精神覚醒ノ肥後虎 ACT.20「菊池鯛乃」

あらすじ

 順位を上げていく自動車部は、2位でSA22C乗りの生徒会副会長・山中ルリ子と遭遇する。
 SA22Cのコーナリング性能の高さに苦しめられる。
 そんな中でルリ子の弱点を発見し、彼女を追い抜くのだった。
 覚の提案で、会長・菊池鯛乃との戦いは虎美1人だけで挑むことになった。

 残るクルマは生徒会長が乗るケンメリだけになった。
 トレードマークである、四灯丸目のテールを追いかける。

「私についてこれるん? こっちやって、FRからアテーサET-Sの4WDにしとるんやからな」

 生徒会長はタイツで包まれた黒かな脚でアクセルペダルを床まで踏み、ケンメリを加速させる。
 V8とコンプレッサーの両立したサウンドと共に、エクリプスを引き離す。

「速か。V8のVK45DEとスーパーチャージャーば組み合わせたエンジンにアテーサET-Sまで採用するだけあるばい」
 
 さすが、ボスキャラらしく簡単には抜かせてくれない。

 2週目はもうコースの半分過ぎる。
 突き当たりの左ヘアピンを抜けて、直線。
 ヘアピンでは距離を縮めたけど、直線ではV8スーパーチャージャーのパワーで離される。

「追い付けん加速やなァ」

 古いクルマとは思えない加速だ。
 直線が終わると、突き当たりの右ヘアピンが来る。

「コーナーで差を縮めんと !」

 S.S.Tで上げた腕を見せつける時だ。

 ドリフト走行で攻め、アウト・イン・アウトのラインで生徒会長との距離を縮める。

「おりゃぁ!」

 次は左の突き当たりのヘアピン。
 アウト・イン・アウトのドリフトで攻め、さらに縮める。
 
 直後に中速左ヘアピン。
 萌葱色のオーラを発生させる。

「肥後虎ノ矛流<真空裂速>! 虎虎虎虎虎虎虎ー!」

 高速ドリフトで接近する。
 しかし相手は風属性に強い鉄/風属性だったため、威力が落ちた。

 後で長かな全開区間が来る。

「前異常に腕ば上げたこつは評価したる。ばってん、加速区間ではこっちが上たい」

 V8スーパーチャージャーのパワーで大きく離され、コーナーで縮めた距離は水の泡になった。
 とても長いこともあり、車両2.5台分の距離に離される。
 
 弁財天の湯前の右直角ヘアピン。
 離された距離を縮めようと、再びオーラを纏いながらサイドブレーキで慣性ドリフトを発生させる。

「肥後虎ノ矛流<キャノン・ドリフター>! 虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎ー!」

 大砲から発射する玉の如く、ドリフトで攻めていく。
 エクリプスの姿を生徒会長は見ていた。

「技ば使って縮めようとしてきたばい。なら、こっちも使ったる!」

 突き当たりの右ヘアピンが迫る。
 ケンメリのボディに萌葱色のオーラが包まれる。
 生徒会長も技を使う気だ。

「タイの刃流<袈裟切り>!」
 
 コーナーを斜めに切り裂くようなドリフトで攻める。

「生徒会長がついに技ば使った……!?」

 うちとの距離を大きく離した。
 クルマ1台分の差になる。

 突き当たりの左ヘアピンに入る。
 勝負は互角だった。

「私の覚醒技の能力はコーナリングを上げるもんばい。コーナー勝負では負けんよ」

 一進一退の勝負が続き、レースは最終ラップの3週目に入る。

 最終週に入ると、ペンションゆめりんご前まで全開区間が続く。
 突き当たりの右ヘアピン。

 うちはエクリプスに萌葱色のオーラを纏わせる。

「肥後虎ノ矛流<真空裂速>! 虎虎虎虎虎虎虎虎ー!」

 風のような高速ドリフトで攻める!
 しかし……。

 ケンメリは銀のオーラを纏いながら、エクリプスを受け止めた!

「タイの刃流<十手>!」

 <真空裂速>によるコーナリングは失敗に終わった。

「くっ……止められるとは……」

 直線だ。
 狭かな道をV8スーパーチャージャーの音と共に駆け抜ける。
 うちとの距離を離す。

 ケンメリの走りを見てうちは考えた。

「スーパーチャージャーとアテーサET-Sを何とかせんと」

 突き当たりの右ヘアピンから、ペンションロワまでの左ヘアピン。
 生徒会長のコーナリングは遅くない。
 しかし、うちはS.S.Tでパワーアップした走りでついていけている。

 右と左の中速ヘアピンが複合したS字ヘアピン。
 うちはドリフトしながら、生徒会長との距離を縮める。

 また全開区間。
 V8スーパーチャージャーの加速に離されそうになったけど、うちは直ドリでの慣性ドリフトと共にオレンジのオーラを発生させる。

「肥後虎ノ矛流<キャノン・ドリフター>」
 
 大砲から吹っ飛ぶようなドリフトでケンメリに追いかける。

「虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎ー!」

 全開区間が終わると、左低速ヘアピンに入る。
 登り坂になっている。

「登りではパワーのあるこっちが上たい」

 コーナリング勝負では互角だった。
 また左ヘアピンが来る。
 前のような急な坂ではなかったから、うちの方がやや有利だった。
 距離が少しずつ縮まる。

 突き当たりの右ヘアピン。
 うちが有利であり、ついにケンメリを被せながら抜こうとした。
 しかし……!
 相手は鉄のオーラを纏う!

