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国連「私たちの共通アジェンダ政策要綱5 グローバルデジタル協定:すべての人に開かれた、自由で安全なデジタルの未来を」(仮訳)

この文書は2023年5月にグテーレス国連事務総長名で提案された政策要綱「私たちの共通アジェンダ」の一つです。現在、世界中でこの提案の検討が行われています。全部で11あり、それらはこちらのサイトからダウンロードすることができます。

ここに掲載するのは、そのうちの教育に関わる文書「グローバルデジタル協定」です。仮訳なので、適宜修正を加える予定です。また、読みやすいように原文よりも改行を増やしています。


序文

私たちが直面している課題は、より強力な国際協力を通じてのみ対処できる。2024年に開催される未来サミットは、現在と将来の世代の双方にとってグローバル・ガバナンスを強化し、より良い明日のための多国間解決策に合意する機会である(総会決議76/307)。私は事務総長として、「私たちの共通アジェンダ」(A/75/982)と題する私の報告書に盛り込まれた提案に基づき、行動指向の提言という形で、サミットの準備に向けた提案を行うように要請されている。本政策要綱は、そうした提案のひとつである。加盟国からのその後の指針や、1年以上にわたる政府間協議およびマルチステークホルダー協議を考慮し、国際連合憲章、世界人権宣言、その他の国際文書の目的と原則に根ざしながら、「共通アジェンダ」で最初に提案されたアイデアを精緻化したものである。

本政策要綱の目的

本要綱は、開かれた、自由で安全な人間中心のデジタルの未来、すなわち普遍的人権に支えられ、持続可能な開発目標の達成を可能にするデジタルの未来を推進するための原則、目標、行動を定めたグローバルデジタル協定の策定を提案するものである。本要綱は、マルチステークホルダーによるデジタル協力の必要性が急務となっている分野を概説し、グローバルデジタル協定が、包括的なグローバル枠組みを提供することによって、国連創立75周年記念宣言(総会決議75/1)における「デジタル協力に関する共有ビジョンの形成」というコミットメントの実現にどのように役立つかを示している。
このような枠組みは、デジタル、データ、イノベーションの分断を克服し、持続可能なデジタルの未来に必要なガバナンスを実現するために必要なマルチステークホルダーによる行動にとって不可欠である。

デジタルの世界は分断されている。2002年、各国政府がデジタルデバイドの問題を初めて認識したとき、10億人がインターネットにアクセスしていた。今日、53億人がデジタル接続を利用しているが、地域、性別、所得、言語、年齢層を超えた格差は続いている。ヨーロッパでは約89%の人々がインターネットを利用しているが、低所得国では女性の21%しかインターネットを利用していない(1)。デジタル配信サービスは現在、世界のサービス貿易のほぼ3分の2を占め ているが、世界の一部ではアクセスに手が届かない。南アジアとサハラ以南のアフリカでは、スマートフォンの購入費用は平均月収の40%以上であり、アフリカのユーザーはモバイルデータに世界平均の3倍以上を支払っている(2)。

デジタルスキルを追跡調査している国は世界の半数に満たず、存在するデータはデジタル学習の格差の深さを浮き彫りにし ている(3) 。世界情報社会サミットから20年経った今も、デジタルデバイドは依然として溝となっている。データの格差も拡大している。データが収集され、デジタルアプリケーションで利用されるにつれ、膨大な商業的・社会的価値が生み出される。世界の月間データトラフィックは2026年までに400%以上増加すると予測されているが、その活動は少数のグローバル・プレイヤーに集中している(4)。

多くの発展途上国は、単なる生データの提供者となる一方で、データが生み出すサービスに対して対価を支払わなければならないリスクを抱えている。技術革新の格差はさらに激しい。デジタル技術は、インターネットやモバイル機器にとどまらず、自律的なインテリジェント・システムやネットワーク、生成AI、仮想現実や複合現実、分散型台帳技術(ブロックチェーンなど)、デジタル通貨、量子テクノロジーへと移行している。これらのイノベーションによって生み出される富は、一握りの大きなプラットフォームと国家に支配され、非常に不平等である(5)。

データの格差も拡大している。データが収集され、デジタルアプリケーションで利用されるにつれ、膨大な商業的・社会的価値が生み出される。世界の月間データトラフィックは2026年までに400%以上増加すると予測されているが、その活動は少数のグローバル・プレイヤーに集中している(4)。
多くの発展途上国は、単なる生データの提供者となる一方で、データが生み出すサービスに対して対価を支払わなければならないリスクを抱えている。

技術革新の格差はさらに激しい。デジタル技術は、インターネットやモバイル機器にとどまらず、自律的なインテリジェント・システムやネットワーク、生成AI、仮想現実や複合現実、分散型台帳技術(ブロックチェーンなど)、デジタル通貨、量子テクノロジーへと移行している。
これらのイノベーションによって生み出される富は、一握りの大きなプラットフォームと国家に支配され、非常に不平等である(5)。

格差は拡大している。テクノロジーへの莫大な投資は、公教育やインフラへの支出を伴っていない。デジタル技術は生産性と価値の大幅な向上をもたらしたが、その恩恵は繁栄の共有にはつながっていない(6)。1995年から2021年の間に、世界の富の増加の38%を上位1%の富が占めたが、下位50%の富はわずか2%だった(7)。デジタルテクノロジーは、より少数のエリートや企業への経済力の集中を加速させている。2022年のテクノロジー富裕層の総資産は2兆1,000億ドルで、20カ国・地域(G20)の半分以上の国の年間国内総生産を上回る(8)。

こうした隔たりの背後には、巨大なガバナンスのギャップがある。新しいテクノロジーには基本的なガードレールすらない。今日、AIチャットボットよりも玩具ソフトを市場に投入する方が難しい。このようなデジタル技術は民間が開発したものであるため、政府は公共の利益のためにそれらを規制することに常に遅れをとっている。数十年にわたる国家への投資不足の結果、ほとんどの国の公的機関はデジタルの課題を評価し、対応する能力を備えていない。人材を活用し、デジタル技術に長けた人材に公共部門で働くインセンティブを提供することで、民間企業と競争できるところはほとんどない。安全で公平なデジタル変革(DX)を支援するために最も必要とされる時期に、行政は空洞化している。

コロナウイルス感染症(COVID-19)の大流行時に見られたように、デジタル技術の利用は、私たちの生活、学習、仕事、コミュニケーションのあり方に比類なき機会をもたらした。
また、無責任で悪質な使用や犯罪的悪用、意図しない悪影響や環境への影響によって、大きな害ももたらしている。各国が技術的優位性によって政治的・軍事的優位性を競い合う中、不安定化する競争やエスカレーション、事故のリスクは高まっている。このような脅威への対処に取り組む一方で、より新しいテクノロジーは、人間を人間たらしめている特徴に関する根本的な問題を提起している。

図1 世界の情報通信技術サービスの価格格差(2022年)

データ専用モバイル・ブロードバンド(2GB)のバスケット価格が1人当たり国民総所得に占める割合(2021~2022年)
Source: International Telecommunication Union, affordability of ICT services. Available at www.itu.int/itu-d/reports/statistics/2022/11/24/ff22-affordability-of-ict-services

