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「ヤクザと家族」と綾野剛の話

綾野剛が好きなんです、というとああ〜ハイハイ、というリアクションをする世の中の人たちへ。
綾野剛のことはちょっと知るだけですぐ好きになるので、問題はもはや彼のことが好きか嫌いかではなく、彼のことを知るか知らないかです。こんばんは。

※この記事はたぶん「綾野剛」がゲシュタルト崩壊すると思いますが、「神」「殿」「教祖」など様々な呼び方で各々変換していただいて差し支えありません。

いや〜、私の2021年2月は完全に彼と共にありました。
語弊しかない。
思い起こせば2月1日、憂鬱な休日出勤を終え素直に帰路に着くのが嫌だった私は、気になる映画でも見て帰るか! と半ば衝動的に近所のイオンシネマにかけこんだわけですが、そこで1日4回上映されてた封切り直後のイカついポスターに目を奪われ、光の速さでチケットを買い、キウイ味のよくわからんソーダと共に2時間の逢引をキメた次第です。
沼津で。
いや沼津行ったことないけど。

藤井道人監督作品、「新聞記者」がなんか色々言われてて気になってはいたもののまだ手が出せずにいたし、知ってる役者も何人か出てるけどこの人が出てるなら〜と拘って見るようなのでもない。だからこれを端緒に、綾野剛という深く澄んだ沼、もとい泉に頭から沈むことになるのを誰も予測していませんでした。他ならぬ私が呑気にヘラヘラしていました。文字通りぶっ刺されるとも知らずに。

一応補足しとくと、高校生の頃にやってた「カーネーション」を登校時間の関係でリアタイ視聴できないからとわざわざ録画していた程度にはしっかり見ていて、そのちょっと前にやってた「Mother」も見たり見なかったりではあったものの認知はしてたので、なんなら「空飛ぶ広報室」も松島基地を見学に行く程度には見てたので、おそらく元々氏のことは結構好きだったとは思うんです。思うのだが。
聞いてない。
あーーーー。
文字を書くのが趣味ですとかでかいこと言ってる割には言語化を怠ってしまう。だってなーーー。綾野剛だからなーーーー。あの綾野剛はなあーーーー。
どんな形容なら足りる? どんなに言葉を尽くしても色々足りなくね?
聞いてないです。カッコ良すぎました。ヤクザが刺されるとこ見て泣いたの初めて。「孤狼の血」で敵対組織の会長が首取られるとこも、もうちょっと泣けばよかったかな…(石橋蓮司さんすみません)

まじで映画見る前は「綾野剛って何歳だっけ? もう結構な歳じゃない? 19歳とかやれちゃうの?」とかそんなレベルだったのに、家に帰ってまずは速攻Netflix巡回した。
「横道世之介」ほんとや、出てたやん。「リップヴァンウィンクルの花嫁」この表情はいったい…「日本で一番悪い奴ら」そうだね!まだ見てなかった!「怒り」せやった!!!!久々見たい!!!「64」いたーーー覚えてる!!!!!
こうなると勢いは結構止まるところを知らず、たしか最近やってたドラマ主演じゃなかったっけ〜そう「MIU404」、録画消しちゃって途中から見れてないやつ。見るか。その前にアンナチュラル見返すか。アンナチュラルなっっつ。
……肝心の綾野剛作品に至るまでに一回「アンナチュラル」を挟んでいる模様です。「シン・ゴジラ」が好きなのでね。当然見るよね。
もう「アンナチュラル」の丁寧な脚本と芝居、セリフの応酬にやっぱ野木さん神だな〜めちゃくちゃうめえな〜とひとしきり納得し、中堂先生の残酷すぎる運命にクソガッ!!!と(かわりに)吐き捨てながら齧り付いて見てたわけですが、アマプラで見れるアンナチュラルとちがってMIUはまだまだParavi独占、しかし今の私には多少の課金くらいどうってことはない、見てーし! 綾野剛がこんなハツラツとした顔見せて演技するイメージあんまねーし! と勢いでParaviにまで加入しました。
見た、あの、改めて見ると、うん…めちゃくちゃよかった。ドラマとしての質と作りが最高に良かった。ちなみにキャラとしては志摩が好きです。いつもそう。推しキャラと中の人の推しは常に被らない。もちろん伊吹も可愛いんだけど! みんな言ってるけどいちばんきゅるきゅるしてるの伊吹だからね。
すげーいいドラマだな〜とヤクザとはまた別方向に宝物が積み上がった感じでした。Blu-rayBOX買っちゃった。メロンパン号のクラフトどこに飾ろっかなあ。

