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君にとってのエヴァンゲリオン


遂にシン・エヴァンゲリオン公開されましたね。

"優れたアートとはそれを体験してしまったらもうそれ以前の自分に戻れないものだ"

こんな言葉があるけど、まさにエヴァンゲリオンとはそれ。

観た後に心に刻まれるインパクトは1日2日で消費できるモノではなく一生をかけてこの作品を消化していくんだろうなと。

シン・エヴァンゲリオンを観た後の余韻が強すぎて、何も手につかない。
今の自分が感じた事を吐きださないと次に進めない気がしたので、ここに書き溜めておきます。

僕はエヴァンゲリオンや庵野秀明のカルト的なファンではないです。

知識的に全てを網羅できてるわけではいので、僕にとってのエヴァンゲリオンとして読んでいただけると嬉しいです。

-序-

96年生まれの僕にとってのエヴァとの出会いは小学生5.6年生頃のときでしたかね。

仲の良かった友達がエヴァが好きで、家に遊びにいくといつもテレビアニメ版の録画をテレビで流してた。モンハンをやっている時のBGM的存在でした。

そんで、その友達のモンハンのアカウント名がSNGで本人はシンジって言ってたけど、皆んなからスンゲって言われてたのを今でも良く覚えている。

だから主人公がシンジって奴だってことは知ってたのと、たまに来るエロいシーンを皆んなでドキドキしながら見ていたのは覚えてる。

内容は全く分からないエロアニメとしての認識でした。

時代としては新劇場版"序"が始まる頃です。

-破-

中学生になると所謂アニメオタクになっていくんですが、なぜ自分がそうなっていったのかを話すと長くなってしまうので省きます。

中学2年(2009年)の時に"破"が公開されるんです。ただ同じ年にけいおん!も始まっていて、メカ的なアクションによるカタルシスより京アニ的な日常系のほんわかしたものの感じのほうが当時の自分の精神状況には響いてました。

ただ、初めてリアルタイムでエヴァを現体験したし。セカイ系の王道的展開には思春期の自分はやられたし、アスカが大好きになりました。

そこでテレビアニメ版と旧劇を後追いする形になります。
でも破で感じたアスカの可愛さがアニメ版には全くなくて、ストーリーもよくわからない、当時の自分の価値観では楽しみきれなかった。

ただリアルタイムで友達と共有しあえた事は青春だったし、確実に自分の中で大切な思い出です。今振り返ると2009年は今までの自分が破壊された年でもあった。

中学2年で破を観てる僕らの世代は確実に新劇を楽しめてるし、良くも悪くもこの影響化で生きてる世代だと思います。

アニメオタクとしてキャラクターを観るものとして消費していたんだと思います。

-Q-

Qが公開された2012年。僕は高校生でけいおんの影響で軽音サークルに入ったんですが、楽器を始めると同時にビートルズやレッドツェッペリンに出会い音楽の世界に没頭し、気づけば深夜アニメを見なくなってました。知らない間にオタクを卒業していたのです。

海外の音楽やカルチャーに触れていくことで、セカイ系的価値観とも距離を置いていくことになる。

エヴァンゲリオンは社会にニアサードインパクトを起こしたとも言われてて、深夜にエヴァが視聴率を取ったことで深夜アニメの急増、アニメの世界に取り憑かれてしまうオタクの生産、今まであったアニメ業界のルールや常識の破壊。

「ニアサードインパクトは悪いことばかりじゃない」

このセリフのように自分にとって、中学時代は深夜アニメに救われ、高校時代はエヴァの影響下にあるセカイ系邦楽ロックにうんざりしていた。

エヴァで変わってしまった世界、エヴァで変わった僕、エヴァで変わった君達。
   
    -それはエヴァによって変わる-

まさにQを観てまた自分の価値観が変わった。

大学生になり映画を沢山観たり、ジブリ作品を見返したりなど、映画というカルチャーに対する偏差値や興味が徐々に深まり、自分にとってアニメーションがとても大切なモノであることを再確認する。

そんな価値観の中でQをレンタルして観たので、初見から最高に興奮した。
きっと破を観た時の価値観でそのまま観ていたら納得できなかっただろうし、公開当初問題作として扱われていたことも理解できる。

(宮崎駿におけるハウルの動く城のように観客を置いてきぼりにするハイコンテクストな演出。将棋のシーンで後31手で詰むよと言われてから、31分後に本当に詰んだシーンが来る、さらにその時間に本当に31回展開がある、絶対初見じゃ理解できない 笑)

物語は14年進んでいるが、シンジ君達の姿はそのままである。
エヴァに乗っていると成長が止まる。

世界はめちゃくちゃ変わってるのにエヴァに取り憑かれている人達は変わってないよね。

エヴァに取り憑かれていなかったことが僕がこの作品を楽しめた要因の1つ。

ストーリー以上に、映像演出、アニメーションの美しさ。を心から楽しめた。

「どうしたら上手く弾けるのかな?」-「上手く弾く必要はないよ。ただ気持ちのいい音を出せばいいんだ。」
「もっといい音を出したいんだけど、どうすればいい?」-「反復練習さ、同じことを何度も繰り返す。自分がいいなって感じれるまでね。それしかない。」

このピアノの連弾のシーンで表現者としての庵野秀明に感銘を受け、共鳴した。

これを機にエヴァンゲリオンを全作見返し、庵野秀明という男を深堀することになった。

まずアニメ版の時点で映像演出が特出しすぎてた。庵野さんの実写映画ではあまり楽しめない理由の1つの変なカメラの位置もアニメの中だとめちゃくちゃ気持ちいい。編集のテンポ感とグルーヴも唯一無二。