すべての人の利益のためにデジタルテクノロジーを活用する方法を見つけることが急務である。私たちは、デジタル技術の悪用を防止する国内および国際的なガバナンス体制を必要としている。人類の普遍的価値を反映し、地球を保護するような方法でイノベーションを形成しなければならない。
デジタルの不平等が不可逆的なグローバルな溝となることを防ぐためには、この協力はグローバルかつマルチステークホルダーでなければならない。

オープンで、自由で、安全で、人間中心のデジタルの未来、普遍的人権に支えられ、持続可能な開発目標の達成を可能にするデジタルの未来を推進するための原則、目標、行動を定めたグローバルデジタル協定の策定を提案する。私は、マルチステークホルダーによるデジタル協力が急務である3つの分野について概説する。

私は、グローバルデジタル協定が、包括的なグローバル枠組みを提供することによって、デジタル協力に関する共有ビジョンを形成するという国連創立75周年記念宣言(総会決議75/1)のコミットメントを実現する上でどのように役立つかを示した。このような枠組みは、デジタル、データ、イノベーションの分断を克服し、持続可能なデジタルの未来に必要なガバナンスを実現するために必要なマルチステークホルダーによる行動にとって不可欠である。

デジタル協力に関する共有ビジョンとは?


デジタル協力に関する共有ビジョンは、私たちのデジタルの未来を守り、前進させるために、集団で目標を設定し、行動を追求することが必要である。

デジタル格差の是正と持続可能な開発目標の推進

私たちはすでに、普遍的で有意義な接続性に関する野心的な目標を設定している。世界電気通信開発会議で合意された2022年のキガリ宣言は、その内容を詳述している。すなわち、利用可能で相互運用可能、かつ高品質で持続可能なインフラ、包括的で安価、かつ安全な通信エリア、そして人々が接続性を十分かつ安全に利用できる能力と技能である。2022年9月に開催された「変革する教育サミット」では、133の国別公約の90%がデジタル学習とスキルに関する言及を含んでいた。

フォローアップ行動には、都市部だけでなく農村部でも、教員、学習者、家族が無料でオープンな教育リソースにアクセスできるようにするための、公共のデジタル学習の機会を拡大するイニシアティブが含まれる(9)。

今必要なのは、残りの27億人(そのうちの10億人以上が子どもで、そのほとんどが後発開発途上国に住んでいる)を接続するための協調行動、ブロードバンドとモバイル機器を安価で信頼できるものにするための政策と財政投資、そして、すべての人が接続の機会を最大限に活用できるように、また雇用者と労働者がデジタル変革(DX)に適応できるように、女性、女児、若者に的を絞ったデジタル学習とスキルを強化するための世界的な取り組みである。

人間中心のデジタル変革(DX)には、供給サイドの取り組みだけでは不十分である。人々やコミュニティにとって有意義なデジタル公共財やサービスの提供を通じて、需要を喚起することも必要である。20カ国・地域(G20)を含む各国政府や、デジタル公共財アライアンスのようなマルチステークホルダー・パートナーシップは、デジタル公共インフラを開発するための選択肢を模索している。

これらの公共財は膨大な量のデータを活用するものであり、安全に管理され、効果的に利用されれば、各国の開発を加速させ、「持続可能な開発のための2030年アジェンダ」の達成を前進させることができる。

学校、医療施設、企業、文化機関がリソースを共有し、公共データを活用できるようにするためには、デジタル公共インフラはオープンで包括的、かつ安全で相互運用可能でなければならない。デジタルサービスを管理・提供する行政機関の能力を早急に構築しなければならない。

社会がこうした財に投資するにつれて、豊富な知識、ベストプラクティス、経験が蓄積されつつある。今、私たちに課せられているのは、デジタル公共インフラとサービスのための共通の枠組みと基準を作り、その提供を拡大するためのマルチステークホルダー・パートナーシップを構築し、国民と公務員がデジタル技術を利用し、そこから価値を生み出すためのスキルと機会を確保することである。

強制避難民のためのデジタル公共サービス

誰も置き去りにしないということは、現在1億300万人に上る強制避難民のために、強固で利用しやすい体制を整えるということでもある。国連難民高等弁務官事務所は、彼らのニーズを安全に伝え、人道的サービスにアクセスするための利用しやすい入り口を作り、強制避難民のコミュニティがデジタル公共サービスの開発・実施に含まれるよう、受け入れコミュニティや政府と協力している。

私たちはまた、遅れをとっている分野における開発のためのイノベーションを育成しなければならない。私たちは、質の高い教育(目標4)や産業、イノベーション、インフラ(目標9)にとどまらず、持続可能な開発目標全体の進歩を促進するデジタル技術の横断的な可能性を知っている。

私たちがまだできていないのは、大規模なデータを活用し、世界規模でアクセスできるようにし、国や国際的な開発計画やプログラム、官民パートナーシップ、電子商取引、技術起業家精神、資本投資への情報提供に活用することである。
例えば、環境に関する92の持続可能な開発目標指標のうち、41%の達成に向けた進捗状況は、相互運用可能なデータと標準化された報告の欠如により、現在グローバルに測定することができない。

このような分断を克服し、グローバルな環境データ標準を採用することは、三重の惑星の危機に対処するための行動を可能にするために不可欠である。国連環境計画が推進する「デジタル環境持続可能性連合」のようなネットワークは、共通の持続可能性基準と環境データへのアクセスを促進し、グリーンな(環境重視の)移行を加速するためのインセンティブを調整するのに役立つ。

データやデジタルインフラを国境を越えてプールし、フラッグシップデータセットや相互運用性のための標準を構築し、持続可能な開発目標のための洞察やアプリケーションを構築するために、公的機関や民間機関のデータやAIの専門知識を結集する「データコモンズ」への緊急投資が必要である。

