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HEC Paris MBAに留学して良かったか?〜term1振り返り〜

2023年7月6日にフランスへ渡航してからもうすぐ半年!
前回留学しますnoteを書いてからもう半年経ったなんて信じられませんね、、それくらい時の流れが早く、とても濃密な日々を過ごしています。

この記事ではHEC Paris MBA term1の振り返りをしつつ、良かったことと学んだことを書いていきます。完全に主観なので、Startup×Designバックグラウンドの人が経験した数あるMBAライフの1つの側面としてお楽しみください。


1. 人生が豊かになった

はい、とてもありきたりな言葉からスタートです。笑
何よりも主観的な体験を通じて一次情報を得られることが一番楽しいです。人から話を聞くよりも、記事を読むよりも、その環境に自ら身を置いて自分の肌で感じることができるのが何よりも楽しい。

よく、海外MBAのROIってどうなのか論があると思いますが、まず金額的に言うと今のHEC Paris MBAの学費は€9800なので、1ユーロ=155円換算すると1,519万円です(ちなみに毎年学費は上がり続けています・・!)。プラス生活費を仮に年間420万円とすると2年滞在するとして2,359万円が必要です。かつこれに16ヶ月〜2年間仕事を離れる機会損失を含めると約4,000万円〜5000万円の投資になります。パートナーはVISA的に現地で働けないですしね。

果たしてこの金額をペイできるのか?と問われた時に人生経験に投資してるんだからわからん!というのが率直なお気持ちです。海外MBAはP/LではなくB/Sの経験ってよく言いますが、個人的な感覚としてはまさにそうで、まだterm1終わった段階ですが確実に思考の幅も世界も広がったし、自分が何が好きかをじっくり味わえて心が豊かになったし、日本や日本人を客観視できるまたとない機会だなと思います。

日本の同期の皆さん、いつもありがとうございます!

日本人ってやっぱり真面目だと思うし、日本という国はやっぱりあらゆる面でクオリティーが高いなと。あんなに清潔で、礼儀正しく、ホスピタリティーがどこにでもあって、ご飯が美味しくて、何でも安くて、安全な国どこにもないですよ。あとやっぱりEmpathize能力、つまり共感能力に長けているのは日本だなとつくづく思います。という感じで、個人的には海外MBAは時間を豊かに使える人生の機会を買っているという感覚です。

2. やっぱりLuxury Brandingは強かった

渡航前のnoteでHEC Parisを選んだ理由を3つ書きました。

1 Luxury Brandingに強く卒業生が業界トップにいること
2 多様性がある環境で座学以外の機会が多いこと
3 デザイン/クリエイティブに強い都市でパートナーと楽しく過ごせること

この1つ目の目的と環境が合致していて、Luxury・Creative・Designと経営・アントレプレナーシップの交差点の環境にいれるのがとても楽しいです。まだterm1しか過ごしていませんが、それでもやっぱりHECはLuxuryに強いなと思います。

Loro Piana CEOの講演会

中でもHECの卒業生でもあるLoro Piana CEO Damianさんの講演会は神でした。イタリアのブランドで2013年にLVMHが買収。今は売上約1,500億円。1つ前のキャリアはChristian DiorのオートクチュールのManaging Director、その前はL'Oréalのコンシューマー向けのGMを長年率いていたそうです。中でも「アントレプレナーシップの重要性」「リスクを取ることで人生は美しくなる」などの発言が印象的でした。

CEOとHECの教授

Global Economy of Luxury Industry | Experiential Luxury

短期集中授業の選択科目としてこの授業を取りました。Luxuryの名門、ESSEC Business Schoolで16年もLuxuryを教えていた教授が今年からHECでも授業を持ってくれるようになりました。内容はLuxury業界の定義と構造、国ごとのトレンド、Dior・Chanel・Hermèsなど各ブランドの売上構造など多岐に渡るものでした。びっくりしたのはスライドが全てビデオということ!さらにLuxury Club主催でExperiential Luxuryという追加講座も開講してくれました。来年はDesign Management&StrategyとHistory of the Luxury Industryも開講されるので受講する予定です。

教授のLinkenInの投稿より

Luxury Certification

HECではLVMHがスポンサーの授業とKeringがスポンサーの授業があります。Term3に開講されるのですがMBA生はオプショナルの授業になります。受講するにあたってエッセイとCVによる厳正なる選考があり、無事に通過しました。LVMHのコースでは本社行ったりLVMHからゲスト講師が来たり保有しているワイナリーに行くそうです。自分が選択したKeringのコースでは来年度はサンローランがクライアントになり、経営課題に対するプレゼンをグループで行います。そのために授業ではKeringグループからゲスト講師が来たり、本社行ったり、サンローラン美術館に授業として行く予定です。

クライアント発表の瞬間…!

