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KING OF KINGS 2019現場レポート 2

ベスト16までのレポート1はこちら

ベスト16を終えて、一番盛り上がったのが審査員達のフリースタイルだったという現状は、興行側としては切実に考えなくてはいけないと思う。大量生産されるラップバトルの問題点は「飽き」なので。

準々決勝

9,SAM vs AUTHORITY - 呼煙魔
ビートメイカーの名前が出てここまで会場が上がるのが呼煙魔。バトルのしやすいビートもわかっている感じ。
SAMの「とうとう来たなこのときが。一番やりたくなかったが一番やりたかったぜ」
の通り、普段から仲の良い二人の対決。
2019年最もバトルの大会で結果を出している両者の対決。
乗りに乗っている二人だけに、先に他のMCとの戦いが見たかったなーという気持ち。性格的に仲良しを攻められないし、AuthorityがUMBを制覇した事に悔しさが溢れているSAM。その辺りの心情がそのまま出きったバースの連続。勝負に徹せなかった印象。
Authorityは毎ターンその場でのアンサーを徹底している。そこにきちんと韻を重ねていくし、何より対戦相手が認めざるを得ない男気がある。
AU「過去のトロフィーとかじゃねえ。今ここに立っているこの瞬間の勝負だぜ」
その「過去のトロフィー」で言ってしまえば有利なのは自分なのに「それを捨てて戦おうぜ」と言ってくるのだ。そりゃカッコいいわ。
スキルの勝負だけならわからなかったが、
組み合わせもあり、SAMが19年に見せ続けた強さを見せられずに敗退。
しかし観客はSAM。今年初めてジャッジが観客判定をひっくり返した試合に。
10,スナフキン vs 梵頭 - Lord 8ers
予想通りお互い草っぽいワードが連発。
話題が完全に一緒なので、梵頭が「あんまりフローしないBASE」に聞こえてくる。スナフキンは少し玄人好みのワードが多いので、こういった膠着した試合では観客受けが悪い。
梵頭はその点わかりやすい。
個人的には、その差かな、と思うしかなく。
11,MU-TON vs 呂布カルマ - Libro
準々決勝で当ててしまったのは運営のミスだろと思う組み合わせ。前述の人気トップ3を全員同じブロックに当ててきた意図が不明。新しいヒーローを求めてAUTHORITYかSAMに行かせたかったのかなーとか邪推する。
MU「始めよう呂布さん、言うことはなんもねえ。贈る花はアネモネ」
呂「勢いあったはずのルーキー。見ない内にその辺のMCと変わらなくなっちまった」
MU「ベートーヴェン、眼と眼合わせ」
呂「扁桃腺腫らし、レントゲンで見ても中身すっからかん」
MU「紅との指切りげんまん こいつの首切り天下」
呂「お前の用意してきた言葉で勝負してみろや」
観客はMU-TONだったが、ジャッジは3人呂布カルマに。またも観客をひっくり返す。
後からの感想だが「その辺のバトルMCと変わらなくなった」という呂布のディスは、結構的を得てるなあと思った。かつてのMCニガリにも思ったが「バトルうまくなった分バトルの枠に収まってしまった」感が滲む。
12,RAWAXXX vs 智大 - MASS-HOLE
九州対決。身内しかわからない表現が多かったのか、
観客がほとんど反応できない試合に。
R「塗り替える勢力図」
智「中身ないラップしやがって」
R「落ち着きな 足りてないのが腰つきが」
こういう時はPropsによってRAWAXXXに。ここ2試合ともRAWAXXXの良さがイマイチ出てないが、対戦相手と期待感で勝っている印象。このパターン、去年の呂布を彷彿。

ベスト8の試合は、うまく噛み合わない組み合わせが多かった印象。なんとなく「近いもの同士」だったせいか。一番盛り上がったのはもちろんMU-TON vs 呂布カルマ。

準決勝

13,AUTHORITY vs 梵頭 - JASHWON
青森のスキル系若手と岐阜のアングラ系ベテラン。土壌が違いすぎて、話があうのか?という印象の組み合わせ
AU「知ってるよ、裂固のボスだろ?」
梵「喧嘩売る 千羽鶴 テンカウント」
AU「あんた吸いすぎて結核障害とかなってるかもよ?」
梵「捕まってもなんも変わんねえ、ここで生き恥晒してる」
AU「あんたは深く煙を吸ってる、俺は深い言葉を吐いてる」
梵「俺は梵頭aka鷲、鷲掴み」
AU「高みの見物、俺が大トリを務める、鳥居くぐる」

梵頭のトリッキーなバースに対して
真正面にアンサーしながら即興で韻を踏み返せるAUTHORITYのとんでもないスキルが炸裂。煙を吸う、言葉を吐く、なんてオシャレすぎる。鷲からの高(鷹)みの見物からの鳥ネタなど、これこそがアウソ、という強さを見せ圧勝。
14、呂布カルマ vs RAWAXXX - DJ RYOW
名古屋のトップDJ、DJ RYOWのビートに、名古屋の呂布カルマが。
呂「昨日今日のチャンピオンに興味ない。常に最強でいたい。」
 「去年かいた赤っ恥はこびりついてる。1年経ってその冷えたラップがどうなったか聞かせてみろ」
R「このソウル一発で仕留める」
呂「嘘でしょ?まだテレビがどうとかいってんのか?新しい方法で俺を攻めなきゃどうもなんねえぞ」
R「話のすり替えがうまいな。何かが足りない」
呂「俺に足りないものはお前にもないから、お前から学ぶものは何もない。挑んでくるなら新しいもの用意してこいよ」
R「お前のそのバースは全て俺に当てはまらない」

「お前のバースは俺以外にも言えること」とRが言うが、どう考えても完全に彼向けの、しかもかなり愛情籠もったバースだったので「え?」てなり納得いかず。観客がRAWAXXX、ジャッジは延長
延長線は一転高速ビートに。

R「お前は今の地位を守る事に必死だな」
呂「お前に渡しても無駄にするだけだ。」
R「お前はここに居座りたいだけだろ」
呂「居心地良いからな。この椅子を足がかりに高いところに手が届く。弱いものイジメみたいだからもう一回やらすなよ」
R「一つ手に入れても燃やして次の椅子に座るだろ」
ビートのテンポに合わせてワンバース毎に観客が歓声を上げる名勝負に。
ビートアプローチはRだが、理屈では呂布の圧勝に思えた。このハイテンポな言葉のやりとりできちんと会話できる2人はとんでもない。
観客はR、ジャッジは2vs2で、結果3vs2でRAWAXXXの勝利に。

前述の通りベスト8がかなり盛り上がらない展開に。お互いパリッと戦えない試合が多く中だるむ。一方準決勝は両試合とも盛り上がるが特にRAWAXXX vs 呂布カルマの2本目は異常な熱気に。逆に言えば会場全体を巻き込む盛り上がりは今大会この1試合のみに。呂布カルマのめちゃめちゃ鋭い指摘にほぼ1つもアンサーしないままだったRAWAXXXに挙げた観客とジャッジにピンとこなかった。そんなんで優勝させてしまっていいのか??

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