本題に戻します。
「ヤクザと家族」の山本のまなざしは、「カーネーション」で見た周防龍一のえもいわれぬ世の中との隔絶、糸子を惹きつけた強烈な個性に似ていたし、「怒り」で見た直人の仙人めいた佇まいとも相通じる部分がありました。
一方で演じたご本人は「山本は愛された人」と分析していて、対極とも言うべき伊吹藍と対置して述べていたりして、あーこの人愛されてることにあぐらかかない人なんだな、自分に差し向けられた愛情に対してめちゃくちゃ敏感な人だな、とインタビューからそれ以上のものを読み取らせてもらった気分でした(それって言葉を返せば周防も直人も伊吹もみんな「愛された」人ってことか、とじんわりした。たしかに愛されていた。ものすごくふんだんに)。
だからこそあの渡世で、あれほど物理的にはなにも持たない男を演じながら「家族」を守る、というシンプルな仕事に徹することができたのかなあと。
自分が持たないものや失ったものを注視しがちな世界で、持つものや既にあるものを大事にしようとする心の動き。これは持とうと思って持てるものではなく、すでにあるものの価値を的確に感じ取る精緻な技能が必要になってくるし、少なくとも演者である綾野剛はそれを十分すぎるくらい持ち合わせている。さらに、それを表出する能力を持っている。ひとつの奇跡だなと。
「家族」の解釈が想像しうる限りいちばん広い定義なのもよかった。親分、兄貴分、弟分、息子みたいな人、娘、妻みたいな人。山本にとってはみんなまとめて家族。しかしその家族、みんなをみんな守れないがゆえにああなったわけだが、死別・離別・決裂のすべてが話の筋に利用されるというより、山本にまつわる愛を正攻法または逆説的に描写する舞台装置として機能しているのがすばらしい。
結末はこうなるしかなかったよなあと納得であり、海外の古典文学的ですらあった。戦う敵がひとりの個人ではない「ハムレット」は、私怨による復讐ではなく、己が愛を差し向ける相手を救い、受け入れることによって愛を分かち合い、満足して死んでいく。宗教的ですらある。だからmillennium paradeの「FAMILIA」を聴くことによって作品が完成する(なんならMVも見てほしい)というのが正解。これまた日本特有の「体系的なものがない」宗教観によって彩られた、海沿いの工業地帯の野辺送り。映像美にしずかに涙する。表情から、所作から、涙から、声音から、全力で生きた1人の人間の歴史をありありと感じて、揺さぶられない人間がいるかという話。凄まじい映画でした。MVの完成度が高いから、映画思い出して充分泣ける。

(とりあえず貼っとくのでみんな見てね)
https://youtu.be/QyZDoDTB6cQ

この凄まじさに揺さぶられて、私と綾野剛の旅は始まった(語弊)。
ちょっとこの1ヶ月に見た関連作品を書いていきますね。なるべく時系列で。初視聴とリピート視聴はあまり区別しません。

・ヤクザと家族
・MIU404
・日本で一番悪い奴ら
・空飛ぶ広報室
・怒り
・シュアリーサムデイ
・新しい靴を買わなくちゃ
・モニタリング(カメラマン、アーチェリー、新成人)
・コウノドリ
・シャニダールの花
・ピースオブケイク
・リップヴァンウィンクルの花嫁
・そこのみにて光り輝く
・ヘルタースケルター
・S 最後の警官
・新宿スワン
・64
・亜人
・Mother
・白ゆき姫殺人事件


役幅よ。
サクラ先生とMotherの虐待男の演じ分け、ほんとすごすぎません?
同じ金髪のチンピラ少年なのに山本19歳と白鳥のちがい、どうやってこんだけ区別して出してるの?
自衛隊と県警察の広報官演じ分け最高でした。
というか警察官色々やってんね?! SAT隊から機動捜査隊、捜査一課に道警、群馬県警……きりがないね!
加藤雄介と大西直人も全然違う切り口でこれまたよかった。
混乱しながら色々見たけど楽しかったな〜。
各種サブスクほんとうにありがとう。

サブスク配信されてない映画やドラマに関しては、今後レンタルとか使いながら見ていきたい。ていうか綾野さん休んでます? なんかまじでここ10年くらいのコンテンツにずーーーっとなんかしら出てません? ヤクザの宣伝をうっている今この瞬間ですら、4月からのドラマの収録してるとか言ってたもんな〜割と意味がわからん。こんなに仕事して、全部の現場で120%表現しようとしてる人、好きになるわ。なりました。
にわかもいいところですが、いいタイミングで途方もない沼にハマっちゃったな……としみじみ噛み締めています。今手に入るものといえば、「GQ」3月号のグラビアがめちゃくちゃ良かったので、必見。
紙版なくなってた。店頭で探すしか。電子版ならこちらのサイトで購入できます。もう表紙からして買い。


https://www.fujisan.co.jp/product/1281680178/b/2067883/ap-tw-fujisan


彼が長いこと仕事してくれて、元気でたくさん素敵な作品に出演してくれるよう祈るばかりです。
ひーーー。
ちなみにいちばんド性癖だったのは「リップヴァンウィンクルの花嫁」のめちゃくちゃ胡散臭い斡旋業者(役者?)のにいちゃん。エロかったな〜〜〜。佇まいから表情の作り方、所作、しれっと嘘をつく、嘘をついていることを窺わせない器用さ。良さしかなかった。ちょっと一回見てほしいです。エロかった……(2回言った)
来月は「ホムンクルス」が公開され、さらに「恋はDeepに」が始まる模様。テンション高く応援したいと思います。

次回は5週連続1位とかなりのヒットを飛ばしている「花束みたいな恋をした」について書きたいと思います。
菅田将暉のANN聴きながら書いてたらめちゃくちゃ長くなってしまいました。
次回は星野源のANN聴きながら書くのでまた長くなりそうです。

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