他にもタイミング合わず取れませんでしたがTech Powered Luxuryというインテンシブコースがあったり、Chloé CEOのCoffee Chatもありました。 HECのグランゼコール・マスター向けにLouis VuittonとGUERLAINがGraduate Programを今年から始めたりもしています。

という感じで、本来の目的であるLuxury BrandingはやはりHECは強かったです。自分個人でもINSIDE LVMHのCertificationKering×College of Fashion, University of the Arts LondonのCertificationを取得したんですが、LVMHの方はなんと動画内でHECの教授がLuxuryを説明するというサプライズがありました。総じてDesign・Creativeを学べる環境に来れて良かったです。ちなみにヨーロッパでLuxuryで有名な学校と言えばHEC、ESSEC、Bocconiです。

3. 思った以上にFrenchTechとHECの繋がりが深かった

日本ではあまり情報が流れていないんですが、FrenchTechは今めちゃくちゃ盛り上がっています。フランス政府がスタートアップ投資を宣言して、StationFが2017年にできて、それから6年。何とフランスのユニコーン(時価総額1000億円以上の未上場スタートアップ)数は27社になり世界6位へ。何とそのうち9社はHECの卒業生が創業・共同創業した会社だそうです。ちなみに日本は11社で世界12位。Pivotの動画がわかりやすいので貼っておきます。何と先日お会いしたHECのアントレプレナーシップセンターのDirectorも出ています。

HEC ParisにはIncubator HECという独立したアクセラレータープログラムを運営する企業が存在しています。またHEC Innovation&Entrepreneurship Centerもあり、いずれもパリのスタートアップコミュニティーに入ると色々な機会で登場します。Incubator HECはStationFの中にオフィスを持っており、常時15人程度が働いており、何とStationFの30あるパートナーの中で一番初めに契約した実績があり、現在アクティブな投資対象のスタートアップは200社を超えるそうです。

Incubator HECからクローズドパーティーに招待いただいたり、先日はパリのピッチイベントで恐れながらピッチ審査員も一緒にやらせていただきました。

パーティー会場オシャレすぎ。

他にもHECではCreative Distruction Labと呼ばれるDeepTechに特化したプログラムがあり、Term3〜4にかけて正式な授業として選択することができます。(自分はKeringのCertificationを取ってしまったので残念ながら取れず・・)DeepTechスタートアップがアサインされ、長期に渡りコンサルをしていく授業です。

4. アントレプレナーシップクラブのプレジデントになれた!

海外MBAではClub活動が存在します。プロフェッショナルクラブとソーシャルクラブに分かれており、コンサルティングクラブやVC/PEクラブ、ラグジュアリークラブやワインクラブなど20個超のクラブが存在します。

クラブは自分たちでチームを組成し、役割を決め、複数チーム出るとクラス内コンペが発生することになります。

そして今回、幸運にもアントレプレナーシップクラブのプレジデント(部長)になることができました!どこのMBAにもアントレクラブはあると思いますが、HECでアントレクラブのプレジデントになった日本人は初めてな気がしています。

チーム構成としては、中国の外銀、インドのコンサル、ペルーの起業家、南アフリカのVC、中国のブランドマーケティング、フランス/カメルーンのシードInvestor、ペルーのSI/起業準備、フランスのPhDホルダー、スペインのサステナビリティー、そして自分の10人です。めちゃくちゃ多様性がありますね。

アントレプレナーシップクラブメンバー(一部)

先日は1つ上の代とともにHEC Startup Nightを開催してきました。著名なフレンチスタートアップを呼び、なんと事前登録は200人を超える盛況でした。

企画コアメンバー

またIncubator HECと連携してStationFビジットもしました。詳しくは Podcastでも話しています。また日本政府主導のJstartupによる日本スタートアップのピッチイベントもありました。

後ろにあるオブジェ、1.5億円。笑
StationF

5. 多国籍チームでMBAコンペに参加できた

フランスのビジネススクールINSEADが主催するINSEAD Product Gameと呼ばれるプロダクトコンペに参加しました。テーマはGenerative AIを使ったプロダクトの提案です。