図2 グローバルデジタル協力と持続可能な開発目標

図2 グローバルデジタル協力と持続可能な開発目標

1 貧困をなくそう
銀行やモバイル・マネーの口座とリンクしたデジタル ID は、社会保護の適用を改善し、適格な受益者によりよく届くようにすることができる。デジタル技術は、社会保護プログラムの設計における漏れ、エラー、コストの削減に役立つ可能性がある。
2 飢餓をゼロに
ドローン技術は作物を監視し、どれくらいの水が必要なのか情報を提供することができる。モバイルアプリで利用可能なソフトウェアシステムは、データを監視・分析し、農家が作物の植え付け、施肥、灌漑、収穫の時期を決定するのに役立つ。
3 すべての人に健康と福祉を
新しいプラットフォームベースのワクチン技術とスマートなワクチン製造技術は、より高品質のワクチンを大量に製造するのに役立つ。オープンソースプラットフォームは、ワクチン提供を加速し、スケールアップするのに役立つ。
4 質の高い教育をみんなに
アクセスしやすく安価な接続性により、若者はオープンで無料かつ高品質のデジタル・スキルとトレーニング・プラットフォームを利用することができる。スマートなデジタル・プラットフォームは、現地の言語でアクセスできるようにし、国際的に認知された基準や認証とカリキュラムを整合させるために利用することができる。
5 ジェンダー平等を実現しよう
接続性は、女性と女児が自分たちの安全と発展のために情報にアクセスし、コミュニケーションをとることを可能にする。女児が支援サービスを利用したり、性と生殖に関する健康について学んだり、自分の声を表現したりすることができる。
6 安全な水とトイレを世界中に
モノのインターネット(IoT)に基づく精密な灌漑や漏水管理システムは、水資源の監視と管理を可能にする。都市部では、AIシステムが、雨の予報や屋根の数などのデータを利用して、雨の流出量を決定する。
7 エネルギーをみんなに。そしてクリーンに
次世代のデジタル・ネットワークはエネルギー消費量が少なく、スマート・グリッドは電化とより安価な接続をサポートすることができる。AI技術は電気設備の予知保全に利用でき、自動バックアップを可能にし、停電を制限する。
8 働きがいも経済成長も
インターネットの利用可能性は雇用の拡大につながる。インターネットが利用可能な地域では、労働力人口と賃金雇用が増加する。スマートフォンでの現地語ビデオや意思決定支援アプリケーションの利用は、より良い雇用をもたらす個別化されたアドバイスを支援する。
9 産業と技術革新の基盤を作ろう
モバイルデジタル技術は、質の高い通信インフラとネットワークをサービスが行き届いていない遠隔地や農村部にまで拡大することを可能にしている。データとAIのテクノロジーは、農業や製造業などの主要セクターにおけるイノベーションと生産性を加速させることができる。
10 人や国の不平等をなくそう
デジタル公共財やモバイルマネーのようなアプリケーションは、女性や少女、農村コミュニティ、避難民を含む社会のすべての構成員にとって、金融やその他のサービスへのアクセスを可能にしている。
11 住み続けられるまちづくりを
インテリジェント・システムは、遠隔センサーからの情報を活用して交通信号を誘導し、都市部における通勤・通学者の効率的な流れを最大化する。また、交通弱者や十分なサービスを受けていないコミュニティのために、安全な交通手段を設計するために使用することもできる。
12 つくる責任、つかう責任
3Dプリンティング、モノのインターネット(IoT)、ビッグデータ、クラウドコンピューティング、ブロックチェーンなどのデジタル技術は、特に製造業において、循環型経済とサプライチェーンの強靭性を支えることができる。
13 気候変動に具体的な対策を
情報通信技術ソリューションは、排出する二酸化炭素の10倍近くを削減することができる。デジタル技術とエコロジカル・デザインを組み合わせることで、製品に使用される天然資源やその他の材料を最大90%削減し、材料採取による影響を軽減することができる。
14 海の豊かさを守ろう
衛星画像と機械学習は、5兆個の海洋プラスチックごみの発見と回収に役立つ。オンラインポータルやモバイルベースのツールは、プラスチックのサプライチェーンをつなぎ、廃棄物の流れを追跡し、プラスチック廃棄物の透明なデジタル市場を作るのに役立つ。
15 陸の豊かさも守ろう
衛星画像と機械学習は、5兆個の海洋プラスチックごみの発見と回収に役立つ。オンラインポータルやモバイルベースのツールは、プラスチックのサプライチェーンをつなぎ、廃棄物の流れを追跡し、プラスチック廃棄物の透明なデジタル市場を作るのに役立つ。
16 平和と公正をすべての人に
公共技術や電子政府サービスが適切に設計され適用されている場合、人々は公共サービスを利用できるようになり、無駄や腐敗を削減し、公共機関がより効果的にニーズを満たすためのデータを作成できるようになる。
17 パートナーシップで目標を達成しよう
国家、民間セクター、市民社会間のパートナーシップは、持続可能な開発目標にまたがる開発のためのソリューションを提供するために、デジタルツールの能力を活用している。その例としては、デジタル公共インフラ・アライアンス、デジタル環境持続可能性連合、災害対応のための官民パートナーシップなどがある。

すべての人に開かれた安全なオンライン空間の実現

私たちはオンラインで人権を適用し、特に女性、子ども、若者、高齢者、障害者、先住民族、民族的・宗教的・言語的マイノリティといった人々やコミュニティを保護するための具体的な措置を講じることを約束した。しかし、世界中のどの社会においても、被害は後を絶たない。オープンで安全・安心なインターネットの利用は、私たちから永久に遠ざかりつつある。

政府によるインターネットの閉鎖、データによる国家監視、略奪的なビジネスモデルは、人権に深刻なリスクをもたらす。サイバースペースにおける偽情報、ヘイトスピーチ、悪意ある犯罪行為は、オンライン上のすべての人にリスクとコストをもたらす。

サイバー・セキュリティに取り組む国際連合のプロセスでは、オンライン上の平和と安全を守るため、国家の責任ある行動規範が確認され、それを推進するための信頼醸成措置や能力構築措置が検討されている。各国はまた、犯罪の脅威に対処するための法的拘束力のある取り決めや、サイバー犯罪に対抗し、捜査し、訴追し、裁くための政府や司法の能力についても模索している。地域や国家は、オンラインの安全に関する法律を整備している。

一部のデジタル・プラットフォームは、オンライン上の不正行為の検知と対応の改善に資源を投入しており、批判的に考え、保護行動をとることができるデジタルリテラシーを備えた市民を育成するためのカリキュラムが導入されている。

しかし、このようなアプローチでは危害への対処が不十分であることが判明している。安全性の責任はユーザーにあるべきではない。オンライン・プレゼンスとユーザーのデータへのアクセスから利益を得ることが、企業の責任という点で、底辺への競争になってはならない。私たちは、オンライン空間をオープンで安全かつセキュアにするために、透明性、説明責任、監督、能力を必要としている。

効果的な多国間主義に関するハイレベル諮問委員会(High-level Advisory Board on Effective Multilateralism)も強調しているように、これは、地域、国、あるいは業界のイニシアティブが、いかに善意であっても、インターネットをこれ以上分断しないようにするための集団的努力でなければならない。

4つの分野での取り組みが不可欠である。第一に、政府と産業界がデータ収集を最大化するインセンティブと、データとプライバシーの権利を保護する政策と慣行に関する原則と基準とのバランスを取らなければならない。個人データは、特定された、明示された、正当な目的のためにのみ収集されるべきであり、その処理は、レリバント(妥当性)があり、その目的に必要なものに限定されなければならない。

人々は、自分の個人データとデータの使用方法を管理できる必要がある。公共および商業のデジタル・プラットフォームは、オプトインとオプトアウトのための有意義な選択肢を可能にする必要があり、人々はそれらの選択肢を利用するための知識と技術を必要とする。

第二に、私たちは、自動車、食品、医薬品、玩具など、物理的な産業で用いられているのと同じ安全設計のアプローチと基準を、デジタル技術とプラットフォームに適用しなければならない。普遍的人権に基づき、何が身体的・精神的危害を構成するのかについて共通の理解を深め、地域、国、業界を超えて安全基準を統一することは、デジタル技術の信頼と安全のグローバルな文化を構築するのに役立つ。テクノロジー企業は、責任ある開発とリスク管理のための常設の能力に投資しなければならない。

