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2019年に読んだ本

2019年に読んだ本の中で印象に残っている本を10冊あげてみよう。


マチネの終わりに 平野啓一郎
大きな鳥にさらわれないように 川上弘美
PIXAR 〈ピクサー〉 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話
杉並区長日記: 地方自治の先駆者・新居格 新居格
宝島 真藤順丈
コンビニ人間 村田沙耶香
天冥の標  青葉よ、豊かなれ 小川一水
精霊の木 上橋菜穂子
突然ノックの音が エトガル・ケレット
サルチネス 古谷実

この10冊について、長々と書評のようなものを書いた。2時間ほど熱心に書いた。
書き終わったところで、自分の中の承認欲求の化け物に殺される!と思って全部消した。
やっぱり自分の読んだ本を人に紹介するのって、頭の中をさらすような下品さがありますよね。なので2冊だけおすすめして後は一言だけ紹介するに留めます。


マチネの終わりに 平野啓一郎

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10冊の中で一番お勧めなのがこの本。
平野啓一郎の小説はストーリーに抽象的な難解さや、メタファーが少ない。つまり分かりやすい。多くの著作が示唆にとんでいて、「生きるヒント」のようなものを与えてくれる。「空白を満たしなさい」に代表される分人主義は、生きるのがつらいと思っている人に、具体的な提案をしてくれると思う。

回りくどい言い方をしたが、以上の事は全部忘れてほしい。平野啓一郎がどんな作家だとかそういう話は、マジでどうでもいい。

この小説は単純にストーリーがおもしろい

それだけでこの本を読む理由として充分。
中年男性と中年女性の恋愛がストーリーの主軸だが、胸が締め付けられる思いになれる。こんなに切ない気持ちになったのは高橋留美子先生の「めぞん一刻」以来。私はこの本を新幹線で読みはじめ、ホームのベンチで読み切った。
嗚咽を堪えきれず、声に出しながら、落涙しながら読んだ。きっと周りの人達に心配かけたことだろう。おススメ。


杉並区長日記: 地方自治の先駆者・新居格 新居格

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近所に虹霓社という小さな出版社をやってる方がいる。日本一標高が高い出版社らしい。伝説的漫画家つげ義春のグッズを通販で販売していることで知られている。
私はつげ義春もサブカルチャーも大好きな鬱屈とした人生を歩んできたもので、その様な方との出会いに大変喜びを感じた。
その方に頂いた本がこちら。

およそ100年前、杉並区の初代区長となった新居氏の日記。理想を求め、長いものにまかれず、清廉潔白とした信念は全ての政治家が本来持つべきだと思う。
旧態依然としたしがらみや慣習にへきえきとしながらも、ひたむきに生きる区民への温かい目線と、文化的な街づくりへの純粋な思いが胸を打ちます。

日本の民主化はまず小地域から」これは本の中での言葉ですが、至言だとおもいます。地方で働くリーダーには是非読んでもらいたい。

それにしても100年前の政治家の苦悩に共感すること自体は少々悲しくもありますな。


のこり8冊の本に対するひとこと


大きな鳥にさらわれないように 川上弘美
カズオイシグロ「私を離さないで」を髣髴とさせるディストピア小説。

PIXAR 〈ピクサー〉 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話
お金の話と言いつつ、ピクサーのストーリに―対するこだわりと自信が記憶に残った。

宝島 真藤順丈
沖縄がうしなったものと、うしなっていないものについて書かれていました。あつい小説だと思います。

コンビニ人間 村田沙耶香
村田沙耶香好きってあんまり人に言わない方がいいと思うけど、そういった人に言えない自意識みたいなものを抱えきれない人向け。

天冥の標  青葉よ、豊かなれ 小川一水
SFシリーズ全10作17冊の最終章。つまりとんでもなくながーい一つのおとぎ話。
何らかの理由で半年くらい働かなくてよくなったら、読んでみるのもいいかもしれませんね。その半年で10億年分くらいの経験を積めるかもしれません。

精霊の木 上橋菜穂子
敬愛する上橋氏のデビュー作。畜産農家は全員「獣の奏者」と「鹿の王」を読みましょう。

突然ノックの音が エトガル・ケレット
戦争が日常のイスラエル作家。ナンセンスでポップなギャグがちりばめられています。どんな人生にもユーモアを。

サルチネス 古谷実
ちょっとむかしの漫画。内面も外面もグロテスクな内容が散見する作者ですが、面白かったです。揺れる自意識になやむ青年の哀愁。

以上でござます。本当は12月に書くつもりだった。去年の話をしても鬼は笑ってくれませんが、皆さんはどうだったでしょうか

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