「タイの刃流<袈裟一刀両断>」
 
 抜かせないと、外側から刃のように鋭かなドリフトで攻める!

「ぐあッ!」

 同時に、うちは刀で斬られたような精神ダメージを受けた。

「絶対前を行かせんとよ」

 左高速ヘアピン、こっから登り坂が始まる。
 またケンメリに離される。

「くぅ……」

 次は右高速ヘアピン。
 坂が急な登り坂というこつもあり、またまた距離が開く。

「ヒルクライムが続くけん、辛抱や」
 
 コーナーを2つ抜ける。
 パワーのあるケンメリが有利な登り坂が続き、コーナーでも直線でも離されるのが続く。
 差はクルマ2.5台分となった。
 しかし、後の全開区間から登り坂が終わり、平らな道となった。

「離されるんはどうすればよか……」

 技を使おうと考えた。

「どう逆転しようか……」

 しかし、1度使うとしばらくの間は使えん。
 今使いたい技はコペン軍団を倒した<クリスタル・ブレイク>だ。

「何使おうか……」

 使うとなら<コンパクト・メテオ>みたいな使用不可能な時間が短い技だ

 コースは半分を過ぎ、周回遅れのクルマも見られるようになった。

 ケンメリとエクリプスはそれらをパスしていく。
 後者の方が上手く、距離は1.5台分に縮まった。

「逃がしませんとです! 菊池生徒会長!」

 右高速ヘアピン。逆転のために、茶色いなオーラを纏う。
 この技なら技の使用不可能な時間は短い。

「肥後虎ノ矛流<落ちてくる虎>! 虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎ー!」

 スローイン・ファーストアウトのラインを描くドリフトで攻める。
 サイド・バイ・サイドでケンメリの右側に並んだ。

<落ちてくる虎>の使用後、使用不可能な時間は5秒。
 この時間を待つまでサイド・バイ・サイドを維持しないと


 5秒が経過し、ついに発動させる!

「今たい!」

 エクリプスに水色のオーラを纏わせる!

「肥後虎ノ矛流<クリスタル・ブレイク>!」

 ケンメリのフロントフェンダーに狙いを定め、押さえつけながら走行する。

「虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎虎ー!」

「く……せっかくのケンメリに何するとよ!」

 ケンメリのフロントタイヤが凍りつく。

「壊さん程度に凍らせるばい!」

<クリスタルブレイク>から解放され、フロントタイヤが解凍された後、ケンメリの挙動がおかしくなる。
 さらには加速が遅くなり、同時にふらついている。

「スーパーチャージャーが作動しなくなったと!? さらにアテーサET-Sの機器までやられた!?」

<クリスタル・ブレイク>で凍りついてしまったようだ。
 サイドバイサイドの状態のまま、立ち上がり加速が低下したケンメリの前に出る。

 うちはようやく1位となった。

「先行くとですよ、生徒会長」

 スーパーチャージャーとアテーサET-Sが停止したケンメリを離していき、周回遅れのクルマを抜きながらうちはトップでゴールする。

リザルト
1位:加藤虎美(D27A)
2位:菊池鯛乃(KPGC110)
3位:山中ルリ子(SA22C)
4位:飯田覚(CXD)
5位:森本ひさ子(BG8Z)

 ゴールしたうちはエクリプスの中で呟いた。

「うちってやっぱ……むしゃんよか!」

 エクリプスの前へ生徒会長が来る。
 ガルウイングを開けて、挨拶へ向かう。

「1位おめでとう。スーパーチャージャーとアテーサET-Sば止める作戦ば考えるとは……中々ばい。自動車部を認めたるばい」

「だんだんです」

 激しい激戦を繰り広げた生徒会長と握手をした。
 飯田ちゃんとひさちゃんも来る。

「やったわ、虎美。これで部活動に期待されるね」

「よかったばい」

 表向きは学校の行事で、裏では自動車部を認めるために開催された学園ナイターレースはうちらの勝利で幕を閉じた。
 苦戦したけど、勝つことでようやく生徒会に自動車部を認められたのだった。

 翌日……。
 自動車部の部室に生徒会長がやってきた。

「皆にプレゼントがある。外へ来い」

 彼女に呼ばれて、うちら3人は学校の外へ出る。
 自動車販売所だった建物の前へ止まった。

「プレゼントたい」

「建物がプレゼントですか!?」

「そうたい。部室にしてよか」

 こうして部室を手に入れ、新たな活動が始まる。

 5月24日の水曜日の17時。

 ランティス乗りに襲われたり、副会長に負けるほど力不足と感じとったわしは川辺でランニングしとった。
 流れてくる川の景色と共に駆け抜ける。
 しかし……。

「はぁ……はぁ」

 体力のないわしは倒れ、意識を失う。


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