第三に、オンライン上の有害で悪質な行為に対する説明責任を強化しなければならない。ビジネスと人権に関する指導原則」は、リスクを評価し、必要に応じて被害を軽減し、救済するための枠組みを提供している。私が近々発表するデジタル・プラットフォームにおける情報の完全性に関する政策概要で強調したように、デジタル・プラットフォームの国境を越えた性質を考慮すると、透明性と安全対策は相互運用可能でなければならず、迅速な救済は一部の特権階級だけに留保されるべきではない。

第四に、インターネットのグローバルな性質と、それを支える 物理的なインフラを保護しなければならない(10) 。インターネットは、長年にわたって確立されたマルチステークホルダー制度によっ て統治されている。法律や規制のアプローチは国や地域によって異なるかもしれないが、積極的な政策の互換性とインターネットの相互運用性を維持するために、協調して努力しなければならない。

人類のためのAIの統治

デジタル技術の発展ペースは、私たちのガバナンス・システムに挑戦している。公共政策のプロセスや法律といった、過去にうまく機能したツールは、イノベーションが私たちに影響を与える複数の方法を予測するにはあまりにサイロ化しており、対応が遅すぎる。

AIの開発は、このガバナンスのギャップがいかに危険なものになっているかを示している。企業は、アウトプットが説明可能で信頼できるものである前に、またその結果が包括的に評価される前に、AI技術を市場に投入しようと競っている。

教育は一夜にして変貌を遂げようとしている。信憑性の高いコンテンツを大規模かつ低コストで作成できるようになったことで、誤情報や偽情報の脅威が強まっている。労働の未来は、教育機関が適応するのに十分な時間がないまま変わってしまうかもしれない。

国家は、データ収集、司法手続き、監視、戦争などのために、AIを活用したシステムを開発・導入するインセンティブを与えられ、そのような利用が合法的であることを保証するガードレールが整備されないまま、AIを活用することになるかもしれない。

人間による説明責任や管理がないまま、兵器システムに自律性を導入することは、国際安全保障の面で未知の領域に我々を導くかもしれない。エスカレートする可能性や、軽減できない世界的な被害をもたらす可能性は、憂慮すべきものである。

AIは、私たちの経済、社会、そして地球にとって計り知れない可能性を秘めている。うまく応用すれば、AIは効率を高め、資源管理、気候緩和、災害対応、生産的な経済変革を支援することができる。私たちは、その破壊的な可能性の大きさを、肯定的にも否定的にも認識し始めているが、私たちはまだ、問題を検討するために一堂に会しておらず、ましてや、リスクを特定し、それを軽減する機敏な方法について協力し合うには至っていない。

私は、AIの専門家の間で、AIの開発と利用を管理する最善の方法について関心が高まっていることを歓迎する。AIやその他の新興テクノロジーの適用を検討、評価、調整するためには、グローバルで学際的な話し合いが必要だ。

さまざまなステークホルダーによって100を超える倫理的AI原則が策定されており、AIアプリケーションの信頼性、透明性、説明責任、人間による監督、シャットダウンが可能であることの必要性など、多くの共通理念がある(11)。さまざまなステークホルダーが、リスク管理と救済のために既存の枠組みを適応させたり、新たな枠組みを開発している。これらは国境を越えて調和され、効果的である必要がある。
業界の自主規制だけでは十分ではない。

私たちの社会、経済、軍事、政治に広く適用される前に、新たなテクノロジーが持つ意味を検討し、普遍的人権と価値観に合致することを確認するために、関係者が有意義な取り組みに結集する必要がある。

私たちはまた、デジタル投資を社会問題や世界共通の課題の解決に向けていく必要があある。デジタル・イノベーションは、意識的に適用されれば、持続可能な開発目標の進展に対する障害を克服するのに役立つが、それは多様なグローバルな基盤の上に成り立っている場合に限られる。

グローバルな能力と多様で代表的なデータセットの関与なくして、デジタル・ソリューションの適用は、目標を前進させるのに必要な規模を達成するのに十分ではない。また、行政、中小企業、地域社会が、それぞれの地域に適したアプリケーションの開発に参加しなければ、私たちが求めるようなインパクトを与えることはできなだろう。

グローバルデジタル協定

今日のデジタル技術は、空気や水のような天然資源に似ている。私たちの幸福と発展は、その世界的な利用可能性に依存している。その可能性は、アクセスと利用を共有することによってのみ最適化される。

気候変動の危機の中で、私たちがエネルギーと水に対する責務に適応しているのと同様に、私たちはデジタルによる危害のリスクに集団で対処し、共通の利益の可能性を最大化しなければならない。

デジタル空間の最も重要な部分のいくつかは、すでにこのように機能している。インターネットのプロトコルは、国際的なフレームワークとオープンスタンダードによって管理されている。これらを実現するオープンソースソフトウェアの多くは、コミュニティによって管理されている。

コモンズ・デジタル・ライブラリーのようなインターネット上で利用可能な情報は、公共のネットワークを通じて提供されている。しかし、公共財のすべてがグローバルに利用できるわけではなく、有害な攻撃や無視に対して脆弱である。

効果的な多国間主義に関するハイレベル諮問委員会が指摘するように、私たちは、国家と非国家主体が共有するデジタル空間の形成に全面的に参加し、デジタル領域全体にわたる相互運用可能なガバナンスを促進・支援するグローバルな枠組みをまだ導入していない。そうしない限り、デジタル上の課題への対応は不完全なものとなるだろう。

国連は、このような大局的な枠組みの中で、必要な協力を招集し、促進することができる唯一のグローバルな存在である。国連は、データ収集、ベストプラクティスの共有、そして要請があれば技術支援を通じて、政府、企業、専門家、市民社会が効果的に関与できるよう支援する責任を果たさなければならない。

また、平和と安全、人権、持続可能な開発という国連の3つの柱にまたがるデジタル活動の縦割りを打破し、能力を構築する上で、模範を示してリードしなければならない。

ビジョン、目的、範囲

グローバルデジタル協定は、国連憲章、世界人権宣言、2030アジェンダの目的と原則に立脚した、オープンで自由、安全で人間中心のデジタルの未来という共有ビジョンを明確にするものである。協定の目的は、このビジョンを達成するために、マルチステークホルダーによる協力を推進することである。

共有する原則と目標を明確にし、その実現のための具体的な行動を特定する。また、既存のデジタル協力プロセスを結集し、活用するための世界的な枠組みを確立し、地域、国、業界、専門家の組織やプラットフォームが、それぞれの義務と能力に応じて対話と協力を支援し、必要な場合には新たなガバナンスの取り決めを促進する。

この協定は、他の利害関係者の全面的な参加を得て、加盟国が主導して開始される。その実施は、デジタルプラットフォーム、民間セクター、デジタルテクノロジーに焦点を当てた連合、市民社会組織など、関連するすべての利害関係者に開かれたものとなる。その原則と目的を支持し、それぞれの政策と実践をこれらに一致させることを約束することが、その実施に参加するための要件となる。

目的と行動

協定は、マルチステークホルダーによる行動のための原則と目標を定めるべきである。2005年の「情報社会のためのチュニス・アジェンダ」で示された原則と、それ以降に生まれた重要なマルチステークホルダー・プロセスは、その土台となる良い基盤を提供するものである。

