シェア
奥野じゅん
2023年3月25日 22:10
「ただ幸せになりたかっただけなのにな」 彼はそう言って笑いながら、引き金を引いた。 パンという乾いた発泡音と、噴き出した血液が砂利の上に飛び散る音がして、その少しあとに、彼の体がドサリと倒れた。 舞い上がる砂ぼこりが、彼の皮膚を無遠慮に汚す。 潔癖症の彼は、生きていたらきっと、こんなことを許さない。 ペシとも払わないのを見て、『ああ、彼は死んだのだ』と思った。* 私が彼と出会った