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世代を継ぐもの


のどかな田園風景が広がる千葉で、リタイア生活を楽しむ母を娘たちと訪れた。

次女の成人祝いの為、着物の着付けを母に頼むためだ。

「もっときつく締めないと着崩れるんじゃない?」

私が聞くと母は帯を結ぶ手が痛くて、これ以上は力が入らないと言う。

仕方なくそこからは私がやってみる。

二年前に長女の着付けを頼んだときは何ともなかったのに、母の老いを感じる瞬間だ。

母の桐のたんすに眠ったままの私の振袖は、長い時を経ても美しい。

私が成人の日に着たその時のままだ。

振袖のうす桃や紫色の花々は、次女に袖を通されるこの日を待って再び凜として咲き誇る。

ふと、二十歳を迎えたときの自分が次女と重なって見えた。

この娘もたくさんの夢を未来にいだいているのだろう。

母が私に託したであろう思いを、私も娘に託していく。

皆で記念の写真を撮り、無事に色節を終える事ができた私は少し涙ぐむ。

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