麦わら帽子とお父さん
「お父さーん、ちゃんとお風呂入ってる?」
「ちゃっぷい(寒いから)なあ〜。明日入るよ〜。」
いつものセリフ。
ところで、ちゃっぷいって…?
無精髭が伸びつつある。
「ヒゲ剃らないの?」
「新しいヒゲ剃り買ったから、お風呂入ったら剃るよ!」
ドヤ顔でパッケージに入ったままの新品のヒゲ剃りを見せる。
いったいいつ買ったんだ???高性能の電動ヒゲ剃りもあるのに。
よく分からない言い訳をニコニコしながら言うお父さん。
でもさ、カッワイイんだよなー。お父さんて。
むすめ訪問介護?にやって来た私もつられてニコニコしてしまう。
ハイそうです。私は父が好き。いや、大好きです。親バカではなく、むすめバカです。
(息子には、「いつまでもじゅんみはさんはおじいちゃんに反抗期だよねー。」と言われるけど。)
私は以前、介護の仕事をしていたことがあるのに、家族の介護って本当に難しいな、といつも思う。
つい口調が強くなってしまったり、急いで家事などをして、父の表情や様子を見ていなかったり。
ゆったり穏やかに話しを聞くのを後回しにしてしまったり。
介護の仕事をしていた時に、ご利用者さまや、ご入居者さまのご家族が温かい接し方をされていたのを思い出し、本当に見習いたいと思うが、なかなか上手く出来ない。
仕事では、なるべくみなさんの心に寄り添うようにと心掛けていたけれど。父娘だと、父が老いていくのを頭では分かっているのに、見るのがもどかしい。不思議だな。
お風呂掃除をしながら、「ピカピカにお風呂
磨くから、今日こそはお風呂に入ってくれますように!!!」と願いつつ、「でもさ、お風呂に入らなくても、ニコニコ笑って元気でいてくれるだけでも、はなまるだよなー。」と独り言を言う私。
暴れん坊将軍を観ながら窓際で日向ぼっこする父の横顔がカワイイ。
父が世界ネコ歩きを観ている横で、私が洗濯物を干していると、
「ネコはどんな猫でもヒゲが白いよね。」
「お父さん、なんで白いか知ってるの?」
「知ーらなーい。」
は?????
「三毛猫はみんな三毛だな。黒猫はみんな黒いな。」
なんじゃそりゃ~?!?!!笑ってしまう。洗濯物を落とす。
乾いた洗濯物を畳んで引き出しに片付けようと開くと、クシャっと丸めた靴下発見。
「お父さん、これはキレイなの?」
「あんまりキレイじゃないよ。えへへ。」
(多分、履いたあとの靴下をまた引き出しに戻したのだと思われる。)
二人で笑う。靴下は洗濯機に直行だ。
いつも水筒に温かい紅茶をたっぷり入れて持参し、二人分カップに注ぎテーブルに置く。
「おトイレ行きたくなっちゃうからいらないよ〜。」
と父は言うが
「冬でも水分摂らないと、エアコンつけてるから脱水になるよ!飲んでね!」
と言って家事をしに離れて、後でカップを見るときちんと全部飲んでいる。さり気なくまたおかわりを入れておく。また飲み終わっている。よしよしいいぞ!
休憩にベランダに出ると、父の家の前の池にシラサギのつがいがいた。
「シラサギのつがい、カワイイねー。」
と言うと
「シラサギはね、夫婦で来て、他のシラサギが来ると追い出すんだよ。」
「わー!そうなんだ、夫婦仲良しなんだね。」
「お父さんもじゅんみはちゃんも失敗しちゃったけどね!」
とニコニコしている。
(二人ともバツイチ)
いやいや、全然笑えないよね。家事しに来た私にそんなブラックなことツッコんでくるなんて、こりゃやられたよ。
安心だけどさ、ズッコケるよね。
心のなかで呟く。
「そろそろ帰るね。ゴミ捨てとくから。」
「ありがとね。バッテリー(電動自転車の)と、ゴミ袋持って行くと危ないから、雨の日にゴミ出そうと思ってたんだよ。」
「雨の日は、傘持ってだと危ないからいいよ。ついでだし。」
「ありがとう。」
ゴミを持って玄関を出る時
「またねー。」
と言うと、満面の笑みで
「気を付けてね!ありがとう!」
とベッドから父が手を振る。
手を振り返し、何気なく壁を見ると、去年プレゼントした麦わら帽子がキレイに飾られている。
・
プレゼントした時、父は衰弱していた。
でも、とても喜んで直ぐに帽子を被ってみて嬉しそうだった。
「お父さん加山雄三みたいじゃん!」
「えー?お父さんジュリーの気分なんだけど。」と不満顔。
「♪ボギーボギー♪」と歌っている。
いやいや、ジュリーではないよね。
(麦わらハンチング帽?なのかな?正式名称がわかりません。)
やっと元気になってきた父。
帰り際、「この前の小さいラーメン美味しかった!」
マグヌードルのことだ。
いろんな食べ物を持って行っているのだが、マグヌードルが最近の一番のお気に入りのようだ。
「次また来る時に買ってくるよ!」
アレコレ試してみても、食が細い父。
もう、ジャンクフードでも何でも良いからとにかく好きなものを楽しく食べて元気になって!と心底願う。
・
今年の夏はさ、麦わら帽子被ってかっこいいジュリーになったお父さんと一緒にサイクリングしよう!
と、私は自転車を飛ばして鼻歌を歌いながら家に帰った。
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麦わら帽子を被って、ジュリーになりきる父を描いてみました。(急いで描いたのでえんぴつ描き。)
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(マガジンはじめました。)
↓元気になる前の父の話しを書いたnoteです。
こちらもよろしければ読んでみてください。
父と自転車|じゅんみは #note #いま私にできること https://note.com/junmihappy/n/n7dad103ce345
読んでくださりありがとうございます! 嬉しくて飛び上がります♪ 私の心の中の言葉や絵を見て何か感じてくださればいいなと願いつつ。