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はじめての3Dプリンタ選び

はじめに

「はじめての3Dモデリングソフト選び」のnoteが多くの方に読んでもらっており、加えて今でも読んでくれている方もいるようで本当にありがたく思っております。

最近問い合わせも増えてきているので、はじめてシリーズということで、3Dプリンタの話もまとめてみようと思います。

この記事では、小規模の3Dプリント環境を整える初学者向けに、"2021年1月現在のおすすめの3Dプリンタ""3Dプリンタを選ぶときにみるポイント"あたりに触れながら書いていこうと思います。FDM(熱溶解積層)方式の3Dプリンタの情報になります。また、この記事は研究室や所属に関係なく、個人の意見ですので、ご了承ください。

3Dプリントに関連するプロフィール

3Dプリンタに関連する経験は以下のようになります。3Dプリントの研究・実践・教育に関わらせていただく中でありがたいことに多くの機器にも触れながら学ばせていただきました。

・3Dプリント歴:5年 (2017-)
・購入台数:7台
・使用したことのあるプリンタ
MUTOH MF-2200D / MUTOH MF-1000 / XYZ ダヴィンチ1.0 / Makerbot2 / Makerbot 5th / FlashForge Creator Pro / QiDiTech (Dualノズル) / Zotrax M200 / BS-Cube / AnyCubic Mega-S / Raise Pro2 / UP mini2 / Afinia H400 / S-Lab MothMatch 3DP222 / FlashForge Adventurer3 / FlashForge Finder / AnnoLab anno3DP-Conveyer / 研究室のデルタプリンタ
・好きなスライサー:Simplify3D
・修士を慶應義塾大学の田中浩也研究室で取得

3Dプリンタを選ぶときのポイント

3Dプリンタを初めて買うときは、多くの項目に混乱することが多いですが、少なくとも下記の情報を得ておくと良いでしょう。

1.造形範囲
2.メンテナンス性/メンテナンスコスト
 ①ノズル・エクストルーダーの交換方法 
 ②オートキャリブレーションの有無
3.価格
4.印刷可能なフィラメントの種類
 ①ノズル温度
 ②プラットフォームの加熱の可否
 ③ダイレクトorボーデン
5.その他
 ①騒音
 ②囲われているか(エンクロージャーの有無)
 ③スライスソフトウェアの種類

項目の簡単な解説

1.造形範囲
出力可能な範囲。
15cm立法のものが多く、それ以上のサイズから価格帯が上がる傾向があります。大きい3Dプリンタほど大きいものが出力できますが、キャリブレーション(位置合わせ)が大変になる傾向があります。

2.メンテナンス性/メンテナンスコスト
使用する際のトラブル対応のしやすさ。
最新機器と思われがちですが、素材がつまったりするなどの対応は随時行わなければいけません。最近はノズルやエクストルーダーを一式で交換できるものもあるのでトラブル対応がしやすいものも増えつつあります。
また、信じられないかもしれませんが、ノズルとプラットフォームのキャリブレーションが3Dプリントの調整においてかなりの時間を取られます。はじめての場合は、オートキャリブレーション付きの機器を選ぶことをおすすめします。

3.価格
機械の価格。
3-25万円くらいまで幅があります。高ければ良いというわけではないので、性能を見極めながら選びましょう。

4.印刷可能なフィラメントの種類
FDM(熱溶解積層)方式の3Dプリンタの素材であるフィラメントは機器によって印刷可能かが異なります。ノズルの温度によって溶かせる素材が変わります。一般的に240℃くらいまで温められれば十分です。
"プラットフォームの加熱"は素材の急激な収縮を抑えることができるため、反りやすい素材を使用する際には必要になります。
また、柔らかい素材を出力する際は、素材が弛んで出力できないことがあるため、フィラメントのコントロールがしやすいダイレクト方式を選ぶと良いです。硬い素材の出力であれば、ボーデン方式で問題ありません。

※ダイレクトとボーデン
ノズルの直上にエクストルーダー(押出機)があるものをダイレクト方式。
ノズルから離れた位置にエクストルーダーがあるものをボーデン方式といいます。

5.その他
出力の際の"騒音"は意外と大きいので同じ空間で仕事などをする場合などや、家庭で使用する際は静かなものを選ぶと良いと思います。
囲われているかどうか(エンクロージャーの有無)は、3Dプリンタ内の温度をコントロールするのに役に立ちます。急激な温度低下は反りと印刷失敗に繋がるので、"エンクロージャー付き"の方がより良いでしょう。
"スライスソフトウェア"は、3Dデータを3Dプリンタようにデータ変換するソフトのことです。3Dプリンタに対応した専用ソフトがある場合と、オープンソースのスライスソフトがある場合があります。一般的に、プリンタ対応のスライスソフトウェアの方が出力がきれいにできる傾向がありますが、研究用途などで様々な条件下で出力する場合は、オープンソースのソフトウェアが対応しているか調べるとよりようでしょう。

オススメの3Dプリンタ

以上のことをふまえて、初学者にオススメする3Dプリンタはこちらになります。価格などは、2021.1.30現在のもの。

1.Adventurer3 / FLASHFORGE

1.造形範囲
→15cm x 15cm x 15cm
2.メンテナンス性/メンテナンスコスト
 ①ノズル・エクストルーダーの交換方法 
 
→ノズルをワンタッチで交換可能
 ②オートキャリブレーションの有無
 →有り
3.価格
 →58,000円(税込63,800円) 
4.印刷可能なフィラメントの種類
 ①ノズル温度
 →240℃
 ②プラットフォームの加熱の可否
 →可能
 ③ダイレクトorボーデン
 →ボーデン
5.その他
 ①騒音
 →かなり静かな部類です
 ②囲われているか(エンクロージャーの有無)
 →有り
 ③スライスソフトウェアの種類
 →FlashPrint (専用ソフトウェア)
コメント:
 