目標は、共同促進協議で検討されている大まかな目標やテーマと一致させることができる。実際的な実施を支援するため、協定は達成可能で測定可能な行動も特定すべきである。考えられる目標と関連する行動には、以下のようなものがある。

A. デジタル接続と能力開発

デジタルデバイドを解消し、すべての人々、特に社会的弱者を、有意義かつ安価な方法でインターネットに接続する。
・デジタルスキルと能力を通じて、人々がデジタル経済に全面的に参加し、危害から身を守り、身体的・精神的な幸福と発展を追求できるようにする。

したがって、以下の行動を提案する。
加盟国は以下を行うべきである。
・電気通信事業者が手の届きにくい地域に安価な接続性をもたらすことを奨励する政策と新たな財政モデルを導入することにコミットすべきである。
・デジタルテラシーと分野横断的スキルのための公教育を強化または制定し、労働者の生涯学習を奨励することにコミットすべきである。

すべての利害関係者は
・普遍的で有意義な接続性(コネクティビティ)のための共通目標に合意し、それに対する進捗を追跡することを約束する(12) 。
・現在学校で行われているインターネット接続の配置と構築を、医療施設や関連公共機関にも拡大することを約束する。
・特に女性や女児、農村部に住む人々のために、デジタル技術・職業訓練や公共アクセス施設のための行動、補助金、インセンティブを調整することにコミットする。
・持続可能な開発目標のための「デジタル優秀者」を2030年までに100万人、その4分の1をアフリカで創出するという目標を設定する。この目標は、既存のイニシアティブを活用して能力開発ネットワークを構築し、研修コンテンツ、トレーナー、ケーススタディをプールし、共通の能力フレームワークを開発し、「持続可能な開発目標のためのデジタル研修基準」を提供することによって達成される。

多国間組織は以下を行うべきである。
・2030年までにPartner2Connect Digital Coalitionへの誓約を1,000億ドルに修正する(国際電気通信連合)
・2030年までにすべての学校をインターネットに接続する取り組みを加速する(国際電気通信連合と国連児童基金のギガ・イニシアチブ)

B. 持続可能な開発目標の進展を加速するためのデジタル協力

以下の目標を提案する。
・デジタル公共インフラとデジタル公共サービスに的を絞った投資を行い、デジタル公共財に関するグローバルな知識とベストプラクティスの共有を進め、持続可能な開発目標の進展の触媒として機能させる。
・データの代表性、相互運用性、アクセス性を高めることで、データが目標達成に向けた前進のための乗数となるようにする。
・データ、AIの専門知識、インフラを国境を越えてプールし、目標達成に向けたイノベーションを創出する。
・地球を保護するために、デザインによる環境持続可能性と、世界的に調和されたデジタル持続可能性基準とセーフガードを開発する。

したがって、以下の行動を提案する。
加盟国は以下を行うべきである。
・他のステークホルダーとともに、ベストプラクティスに基づく設計原則の枠組みと、安全で包括的かつ持続可能なデジタル公共インフラの定義を策定する。
・デジタル公共インフラおよびデジタル公共サービスに関する経験のグローバル・リポジトリーを構築し、維持する。
・国際開発援助総額のうち、特に行政能力強化に重点を置いたデジタル変革(DX)のために、合意された割合を割り当てる。

すべてのステークホルダーは、
・持続可能な開発目標データのギャップの特定を完了し、2030年までに目標追跡データの90%を利用可能にし、一般にアクセス可能にすることにコミットする。
・国連の複合リスク分析基金(Complex Risk Analytics Fund)や世界気象機関(WMO)の系統的観測資金調達ファシリティー(Systematic Observations Financing Facility)などを通じて、より早く、より迅速で、より的を絞った災害緩和や危機対応を可能にするオープンでアクセス可能なデータエコシステムの育成にコミットすること。
・農業、教育、エネルギー、健康、グリーン・トランジション13 などの優先分野で、データとAIを目標に応用するための共同研究イニシアチブを構築する。
・グリーン・デジタル変革(DX)を支援するために必要なライセンス、品質基準、インフラ、セーフガードとともに、研究者や政策立案者のための信頼できるオープンな環境データのグローバル・オンライン・リソースを構築することに関与する。

多国間および地域機関は以下を行うべきである。
・デジタル公共インフラとサービスの計画・設計において各国政府を支援するためのプール型資金調達メカニズムを確立する。
・経済協力開発機構(OECD)開発援助委員会の自主的な目的コードを拡大し、すべての開発セクターと持続可能な開発目標にまたがるデータとデジタル変革(DX)のための資金調達を追跡・報告する。
・常駐調整官と国連の国別チームが支援する各国主導のデジタル変革(DX)・イニシアチブを支援するため、デジタル開発のエンド・ツー・エンド・ガイドとして、また、持続可能な開発目標合同信託基金の新たなデジタル窓口を活用するためのツールとして、国連が策定するデジタル変革(DX)に関する共通の青写真を活用する。

C. 人権の擁護

以下の目標を提案する。
・人間の尊厳を核とし、人権をオープンで安全・安心なデジタルの未来の基盤とする。
・女性にとって差別のない安全なオンライン空間を確保し、テクノロジー分野やデジタル政策立案への女性の参画を拡大することで、ジェンダー・デジタルデバイドを解消する。
・労働形態に関係なく国際労働権を適用し、デジタル監視、アルゴリズムによる恣意的な決定、労働に対する主体性の喪失から労働者を保護する。

したがって、以下の行動を提案する。
加盟国は以下を行うべきである。
・国連人権高等弁務官事務所が推進するデジタル人権アドバイザリー・メカニズムの設立にコミットし、人権とテクノロジーの問題に関する実践的なガイダンスを提供し、人権メカニズムや専門家の活動を基礎とし、グッド・プラクティスを紹介し、利害関係者を招集して、立法または規制上の問題に対する効果的かつ首尾一貫した対応を模索する。

すべてのステークホルダーは、
・女性、子ども、若者、高齢者、障害者、先住民族、民族的・宗教的・言語的マイノリティを保護し、デジタル技術の恩恵を十分に受けられるようにするための具体的な措置を講じる。
・政府、雇用者、労働者の場合、国際労働機関(ILO)の支援を受け、労働権の擁護にコミットし、革新的な規制、社会保護、投資政策を通じて、有意義かつ公平な雇用機会を促進する。

D. 包括的でオープン、安全で共有されたインターネット

以下の目標を提案する。
・ユニークでかけがえのないグローバルな公共資産としてのインターネットの自由で共有された性質を保護する。
・持続可能な開発目標の実施を推進し、誰一人取り残さないために、インターネットの潜在力を活用するために、説明責任のあるマルチステークホルダー・ガバナンスを強化する。

したがって、以下の行動を提案する。
加盟国は以下を行うべきである。
・デジタルデバイド解消の努力に反する包括的なインターネット遮断を回避し、対象を絞った措置が比例的、非差別的であり、透明性をもって報告された正当な目的のために必要な場合にのみ、国際人権法に従って実施されることを確約すること。
・国連のサイバー外交プロセスにおいて、国境を越えてサービスを提供する重要インフラや、インターネットの一般的な可用性と完全性を支えるインフラを混乱させたり、損傷させたり、破壊したりするような行動を控えることを約束する。

