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ウミネコって知ってる?

「ねえ優くん、ウミネコって知ってる?」「カモメのことじゃないの?ていうかさ、真梨子はいつも俺が話してる途中から自分の話を始めるよな。」

二人はいつものBarで、ウイスキーロックとハイボールを飲みながら話していた。

「カモメみたいなんだけど違うみたいなの。くちばしが赤くてね、猫みたいに『にゃーにゃー』って鳴くんだって!」少し酔って頬が赤い真梨子は楽しそうだ。「真梨子はさ、そう言って大好きな海に行きたいだけでしょ?」ウイスキーを飲みながら、薄いチョコレートを一口食べる。
「そうそう、海に『ウミネコ』見に行きたい!」
「じゃあ、今度の連休に行こうか。」
優しい顔で笑う。優くんて良い名前だなぁ。なんて思った。

海に向かう電車の中で、真梨子はもうはしゃいでいる。
「山野くん」「池崎さん」から「優くん」「真梨子」になるなんて、中学生の頃の俺達には想像もできなかった。
真梨子が嬉しそうだと俺もホッとするんだよ。10年振りに再会した時の真梨子は頑張り過ぎているのに上手くいかなくて、とても辛そうだったから。

海に着くと「優くん、海!海!」と真梨子は子どもみたいに走り出し、手招きしている。

僕はその手を握る。二人で空を見上げた。
「トンビしかいないね。ウミネコもカモメも飛んでないや。」「トンビは、タカやワシ、ミサゴ、ノスリと同じ猛禽類。カモメやウミネコは鳥類。飛んでいる場所が違うんじゃない?」「優くん、カモメとウミネコの違いも知らなかったのに調べたの?そんな難しいことはよくわからないけど、ウミネコに会いたいな。」
足元から「にゃーにゃー」と聞こえる。
二人は手を繋いだまま下を見ると、ミケ猫とハチワレ猫とチャトラ猫、その背中には小さい何かが乗っていた。
「猫と…こびと?」「なんか、尻尾でついてきなよって言ってるみたいだ。」
背中にこびとを一人ずつ乗せて、砂浜を歩く猫達の後を二人はついて行った。しばらく歩くと浜辺から道路へと続く階段があり、そこに猫達が座った。こびと達も背中からピョンと降りて座った。二人も隣に座る。
「こびとって本当にいるんだ。」「まぁいいじゃない。」小さい声で話していると、ミケ猫が「にゃー」と一声鳴いた。すると、とんがり帽子を被ったこびとが空を指差す。

みんなで空を見上げる。

青い空高くに、白いカモメとカモメによく似たくちばしの赤いウミネコが気持ち良さそうに飛んでいた。
ハチワレ猫が「にゃー」と鳴くと、ウミネコも「にゃーにゃー」と鳴く。
真梨子も「にゃー」と真似して鳴いてみた。ウミネコも「にゃーにゃー」と鳴いた。
「わあ!凄いね!ウミネコとお話しちゃった。猫さんとこびとさん達はウミネコとお友達なの?」下を見ると、猫もこびともいなくなっていた。
もう一度二人で空を見上げた。
ウミネコが「にゃーにゃー」と鳴きながら二人の上を飛び、赤いくちばしから何かを落としていった。そして海の向こうへと飛んで行った。

鳥のように翼を広げて落ちてくる。優がキャッチして真梨子に渡す。
「ウミネコのumineko?」
ノート位の大きさの、雑誌のような、本のようなものの表紙には、緑の中にさっきのチャトラ猫が隠れている写真と、上には『umineko』と書いてあった。

『猫を感じること  猫と暮らすこと  この世界に猫がいること』

「やっぱり、さっきの猫さんとこびとさん達は、ウミネコとお友達だったんだね!嬉しいプレゼントもらっちゃった。」「じゃあ、海沿いのカフェでコーヒーでも飲みながら一緒に読もう。」

ゆっくりと丁寧にドリップしている
コーヒーの香りが海風で広がる

コーヒーを淹れている、こぽこぽという音と香り。目の前には空の青と海の白い波が見える。

カフェから見える海

「ここはまるで『パラダイス』みたいだね、優くん。」「うん、真梨子と来れてよかった。」
コーヒーを飲みながらパラパラとページを捲っていると、「見て!さっきのこびとさんの絵!こびとさんも本当にいるんだね。」目をキラキラ輝かせ、絵とお話を見ている真梨子の頭をそっと撫でた。え?と俺の顔を見た真梨子のおでこにキスをした。頬が赤くなった。この照れた顔を見るのが好きだ。

海から駅へ歩く。
「なあ、11月に『文フリ』一緒に行こうよ。」「文フリ?なにそれ。」「真梨子は読書苦手だからな。『文学フリマ』のこと。いろんな人達が作った様々なジャンルの文学作品の本を展示して販売するんだ。俺の友達が出店するらしくて『素晴らしい仲間達の作品を紹介する小雑誌を作るんだ!』って熱く語ってた。今ディスプレイの模型作ってるって、この前見せてくれたんだよ。」「そうなんだ、なんだか楽しそう!優くんは本が好きだし、私も本を読むきっかけになるかもしれないから興味ある。優くんのお友達にも会えるんだね、嬉しいけど緊張するな。」「なんで?」「大好きな優くんのお友達に会うんだもん。」ふふっと嬉しそうに優が笑った。「友達の『ものがたり』すげー面白いんだよ。楽しみだな。」
夕日が映した二人の影は、いつまでも手を繋いでいました。

ウミネコから始まる、二人の新しいものがたり。幸せな時間の予感。
さっきの猫達とこびと達が、そっと後ろからニコニコ見守っていました。

・・・

このお話は、ぼんやりRADIOさんが、いろんなnoterさん達の素晴らしい作品を紹介したい!という熱い思いで制作されている
『小雑誌ウミネコ』

を、「みんなで応援しよう!」という
marmaladeさんねじりさんはじめ、こびと部のみなさんのステキなステキな
こびと部公式企画『ウミネコ応援隊』のために作ったお話です。

こびと部のみなさんと一緒に、
ぜひ沢山の方々に「ウミネコ」を知ってもらいたい!
手にとって素晴らしい作品達を読んでいただきたい!!
そんな思いから、このお話を書きました。

↑「ウミネコ」進捗状況マガジンです

小雑誌「ウミネコ」には、我が家のカワイイ三毛猫三姉妹も登場します♪
「文フリ」では、さわきゆりさんの本『パラダイス』も一緒に販売するのと、さわきゆりさんの『パラダイス』という小説が大好きで、文中に「パラダイス」という言葉を使わせていただきました。さわきゆりさん、ありがとうございます。
そして私は今、「文フリ」のuminekoディスプレイデザインをお手伝いさせていただき、そのための小道具を制作中です←ちゃっかり自分の紹介も!

そしてそして!「ウミネコ テーマソング」こびと部部長の穂音(ほのん)さんの『ウミネコぶんたった』こちらもぜひ!お聴きいただきたいです。思わず「ぶんたった♪」と踊りだしたくなります。

このお話は、今年1月にピリカ文庫で私が書いた小説
「Valentine Chocolate」の続きでもあります。どなたか気付いていただけたかな…?真梨子と優くんも「ウミネコ応援隊」だそうです!

最後まで読んでくださり、ありがとうございます!
三毛猫三姉妹と一緒に、ウミネコぶんたった♪♪♪と踊って喜んで感謝しております!

長女ちゃんも「母ちゃん、いつまでもシクシクしてちゃダメ!楽しく書いて笑顔になってね。」と、お空からnoteにゃんこ監督してくれていました♪

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