自分はインド、チリ、ドイツ、中国のメンバーと5人チームで応募し、なんと海外MBA47チームからファイナリスト5校に残ることができました。残ったのはアメリカからWharton、ヨーロッパからOxfordとHEC、アジアからNUSとINSEAD(シンガポールキャンパス)という顔ぶれでした。HECにとっては7年ぶりの快挙だそうで、MBA Deanが会場のシンガポールまでの渡航費を全額カバーしてくれました。学校には本当に感謝ですし、挑戦を応援してくれるHECっていいですよね。

パーティーを楽しみすぎて骨折した同級生と。笑
@INSEAD Singapore

残念ながら優勝は逃しましたが、特別ゲストもGoogleのPMやAccentureのMDなど豪華でした。自分はデザイン&プロダクト担当としてFigmaでプロトタイプ作ってました。この経験だけで1つ記事を作れそうです。

渡航ついでにシンガポールのMetaアジア本社で働く親友と会って、Meta Singaporeのオフィスツアーもしてもらいました。あきらありがとう!

@Meta社員限定の屋上ガーデン

6. とにかく学校主催&学生主催のイベントが多い!

HECの特徴としてイベントがとても多いです。というのも学生の多くがキャンパスにある寮に住むので全員集まりやすいんです。ざっと書くと、

学校主催
・シャトーGALA(ウェルカムカクテル)
・HAKA(ラグビーのAll Blacks来た)
・パートナーカクテル(同伴者向け)
・フレンチタッチイベント(文化体験)
・セーヌ川クルーズパーティー(HEC全体)
・シャンティー城トリップ&GALA(修学旅行)
・MBAタレントショー(HEC's Got Talent)

MBAカウンシル&学生主催
・毎週あるキャンパスのクラブパーティー
・Japan Night(コンペ被りで今年は出れず…)
・LATAM Night
・Back to Schoolパーティー
・ハロウィンパーティー
・クリスマスパーティー
・Chinese Hot Pot
・German Octoberfest
・Canadian Dinner
・Chilean Dinner
・Mexican Party
・書ききれないので省略

各クラブ主催
ここも書ききれないので省略。ワインイベントみたいなソーシャルなものから、AirbusやBoltなどを呼ぶようなプロフェッショナルイベントが2週間に1回くらいのペースであったかも。

9月入学は160人
GALA@Château at HEC campus
映画「博士と彼女のセオリー」
2ヶ月に1回はスーツ着てる
火鍋
Chantilly trip
Chantilly Dinner
GALA@LeGrandPavillionChantilly
MBA Talent Show
クリエイティブがガチ

ということで、Term1だけでもこんなに濃密な経験ができています。来年も1/4から朝3:30集合の授業があったり、フランスの軍隊によるアウトドアリーダーシップセミナーがあったり、予算6,000万円のMBA運動会MBATの主催を始めイベント盛りだくさんです。

え?授業が全然出てこないって?安心してください、ちゃんと勉強してます。Term1で受けた授業はこちらです。

必須授業
Financial Markets
Managing Customer Value Through Marketing
Managerial Economics
Statistics&Business Analytics
Financial Accounting&Reporting

短期授業
Data Science Camp
Math Camp
Give and Receiving Feedback
NegoSim
Bach Game
Problem Solving and Communication
Global Economy of Luxury Industry
French Foundation1

キャリア講座
Career Essential
Know Yourself Foundations
Impactful CV Writing
Career Coach Session
Network for Success
Demystifying the Job Market
Build Your Personal Brand
Case Cracking Foundations
Fast Track Your Professional Success with LinkedIn

HECの特徴としてはあらゆる科目にグループワークが入っていることで、クラスメイト160人のうち、3つのクラスに分かれて授業を受けます。さらにそこから5人のチームが組まれ、基本的にアサインメントはそのチームで行います。自分はギリシャのホスピタリティー業界・インドの金融・ドイツの金融・マレーシアの人材・自分(Startup・Design)の5人でした。とてもいいチームワークでした。

この1.5倍くらいが1クラス
授業の一環で演劇したメンバー。笑

ただ個人的な感想としては、MBAに関するアカデミックを深く学びたいのであれば日本語で受けた方が吸収が早いと思います。自分もファイナンスは道具としてのファイナンスを読んだ方が早かったですし、経営を学びたいだけであれば国内MBAで十分な気がします。一方で、グローバルに働きたいと思うのであれば彼らと同じ視点に立つ必要があるので確実に海外MBAに来た方がいいと思います。

一定度の受験ハードルを乗り越えてきた留学生比率92%のクラスメイトたちとグローバルな思考回路・事例・教え方で切磋琢磨できるのは何にも変え難い経験だと自信を持って言えます。