すべての利害関係者は、
・オープンで相互接続されたインターネットを支援するため、ネット中立性、無差別トラフィック管理、技術標準、インフラおよびデータの相互運用性、プラットフォームおよびデバイスの中立性を支持することにコミットすること。

E. デジタルの信頼と安全

以下の目標を提案する。
・政府、産業界、専門家、市民社会の協力を強化し、デジタル技術の責任ある利用に関する規範、ガイドライン、原則を策定し、実施する。
・偽情報、ヘイトスピーチ、その他の有害なオンライン・コンテンツに対処するため、デジタル・プラットフォームとユーザーに対する強固な説明責任基準と基準を策定する。
・グローバルなサイバーセキュリティ人材の育成と拡充を図り、信頼ラベルや認証制度、効果的な地域・国の監視機関を整備する。
・女性と女児にとってより平等でつながりのある世界を実現するために、デジタル政策と技術設計におけるジェンダーの主流化を図り、ジェンダーに基づく暴力に対するゼロ・トレランスを確保する。

そこで、以下の行動を提案する。
すべての利害関係者は、次のことを行うべきである。
・デジタルプラットフォーム上の有害なコンテンツに対処し、安全な市民空間を促進するために、以下のような共通の基準、ガイドライン、業界行動規範を策定することにコミットすること。

◇オンライン安全委員は、危害から保護しつつ、表現の自由と情報へのアクセスを尊重する共通の理解とベストプラクティスを開発するために協力すべきである。
◇ソーシャルメディア・プラットフォームは、業界全体で合意された基準の遵守を保証するソーシャルメディア協議会などの共同規制メカニズムにコミットし、それを導入すべきである。
このメカニズムの基礎となる基準は、デジタル・プラット フォームにおける情報の完全性に関する行動規範の提案に基づ くものとし、国連教育科学文化機関が主催した世界会議「Internet for Trust - Towards Guidelines for Regulating Digital Platforms for Information for a Public Good(信頼のためのインターネット - 公共財としての情報デジタル・プラット フォームの規制のためのガイドラインに向けて)」での議論から利益を得るこ とができる。
◇ジェンダー平等のためのテクノロジーとイノベーションに関する行動連合など、多様な主体の連携は、女性と女児に対するオンライン暴力の標準的な測定方法と、被害のパターンをよりよく測定、追跡、対策するための方法論の開発を支援すべきである。
◇子どものニーズは、年齢に応じた設計やアクセスなど、安全に関する方針や基準において優先されるべきであり、プラットフォームは子どもの影響評価やデータを規制当局や研究者と共有しなければならない(14)。

F. データ保護とエンパワーメント

以下の目標を提案する。
・データがすべての人の利益のために、また人々やコミュニティに害を与えない方法で管理されるようにする。
・デジタル・プラットフォームからのオプトインやオプトアウト、アルゴリズムのトレーニングのためのデータ利用などの選択肢やスキルを含め、人々が個人データを管理・コントロールできる能力とツールを提供する。
・安全でセキュアなデータの流れと包括的なグローバル経済を可能にするため、知的財産権を十分に尊重した上で、データの質、測定、利用に関するマルチレベルで相互運用可能な標準と枠組みを開発する。

したがって、以下の行動を提案する。
加盟国および地域機関は以下のことを行うべきである。
・例えば、「サイバーセキュリティと個人データ保護に関するアフリカ連合条約」や「欧州連合一般データ保護規則」に基づき、個人データとプライバシーの保護を法的に義務付ける。
これらの保護は以下のようなものである。
◇市民が自分のデータをどのように利用するかについて、意味のある、取り消し可能な同意と選択肢を持てるようにする。
◇独立した、一般にアクセス可能なオンブズパーソンやその他の受託者により、法的保護を補完する。
・透明性を明記したデータの権利に関する宣言の採択を検討し、精査可能なデータ主導の決定、相互運用性とポータビリティ、行動操作と差別からの保護を確保する。
・効果的な多国間主義に関するハイレベル諮問委員会(High-level Advisory Board on Effective Multilateralism)による、新たな「データのための国際10年」におけるグローバル・データ協定(Global Data Compact)を通じたデータガバナンスの原則に関する収束を求める呼びかけを検討する。

すべての利害関係者は次のことを行うべきである。
・すべての利害関係者は、相互運用性、データの種類に応じたデータへのアクセス、データの質と測定のための共通の定義とデータ標準の策定、およびその監視と実施にコミットすべきである。
・オプトアウトの選択、相互運用性の強化、データポータビリティ、暗号化オプションなど、個人データの使用に関する人々の主体性およびコントロールの強化にコミットすること。
・効果的な多国間主義に関するハイレベル諮問委員会による、2030年までに加盟国が採択するためのグローバルデータ協定のマルチステークホルダー開発に関する勧告を検討する。

G. AIとその他の新興テクノロジーのアジャイル・ガバナンス

以下の目標を提案する。
・AIやその他の新興テクノロジーの設計と利用が、透明性、信頼性、安全性を確保し、説明責任を持った人間の管理の下で行われるようにする。
・AIシステムが内包しうるリスクを特定し、対処する政府の責任と、AIシステムを開発する研究者や企業がそうしたリスクを監視し、透明性をもって伝達し、対処する責任を考慮し、透明性、公平性、説明責任をAIガバナンスの中核とする。
・国際的なガイダンスや規範、各国の規制の枠組み、技術標準を、AIの機動的なガバナンスの枠組みに統合し、国境、業界、セクターを超えて、得られた教訓や新たなベストプラクティスを積極的に交換する。
・規制当局の場合は、デジタル、競争、税制、消費者保護、オンライン安全、データ保護政策、労働者の権利などを調整し、新たなデジタル技術と人間の価値観との整合性を確保する。

したがって、以下の行動を提案する。加盟国は以下を行うべきである。
・AIシステムの安全性、公平性、説明責任、透明性、解釈可能性、信頼性、そして人間の価値観との整合性を確保するためのグローバルな共同研究開発の取り組みを、産業界とともに早急に開始すること。
また、AIへの投資の最低割合をAIガバナンスに割り当て、AIシステムが人間の価値観に沿ったものであることを保証することを義務付けることを検討すべきである。この点で、加盟国は、効果的な多国間主義に関するハイレベル諮問委員会の勧告を考慮すべきである。
・グローバルデータ協定の枠組みの中に、AIに関するハイレベル諮問機関を設置する。
この機関には、加盟国の専門家、国連の関連機関、産業界の代表、学術機関、市民社会団体を含めることができ、定期的に会合を開いて、地域、国、産業界のAIガバナンスの新たな取り決めについて検討する。

倫理、安全、その他の規制基準をどのように整合させ、相互運用可能とし、普遍的な人権や法の支配の枠組みに準拠させることができるかについての視点を提供することができる。
諮問機関は、その審議結果を公に共有し、関連する場合には、国際的に合意された措置や基準の選択肢を含め、AI技術のガバナンスに関する提言やアイデアを提供することができる。

