見出し画像

子どもの存在は制作に影響を与えるか?

昨日ロサンゼルから戻ってきた。実は現在、自分の個展がロサンゼルで行われている。
https://www.harmanprojects.com/exhibitions/71-jun-oson-loiter/

2日前にその個展のオープニング・レセプションだった。そこでタイ出身で現在はロスに住んでいるアーティスト、アルトさんと話す機会があった。タイは今月末に家族旅行するので「月末にタイに行くよ!」「本当に!?」なんて話をしてたわけだけど。

そのアルトさんと彼の妻、ロスに住む日本人アーティストのNaoshiさんの4人で話しているとき、彼が非常に難しい質問をしてきた。「我々夫婦にはまだ子どもはいない。あなたは二人いますね?今子ども持つかどうか妻と話し合っているけど、子どもの存在はあなたにとって影響を与えましたか?」という質問だ。Naoshiさんが思わず言う。「その質問って日本語で答えるのも難しい…」と。

思わず考え込んでしまった。でもYESかNOで答えるならYESだろう。でもそれは自分が経験してきたこと・経験していること全てが少なからず作品に反映されるわけだろうから当然、という意味で。

でもきっと彼らは「子どもを持つことに興味があるけど、すごく責任が伴う。アーティストという特殊な仕事において子どもを持つというのはどういうことだ?おすすめか?」というニュアンスなのだろう。その質問になった場合は非常に応えが難しい。

結婚もそうだと思ってるのだけど、子を持つか持たないか?を合理的に判断するのは無謀だと思う。その時、多くの場合はNOになると思うから。何十年も昔であれば「ほど良い年齢になったら結婚して家を持ち、そして子どもを育てる」という見えない流れが存在した。それに沿っていない者は色々と言われる。それが個人主義の現代では「各々考えて好きにしよう」という風潮になってきた。すると「結婚するか?」「子どもを持つか?」ということを考えて判断しないといけない。そんな"してみないとわからないこと"を事前に判断しろと言われてもね。色々と不自由になるから「不要だ」となるという気持ちもわかる。だから少子化が起こる。結婚しないなら恋人もいらんやろ、と恋愛に興味がなくなるのもわかる。

結婚で得られる「一人じゃなくてチームで生きていく」感じとか、子どもに対する「自分の遺伝子を受け継いた存在の愛らしさ」などは、とても想像できるものではない。結婚はもしかしたら、パートナーと長く一緒にいたら想像できるかもしれないけど、「自分の遺伝子を受け継いた存在の愛らしさ」は無理だ。想像できるものではない。これもまた、昔であれば同居する兄弟に子どもが生まれ、その愛らしさを少し感じることができたり、近所を小さい子が走り回り「ねぇ、遊ぼうよ!」なんて接するうちに「子どもって可愛いなぁ」なんて思う機会もあるかもしれない。でも現代ではそれらは分離して接点がない。想像するしかないのだ。そしてそれは、「アフリカでの生活を想像してみて」と言われても不可能なように、無理なのだ。

そのアルトさんの質問に戻り、「子どもを持つことはおすすめか?」という質問の答えは難しいな〜(笑)。一つだけ言えるとしたら、自分の子どもというのは超絶的に特別な存在だ。命に代える価値がある。ということは、この世の人々は全員(例外はあるだろうけど)そういう愛情を受けた存在だったのだ。携帯を見ながら歩く女子高生や、駅を不愉快そうに歩くサラリーマン、ぺちゃくちゃと頭を寄せ合っておしゃべりするおばちゃん、店員にキレているおじいさん、みんなそういう存在だったのだ。それは子を持ってみないと得られない感情で、それを知ることができただけでも自分としてはすごく価値がある。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?