ツイッターで書いた妄想物語まとめ14

3/15
「夢を語るのは簡単に気持ちよくなるから……僕はそういうのはしないです」
三年前、卒業の集いの個人発表でたいそう先生を困らせた彼が、大成した。
高校生だるま作り選手権を三連覇し、世界大会へ。各国の伝統工芸士――イタリアの靴屋から南アフリカの機織り職人まで――をおさえ、金賞に輝いた。
授賞式に登壇した彼は、少しだけはにかみながら言った。
「夢が叶ったとか言うのは後出しじゃんけんと同じなので……僕はそういうのは言わないです」
彼が世界一のだるま師の夢を抱いていたのか/叶えたのかは分からないが、胸に輝くだるま型のピンバッヂが、雄弁なのかもしれない。
(了)
4/10 (妄想ではなく絶望的なきょうのできごと)
書影を撮ろうと思って棚の上に手を伸ばしたら、ドライフラワーの花束を落としてしまい大惨事に……

時が止まった花弁が、空中へ舞い散る。僕の手は空を切り、花はパラパラと乾いた音を立てて、床やブランケットや原稿の上に降り注いだ。おあつらえ向きに、死体発見シーンに花首が落ちている。泣いた
4/13
「僕が書きたいのはさ、夜中に読み終えて、急速に生死や神様の有無に吸引されるような気分になって、無意味にスウェットの上にウインドブレーカーを引っ掛けてフラフラコンビニに行きたくなるような。んで、朝起きたら、きのうのあれはなんだったんだって恥ずかしくなるような。そういう頽廃的なやつ」
シンプルに、意味が分からんと思った。そのときは。でも、未完で終わった奴の遺作――と呼んでいいかは分からない。なにせ俺たちは、会ったこともなければ互いの本名さえ知らなかったのだから――を読み終えて思ったのは、ピザ食いてえな、という。そして、まんまとコンビニに行った。
これを頽廃と呼ぶのかは知らないが、愛読していた小説がエタるとき、読者は書き手の生死について考えるものだと思うし、そんな感じで俺をコンビニに赴かせたお前は、割と大罪を背負ったと思う。
更新しろよ。死んだのかよ。なんか言え。文学上で、俺に勝利しろ。
(了)
4/17
きょうの僕は、自己を見つめていた。やたらに自己を見つめ、自らと己を見ていた。見ていたし見ていた。見つめていた。
「よお、少年。思春期だな」
隣のお姉さん(大学生)は、僕の背中をバンと叩き、軽く片手を上げて、颯爽と駅に向かって走って行った。
一瞬で、自己なんか見つめている場合じゃなくなった。
僕のふたつの目は、お姉さんのサラサラの髪を見つめなければならなかった。
(了)

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