7. 1つの国だけで生きていく時代は終わりつつある

ここからの3つは間接的な学びです。
先日、アフリカでUNCOVERED FUNDというVCを起業している友人がパリに遊びに来てくれて、そこで話していて感じたことなんですが、最近特に強い感覚を持っているのがこれです。

人生という観点で、複数に拠点を持って働くライフスタイルが増えていると感じています。日本だったら東京と福岡/京都ないしは日本とシンガポールのデュアルライフが増えていますし、世界だと例えばフランスと日本、アフリカと中東、フランスとアフリカ、台湾と日本、NYと東京、ペルーとフランス、中国とフランス、などなど全員バイネームで名前が上がります。特に自分の周りは同い年で海外でチャレンジしている人が多く、基本的に2拠点ないしは3拠点で人生を送っている人が多いです。クラスメイトは当たり前に3ヶ国語以上話せますし、なんなら複数国に不動産持っている人も。

国としての拠点を1つに限定せずに年の半分をこの国で、年の半分をこの国でこのプロジェクトをする、投資先はこの国、バカンスはここ、パートナーは日本とアフリカを行ったり来たり、みたいな人生における国の選択が柔軟な印象を受けていて、自分の人生もフランスと日本の複数拠点にしたいなという願望が生まれました。

DAY1

8. 時間の濃密さはコントロールできる

これはNYで起業している友人が話していたことなんですが、覚えておきたいので書きます。

パリに来てからというものの、なんとなく時間の感じ方が遅いなと思っていたんですね。環境がガラッと変わって、付き合う人もガラッと変わり、毎朝5:30に起きているのに、なぜか時間の流れが遅く感じてたんです。まだ半年かあ、でももう半年かあ、という感じですね。

そこで友人が、「新しい地に行くと色々なことが新鮮で、毎日が全力で、毎日が学びになる。すると主観的な時の流れが遅くなる」(意訳)と話していて、まさにこれだ!!と。

誰しも寿命は限られてるけど、時間の濃密さは自分でコントロールできる。新しい地や環境に定期的に行って人生の時間を有意義に使いたい。だから日本には帰らない、新しい体験がなくて贅沢に時間が過ぎてしまうから。

と話していて、なんとなくアンラーン、リカレント教育という言葉を使っていたんですが一気に腑に落ちました。小野寺さん、ありがとうございました!

NYの起業家とパリの起業家とただの学生

長年身を置いていた日本のデザイン業界・スタートアップ業界から離れることは寂しかったんですが、改めて完全なるアウェーの地に来ることで自分自身をメタ認知できる良いきっかけになりました。これを読んでる皆さん、あえて業界から一歩外に出ましょう。特に世界へ。

9. PLだけではなくBSを学ぶ重要性を学んだ

最後です。やっぱり海外MBAの費用対効果はP/Lだけで測れないと思います。それに現実的にP/Lだけ学んでいるとビジネスに限界があり、生み出す価値=お金にも限界があります。B/Sを学ぶことで企業としてのレバレッジが効き、企業戦略も選択肢が増えますし、何より成長の角度が変わります。

「経営すること」が圧倒的に大事だというシンプルな事実に改めて気づけたのは大きな収穫だったなと思っています。それは授業での学びもあるし、既に経営しているクラスメイトやパリでお会いしている起業家の皆さんのおかげです。

ちなみに超蛇足ですが、MBA費用の短期間での利益回収という点だけで言えば、MBA採用で現地MBB(コンサル)に行けば初年度$190Kなので日本円換算で2,700万円スタート、日本の戦コンだと1,800万円スタート、うちの学校のClass of 2022卒業後中央値は€110Kなので1,705万円です。アメリカだともっと上でしょうね。ちなみにヨーロッパのジョブマーケットはまだ悪いです。

日本から連れてきた愛猫のタフィーちゃん

はい、ということでここまで読んでいただいた方、ありがとうございました!8,500字を超える長文になってしまった。。HEC Paris MBAはTerm4までありますし、その後のインターンも6ヶ月できるのでとってもおすすめです!直近のFinancial Times European Business Schoolランキングでも1位になりました。ただしキャンパスは田舎です。パリという名前につられないように!笑

今回はパリでの暮らしwith妻&猫に全く触れられなかったので、次回はプライベート編ということで、パリに半年住んでみての感想を書きたいと思います。ではではまたお会いしましょう〜!Merci! Au revoir〜👋

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最後まで読んでいただきありがとうございます!