世界観やテーマも庵野秀明という男を知れば知るほど面白くなる。

そして旧劇はアニメーションとして最高すぎる。絵の線のタッチ、色味、気持ち良すぎる。
現実逃避としての居場所として使われることに対してのメタ的演出も庵野さんの優しさなんだよなぁ〜。最後の「気持ち悪い」もリアルタイムで映画館で観ていたら謎の感覚になっただろうけど、俯瞰的に観ることでそこも楽しめる。

庵野秀明の人生が正直に嘘なく投影されていて、魂をすり減らし作られている作品だから、エヴァンゲリオンは衒学的だけどエモーションなんです。

能動的に消化しようとしないと、消化できない作品なんです。愛され続ける作品の証です。

作家性、映像演出、アニメーションとして楽しむようになりました。


シン・エヴァンゲリオン

さて、ここからは新作の内容に触れて行くので、観てない方は読まないでね!

新劇場版になってから創作側は大企業化していて、特にシンエヴァは新しいスタッフが名前を連ねていて、庵野さんの意図がどれだけ反映されているのだろうか、と少し不安でした。

ただ、蓋を空けてみたらTHE・庵野秀明でしたね。庵野秀明のエヴァとの25年間であり、人生であり、頭の中と心の中の叫びと感謝。

上映開始した瞬間に隣の人が泣いてて、おいおい、と思ったんですけど、映画の始まりと共に流れ始める音楽が"世界は二人のために"ってタイトルの曲だったんだよねぇ〜。歌詞がちゃんと耳に入ってたら僕も泣いてましたね。笑

これを口ずさんでるのが真希波だし。開幕からこの映画はこういう映画ですってちゃんと宣言してるんです。

今作の最高な点の1つが音楽の使い方なんですよね。これがまた全部バチっと決まってて最高だった。

吉田拓郎の"人生を語らずをトウジに歌わせるところとかめちゃくちゃグッとくる。

ユーミンの"日付のない墓標"が流れてる時なんてずっと涙ですよ。

私があなたと知り合えたことを 私があなたを愛してたことを 死ぬまで誇りにしたいから

この曲を最後にかけてくれる庵野さんに優しさを感じましたね。

そして宇多田ヒカルの主題歌ね。。。
One Last Kissの「忘れたくないこと」「燃えるようなキスをしよう」「忘れかけても忘れられないほど」からの歌詞のないメロディーだけのサビ。最高すぎる。エヴァンゲリオンと忘れられないキスをした感覚。

中学生の頃では気づけないようなことも、僕も25年間生きてきたことで、成長して価値観が変わることで、吉田拓郎やユーミンの歌に反応できるようになっている。

そしてなんといっても第3村ですよ。
あの展開は誰も想像してなかったんじゃないかな。
エヴァの中にトトロが出てくる日が来るなんてねぇ、、

庵野さんの精神を病んで田植えをしに行って救われた経験や、震災後、宮崎駿とボランティアに行ったこと。自分がエヴァから逃げたいと、死にたいと思っていた時に宮崎駿からの電話で救われたこと。奥さんの存在が映画を完成させる支えになっていたこと。

奥さんの漫画が登場してたり、ジブリタッチの絵。無理矢理そのシーンを入れてる感じは全然なくて、あの展開があることがあの映画には絶対必要で必然的なんですよね。

エヴァは新作の度にシンジ君が精神崩壊状態からスタートする、全作を作り終えて精神が崩壊している庵野秀明の投影であろう。そしてそこからの立ち直り方も庵野秀明の人生であり。
旧劇場版ではミサトさんに無理矢理引きずられながらエヴァに乗せられたが、今回はそれが第3村であり、この映画の良さである。

庵野さんはアニメーターとしての師として宮崎駿と板野一郎を挙げていて、前半の自然と後半の戦艦戦。2人へのリスペクトがしっかり描かれていて、それを自分のスタイルとして昇華していて、かっこ良い。まさに守破離!

大和作戦ではミサトさんが髪を捲り上げて突っ込んで散って行くとこ、映画の中でもベストパートだよなぁ。あれは泣いた、、、

庵野さんは自分の1番のアニメーターとしての功績を王立宇宙軍をやってた頃の絵だって言っていて、その頃の感じを想起させるようなシーンがアスカが1人で雑魚キャラをなぎ倒していくところ。あのシーンのカタルシスはやばかったなぁ。

お話の内容としてはかなり分かりやすく風呂敷を畳む感じで、全部丁寧に描かれていたけど、その裏での音楽などの演出などはかなりハイコンテクストだったので、これから何度か観たり友達と喋ったりして♾に発見がありそうです。

ジブリや京アニが自分の中で優先度が高い作品だったけど、これをみてエヴァもこれに並ぶ大切な作品なんだなぁと。25年の歴史があって自分と同い年で自分の成長と共に存在してくれていていつも何かしら新しい価値観を与えてくれた。ありがとう。

人生と共に消化していく作品になりました。

ただ最後にアスカファンとしてこれだけは言わせて下さい。

「ケンスケ、、お前は許さん!!!」



"さよならはまた会う為のおまじない"


おはよう おやすみ ありがとう さようなら

今週のプレリストはエヴァンゲリオンからです。小沢健二の彗星だけ関係ない曲だけど、歌詞が完全にシン・エヴァンゲリオンなので入れました。

https://music.apple.com/jp/playlist/a-week-5/pl.u-2aoqq0zhG4poWe

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