・技術開発者やその他の利用者が、特定の環境におけるAI由来のツールの設計、実装、監査について、適用可能で関連性のあるガイダンスを確実に入手できるようにするため、業界団体と協力して分野別のガイドラインを策定する。ユネスコのAIの倫理に関する勧告や、世界保健機関(WHO)の保健のためのAIの倫理とガバナンス(Ethics and Governance of Artificial Intelligence for Health)など、関連する国連機関も、関係者の指針策定を支援することができる。
WHOのガイダンスは、利害関係者が分野別のデューデリジェンス(適正評価)と影響評価を策定するのを支援することができる。
・技術開発者やデジタル・プラットフォームとともに、人権・倫理チームや学際的で独立した監視委員会の設置、AIシステムによる被害事例の文書化と報告、教訓の共有、救済措置の策定など、透明性と説明責任を強化することにコミットする。
・効果的な多国間主義に関するハイレベル諮問委員会が指摘したように、司法能力を含め、公共部門における分野横断的かつマルチステークホルダーな規制能力を構築することにコミットし、AIやその他の新興技術に基づくシステムの規制や公共調達が、インクルージョン、安全性、セキュリティ、発生したリスクへの迅速な対処を促進することを確保する。
・必要性、区別、比例のテストに合格しないものを含め、国際人権法の下で潜在的または実際の影響を正当化できないテクノロジー・アプリケーションの使用を禁止することを検討する。

H. グローバル・デジタルコモンズ

以下の目標を提案する。
・持続可能な開発を可能にし、人々に力を与え、リスクと危害を予測し、それらに効果的に対処する方法で、デジタル技術を開発し、管理する。
・デジタル協力が包括的であることを確保し、すべての関連する利害関係者が、それぞれの任務、機能、能力に応じて有意義な貢献ができるようにする。
・国際連合憲章、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」、および普遍的に認められた人権と国際人道法の枠組みを協力の基盤とすることに合意する。
・教訓やベスト・プラクティスの学習、ガバナンスの革新と能力の向上を支援し、デジタルガバナンスが我々の共有する価値観に継続的に合致することを確保するため、国、地域、産業分野、課題を超えた定期的かつ持続的な交流を可能にする。

したがって、以下の行動を提案する。すべてのステークホルダーは、以下を行うべきである。
・ガバナンスと規制の経験を共有し、国際的な原則と枠組みを各国の措置や業界の慣行と整合させ、規制能力を向上させ、テクノロジーの急速なペースに対応するための機動的なガバナンス措置を開発することにコミットする。
・グローバルデジタル協定に示された原則、目標、行動を、以下のようなマルチステークホルダーによる持続的かつ実践的な協力の枠組みを通じて推進することにコミットする。

実施、フォローアップ、レビュー

グローバルデジタル協定の成功は、その実施にかかっている。さまざまな利害関係者が、地域的な背景を考慮し、各国の政策、権限、能力を尊重しながら、国、地域、部門レベルで協定を実施する責任を負うことになる。ITU、国連人権高等弁務官事務所、国連貿易開発会議、国連教育科学文化機関、国連開発計画などの国連機関だけでなく、既存の協力メカニズム、特にインターネット・ガバナンス・フォーラムと世界情報社会サミットも、実施を支援する上で重要な役割を果たすだろう。

しかし、そのような個々の努力は、持続的でネットワーク化された協力体制に支えられていなければならない。この協力なくして、これまでのデジタル調整の特徴である断片的で不定期な政策議論を克服することはできない。透明で説明責任のある実施枠組みがなければ、努力の重複が続き、政策と技術標準の設定機能がフォーラム間で曖昧になり続けるだろう。

私たちは、収斂する課題の確立を支援し、異なる作業分野間のコミュニケーションを促進し、関連する政策主体の参加と規範・基準の整合にインセンティブを与える、ネットワーク化された多国間の仕組みを必要としている。

このようなグローバルな枠組みは、知識の共有、ベストプラクティス、そして国や地域の規制体制や業界標準に反映できるデジタル・ガバナンスに関する教訓の学習を支援するために不可欠である。効果的な多国間主義に関するハイレベル諮問委員会は、こうした目的を達成するため、公正で持続可能なデジタル化に関するグローバル委員会の設置を提案している。

マルチステークホルダーによる実施

私は、グローバルな枠組みは加盟国が主導すべきであるが、民間部門と市民社会の関与が不可欠であるという諮問委員会の見解を共有する。また、私たちが必要とするガバナンスの革新の開発には、彼らの関与が不可欠である。マルチステークホルダーによる協定の実施には、硬直的で動きの鈍い官僚主義的な構造を作らないよう、機敏なアプローチが不可欠である。

三者構成によるアプローチの例としては、国連貿易開発会議への市民社会の参加、ITUへの民間セクターの加盟、国際労働機関の三者構成、キンバリー・プロセスのような産業界のイニシアチブなどがある。

民間セクターの参加は包括的であるべきであり、大企業や中小企業、新興企業を代表機関を通じて反映させるべきである。そうすることで、狭い企業の利害が議論を支配することなく、リスクに対処し、持続可能な開発目標加速の取り組みに付加価値を与える中小企業の革新的な実践が強調されることになる。

デジタル技術は、特に市民社会組織の間で、より広範な協議、コミュニケーション、情報共有を可能にするために利用できる。参加の機会は定期的に見直され、協定の実施枠組みが包括的であり続け、技術の発展に歩調を合わせることができる。

マルチステークホルダーの参加は、特にデジタル協力フェローシップ・ プログラムや市民社会の参加、国連ポータルの維持を後援する信託基金によって支 援することができる(15) 。
若者の意見を支援するため、技術担当特使と青少年担当特使は、 提案されている国連青少年タウンホールを活用できる(16) 。

デジタル協力フォーラム

テクノロジーの発展に遅れをとらないためには、協定の実施状況を定期的に評価することが不可欠である。未来サミットは、グローバルデジタル協定を設立するにあたり、三者構成員の関与を支援し、協定の実施をフォローアップするため、デジタル協力フォーラムを毎年開催することを私に課することができる。

デジタル協力フォーラムは、「効果的なマルチラテラリズムに関するハイレベル諮問委員会」も提言しているように、加盟国、民間セクター、市民社会のステークホルダーを支援する。
・合意されたグローバルデジタル協定の原則とコミットメントの実施について議論し、見直す。
・デジタル・マルチステークホルダー間の透明性のある対話と協力を促進し、適切な場合には重複を削減する。
・主なデジタルトレンドについて、エビデンスに基づく知識と情報の共有を支援する。
・デジタルガバナンスに関する教訓を蓄積し、国境を越えた学習を促進する。
・新たなデジタル課題やガバナンスのギャップに対する政策的解決策を特定し、推進する。
・ステークホルダーの意思決定と行動のために、政策の優先順位を明らかにする。

ガバナンスのギャップに対処するために本政策概要で提案された行動は、協定の実施を強化するものである。関連性があれば、年次デジタル協力フォーラムの準備を含め、優先分野での協力を支援することができる。例えば、デジタル人権アドバイザリー・メカニズムや、デジタル公共インフラや能力開発を支援するイニシアティブなどが含まれる。ハブ・アンド・スポーク方式は、国際データやAIガバナンスなど、マルチステークホルダー協力におけるギャップを特定し、対処する上でも役立つだろう。

