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日常に霞む囁き

現場からの帰り道、最寄り駅までの水路沿いの小径で目にとまった。iPhoneで撮影し、スクリーンの露出を上げると、薄暗い壁の際に白い花が浮かび上がった。

この写真には「壁の向こう:日常に霞む遠い囁き」という文章を添える。シュルレアリスム作品が現実の背後にある無意識の世界を探求するように、色調を抑えたこの写真もまた、日常の中に隠れた真実や感情を映し出す。モノクロームの時間は、形や陰影、質感を際立たせ、新たな視点を提供する。

普段見落としている現実の一部や、遠く離れた場所にある隠れた真実に目を向けるきっかけとなる静寂の中に浮かび上がる「壁の向こう」の世界。そこは、遠く離れた場所での悲劇や社会の奥に巣くう不条理が絶えることなく流れる水路。その際に咲く花は水路の様相を伝える囁き声だ。

昼間、橋を渡る際に目にする水路の中には水鳥や亀、魚が往来し、山から流れた蛇や見慣れない小動物も姿を見せ、時には捕食の様相を見せることもある。また、干上がった日には息絶え絶えの大きな魚や、鳥が横たわる魚をついばむ場面も見られ、こうした様相は世界の縮図として映る。

その前で咲く花が、どんな囁きをもたらすのか、静かな時間の中でその声に耳を傾けてみよう。

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