となりました。

出かける僕を阻止するホロ。いま思えばふつーに汚いよ、そこ。

兄(次男)によって「ホロ」と名付けられたその猫は、世の中の汚れを一切知らないような透明な瞳と、ほわほわの毛並みに仔猫独特の香りを纏っていました。

2年ほど前に愛猫を亡くしていた当時の僕は複雑な心境でしたが、慣れてしまった心の穴が塞がっていくような気がして、かゆいようなくすぐったいような、高校生の僕には言葉にできない心持ちでした。

若かりし頃のホロ。写真はなぜかブレブレ。

母「なんだかアダムズファミリーみたい」

根っからの動物好きな黛家に、ホロが馴染むまで時間はかかりませんでした。先代も元野良猫(いまでいう保護猫)だったので、受け入れ後の流れや動物病院との連携は慣れたもの。

左から、姉、僕、兄(次男)、兄(長男)、猫

4人姉弟と両親合わせて6人家族に猫が加わって7名。驚くくらい全員の性格も興味関心もバラバラなので、共通する趣味や話題もほとんどなく、各々が好きなことをして過ごします。
母がいうには、そんな様子が「アダムスファミリーみたい」なんだとか。(父が身体障がい者なのと、兄(長男)の全身に刺青が入っていることが少なからず影響しているようですが、黛家にとってそれは「普通」のことなので、こういった表現もお許しいただきたい)

唯一、一緒に暮らす動物(以前は犬や金魚もいた)のことだけが共通の関心ごとでした。誰が担当するでもなく、全員が新しいメンバーであるホロのことを気に掛ける。一緒に遊ぶ。寝る。姉兄が実家を出てからも、帰ってきては仕事の愚痴か「ホロ」のことばかり。大人になって離れつつあった家族の関係性を、彼女がゆるく繋ぎ止めてくれたようにも思えます。

レッグウォーマーかなにかを巻かれるホロ

2匹目のキィちゃん

ホロが家族になって数年が経った頃、「キィちゃん」という白い仔猫が我が家へやってきました。黄色い首輪をつけていたからキィちゃん。母よ、そんな安直でいいのか。

兄(長男)の職場であるトラック駐車場に段ボールで捨てられていたキィちゃん。顔もボロボロで明らかに何かの病気を患っていて、誰も引き取り手が見つからない。そんな様子を見兼ねた兄が、なんの断りもなく実家へ連れ帰ったのが、キィちゃんでした。グッジョブ兄。

キィちゃんが来る前にも猫が1匹増えていたので、これで猫は3匹目。ホロは2匹目の猫「ちん太」を我が子のように溺愛していたので、キィちゃんも仲良くなれると思っていたのですが、そう上手くはいきませんでした。

女同士だからなのか、キィちゃんが患っている病気を警戒してなのかわかりませんが、ホロがキィちゃんのことを頑なに受け付けない。キィちゃんと遊んだちん太や人間のことも、どこか避けているように見えました。

ホロとキィちゃんの溝は埋まらぬまま、キィちゃんは持病により他界。

ホロとちん太の関係性も元に戻るかと思ったのですが、死臭(?)がするのか、なぜかホロがちん太を拒むようになり、2匹だった猫が1匹と1匹になってしまいました。

発酵していく猫関係

キィちゃんの他界から1年も経たない頃、キィちゃんに似たような風貌の仔猫がやってきました。キィちゃんに似てるから「クゥちゃん」。母よ、そんな安直でいいのか。

似ているのは風貌だけではなく、ホロの対応もキィちゃんの時同様冷たいものでした。ちん太は優しい性格なので、クゥちゃんの毛繕いや授乳のフリなんかもしてあげていました。

沼猫ちん太は5番目にきた「クロ」にもモテモテ。いま暮らしているのは4匹なので、1対3の勢力図になってしまいました。

唯一の4匹集合写真

ホロもクロには優しく接していましたが、クロは歳の近いクゥちゃんと遊ぶ方が楽しいようで、その勢力図に落ち着くのは必然だったのかもしれません。そうやってついたり離れたり猫たちも、なんだか微笑ましくって。仲が悪いだけだった頃は、少し離れた距離から見守っていました。

しかしその関係性が続くなか、1匹になってしまったホロは他の猫に喧嘩を売るようになっていきました。当然のように孤立を助長するもんですから、仕方なく、ホロだけが入れる部屋を設けることに。僕の部屋です。

おはよう

広くない家ですから、必然的に一緒に過ごす時間が長くなりました。もともとベタベタしてくるタイプではなかったので、触れ合うのは帰った直後か寝起きくらい。

そのくらいの距離感が僕は好きですが、どこか寂しい気持ちもあったりして。だからせめて、すこし早く起きて触れ合う時間を増やすようになっていきました。

僕の1日は、ホロの"めやにとり"からはじまります。だいたい僕のお腹あたりで寝てるんですが、僕が目覚めるのを感じると顔の方に寄ってきて、伸びをしながら鼻ツンをします。そんなホロの頭を両手で包んだまま、ちょっと嫌がる表情を見えないフリして、両目からめやにをとる。

数秒のやりとりですが、お互いの関係性を確かめ合うこの時間が、僕にとって(願わくばホロにとっても)とても大切な時間になっています。 ごくたまに、そのくだりで顔を引っかかれることもありますが、謝ると許してくれる。たぶん。

そんな、めやにとりをきっかけにはじまる掛け合いがたまらなく愛おしくて、鬱屈としたなにかをすべて忘れさせてくれるんです。

お互いの存在を尊重しつつ、深く干渉しない。決まった時間の交感。

曖昧で健康な関係が、僕らにはちょうどいいのかもしれないね。

なんだかんだ、一番好き。


この記事は、株式会社neconote(ネコノテ)が運営する保護猫の推し活サービス『neco-note(ネコノート)』の公式noteに寄稿されます。


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