例えば、AIに関するハイレベル諮問機関は、AIの開発を人権や価値観と整合させるために、国や業界の経験を構造的に交換することを促進し、研究者やイノベーターを、責任ある信頼できるAIの開発に関する実践的なガイダンスで支援する。責任ある信頼できるAIの開発に関する実践的ガイダンスを研究者やイノベーターに提供する。

デジタル協力フォーラムのアジェンダ作成を支援するため、私は、デジタル協力のためのロードマップのマルチステークホルダー実施の経験を踏まえ、国家、非国家、国連の多様かつ代表的なステークホルダーからなる三者構成アドバイザリー・グループを設立する。多様な利害関係者の参加を可能にし、幅広いスキルと視点からの利益を得るため、メンバーは2年ごとに交代する。

フォーラムの準備には、国連地域経済委員会が地域機関と協力して進める地域協議も含めることができ、さまざまな地域的背景の優先事項や視点が議題や協議内容に反映されるようにする。同委員会は、地域ごとのフォローアップや交流も促進できる。

デジタル協力フォーラムは、利害関係者からの寄稿を受け付け、一般にアクセス可能なデジタル・プラットフォームを通じて提供された情報に基づき、国際連合事務局が提供する年次報告書によって情報を得ることになる。この報告書には、協定で合意された行動や、その結果得られた利害関 係者のイニシアティブの進捗状況について、データに基づ く最新情報が記載される。

ライブでアクセス可能な国際連合ポータルは、デジタ ル開発で現在利用可能な幅広い国際連合のデータ・リソー スやツールにアクセスするための唯一の入口となる。

フォーラムは行動指向で、デジタルガバ ナンスの進展とギャップを評価、伝達し、相互学習と交 流を促進し、新興技術に関する主要な傾向と課題を今よりも 迅速に抽出することに重点を置く。また、規制領域を横断するデジタル規制当局のスカッティングのグローバル・ネットワークの可能性など、実践的な取り組みを促進するものである(18)。

それは、成果を交渉することではなく、むしろ、利用しやすいマッピング、ビジュアル、ポリシーノート(19)を通じて、どこで進展があり、どこへ向かうべきかを反映させることを目指すものである。

結論

デジタル協力に関するハイレベル・パネルが報告書を発表してから約4年が経過した。デジタル協力を推進するための実際的な行動の選択肢を示した「デジタル協力のためのロードマップ」と「私たちの共通アジェンダ」の発表から2年以上が経過した。効果的な多国間主義に関するハイレベル諮問委員会は、重要な新しいアイデアを提供してきた。

デジタル協力の必要性を語る時期はとっくに過ぎた。私たちは、デジタル協力をどのように実現するかに焦点を当てる必要がある。私たちから遠ざかりつつある公平で持続可能な開発、そして私たちが直面している地球規模の危機のために、デジタル技術の可能性を取り戻すためには、今、そして迅速に行動する必要がある。

デジタル技術の無分別な、無責任な、あるいは悪意ある利用が、社会、民間セクター、国家間の信頼を損なったことを回復するためには、私たちは協力しなければならない。

さらに、合意された原則と優先事項が実践に移され、孤立した議論に陥ることがないよう、私たちは持続的なフォローアップと見直しに取り組まなければならない。本政策要綱に示された考え方は、排他的でも網羅的でもない。

しかし、現在進められているグローバルデジタル協定に関する協議において、議論や討議の基礎を提供することはできる。国際連合システムは、未来サミットの審議において、こうしたアイデアの検討や新たなアイデアの探求を支援する用意がある。

どのような方向性を示すにせよ、私たちの地球、私たちの人々、そして私たちの人間性を置き去りにしないためには、マルチステークホルダーによる具体的で有意義な行動を目指す必要がある。

脚注

1 See International Telecommunication Union (ITU), Measuring digital development: Facts and Figures 2022 (Geneva, 2022).
2 Ibid.
3 See Wiley, Digital Skills Gap Index 2021 (New York, Wiley & Sons, 2021), white paper.
Available at https://dsgi.wiley.com/download-white-paper.
4 See United Nations Industrial Development Organization (UNIDO), Industrial Development Report 2020: Industrializing in the digital age (Vienna, UNIDO, 2020).
5 The United States and China account for half of the world’s hyperscale data centres, 70 per cent of global AI talent and almost
90 per cent of the market capitalization of the world’s largest digital platforms. See United Nations Conference on Trade and Development, Digital Economy Report 2021 (UNCTAD/DER/2021).
6 See Daron Acemoglu and Simon Johnson, Power and progress: our thousand-year struggle over technology and prosperity (New York, Hachette Book Group, 2023).
7 See Lucas Chancel and others, World Inequality Report 2022 (World Inequality Laboratory, 2021).
8 See Forbes, “Here are the richest tech billionaires 2022”, 5 April 2022.
9 See www.un.org/sites/un2.un.org/files/report_on_the_2022_transforming_education_summit.pdf.
10 For example, new undersea cables, which promise to connect more than 1.4 billion Africans, are owned by a handful of commercial actors.
11 See UNESCO, Recommendation on the Ethics of Artificial Intelligence (UNESCO, Paris, 2022).
Available at https://unesdoc.unesco.org/ark:/48223/pf0000381137.
12 Such targets could draw on those developed jointly by ITU and the Office of the Secretary-General’s Envoy on Technology and outlined in the background paper entitled “Achieving universal and meaningful digital connectivity: setting a baseline and targets for 2030” (available
at www.itu.int/itu-d/meetings/statistics/wp-content/uploads/sites/8/2022/04/UniversalMeaningful
DigitalConnectivityTargets2030_BackgroundPaper.pdf) and on tools such as the Internet universality indicators of UNESCO
(see https://unesdoc.unesco.org/ark:/48223/pf0000367617).
13 The importance of such collaborative data and artificial intelligence “commons” has been noted in the report of the High-level Panel on Digital Cooperation of June 2019 as well as the report of the High-level Advisory Board on Effective Multilateralism of April 2023, in which the Board calls for a data impact hub for pooling data-related capacities across public and private sectors for greater resilience and more reliable provision of global public goods.
14 The Child Online Protection Initiative of the International Telecommunication Union, the child-centred digital equality framework of the United Nations Children’s Fund and the Standard for an Age Appropriate Digital Services Framework based on the 5Rights Principles for Children of the Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc. could be useful in that regard.
15 A Digital Cooperation Fellowship initiative could draw on the model of the United Nations Disarmament Fellowship Programme.
16 See Policy brief 3 (A/77/CRP.1/Add.2).
17 See the terms of reference of the Internet Governance Forum Leadership Panel, available at www.intgovforum.org/en/content/terms-of-reference-for-the-igf-leadership-panel.
18 One such example is the International Competition Network launched in 2001 in New York by antitrust officials from 14 jurisdictions.
19 The International Monetary Fund and the Organisation for Economic Co-operation and Development have a long-standing tradition of such policy briefs.

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