普段から使用している機種で、一つ選ぶならオススメするならこの機種です。

2.Afinia H400+ / UP mini2

1.造形範囲
→12cm x 12cm x 12cm
2.メンテナンス性/メンテナンスコスト
 ①ノズル・エクストルーダーの交換方法 
 
→エクストルーダ部分ごと交換可能。ノズルのつまりは通常対応
 ②オートキャリブレーションの有無
 →有り
3.価格
 →100,000円〜
4.印刷可能なフィラメントの種類
 ①ノズル温度
 →260℃ ??(正式な温度が見つからず不確かです...。)
 ②プラットフォームの加熱の可否
 →可能
 ③ダイレクトorボーデン
 →ダイレクト
5.その他
 ①騒音
 →かなり静かな部類です。Adventurer3よりは少し騒音が大きいです。
 ②囲われているか(エンクロージャーの有無)
 →有り
 ③スライスソフトウェアの種類
 →Afinia Studio / UP Studio (専用ソフトウェア)
コメント:
 
コンパクトなプリンタで持ち運び可能なサイズです。ワークショップでよく使ってました。

3.FlashForge Finder

1.造形範囲
→14cm x 14cm x 14cm
2.メンテナンス性/メンテナンスコスト
 ①ノズル・エクストルーダーの交換方法 
 
→ノズルのつまりは通常対応。
 ②オートキャリブレーションの有無
 →無し。ガイドに沿って自分で調整する
3.価格
 →43,000円(税込47,300円)
4.印刷可能なフィラメントの種類
 ①ノズル温度
 →240℃ ??(正式な温度が見つからず不確かです...。)
 ②プラットフォームの加熱の可否
 →可能
 ③ダイレクトorボーデン
 →ダイレクト
5.その他
 ①騒音
 →かなり静かな部類です。Adventurer3よりは少し騒音が大きいです。
 ②囲われているか(エンクロージャーの有無)
 →無し
 ③スライスソフトウェアの種類
 →FlashPrint (専用ソフトウェア)
コメント:
 
価格がやすくサポート導入しやすいプリンタです。オートキャリブレーションがないことや、ノズルの詰まり対応などはハードウェアに慣れていない人は大変に感じることがあります。

4.Any Cubic

1.造形範囲
→21cm x 21cm x 20.5cm
2.メンテナンス性/メンテナンスコスト
 ①ノズル・エクストルーダーの交換方法 
 
→ノズルのつまりは通常対応ですが、分解などが必要です。購入時に予備のノズルがついてきました。
 ②オートキャリブレーションの有無
 →無し。ガイドソフトなどはないため、自力で調整します。
3.価格
 →28,000~36,000円(セールなどで前後します)
4.印刷可能なフィラメントの種類
 ①ノズル温度
 →270℃
 ②プラットフォームの加熱の可否
 →可能
 ③ダイレクトorボーデン
 →ボーデン
5.その他
 ①騒音
 →めちゃうるさいです。
 ②囲われているか(エンクロージャーの有無)
 →無し
 ③スライスソフトウェアの種類
 →Curaなど(オープンソースソフトウェアが使えます)
コメント:
 
価格がやすく、造形範囲が他と比べて広いことが特徴です。騒音が大きいのと、修理や調整が大変なので、ハードウェアが苦手な人は最初に買うことはおすすめではありません。

おまけ:研究室におすすめ

予算がある程度確保できている研究室などでは、下記のプリンタがおすすめです。

1.MothMatchシリーズ

京都の3DプリンターメーカーのS-Lab社は、日本でももっとも品質の高い3Dプリンタを製造しています。静かで出力も安定しています。受注生産のはずです。

2.Ultimakerシリーズ

ヨーロッパで最も使われている3DプリンタであるUltimaker社です。ボーデン方式ですが、安定した品質で出力可能です。

3.Zotrax M200/M300

Zotoraxのプリンタは専用ソフト、専用プリンタ、専用プリンタでかなり品質の高い出力ができます。最後に使ったのが、3年前でそのときは柔らかい素材は出ていなかったのですが、最近柔らかい素材も売られているので、専用の調整を使うと出せるのかもしれません。

おわりに

独断と偏見はありますが、3Dプリンタの選び方を書いてみました。これから、3Dプリンタを買う方は参考にしていただけたらと思います!

ちなみに我が家は、FLASHFRGEのAdventurer3とFinderをそれぞれ、硬いフィラメント用の専用機と柔らかいフィラメントの専用機としてコンタミしないように使用してます。

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また、"3Dプリンタの導入の個別のコンサルテーション"にものることは可能ですので、もし希望があればお気軽にご依頼くださいm(_ _)m

"楽しい3Dプリントライフを!!!!"


筆者:吉岡純希
Twitter : https://twitter.com/Junky_Inc 
ポートフォリオ : https://technurse.jp/

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病院にデジタルアートを届けたり、3Dプリンタを使ってケアの現場を支える実践や研究をしています。 Digital Hospital Art / FAB Nurse/ vvvv Japan Community

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看護師で救急/在宅領域の看護師経験を経て、デザインやプロトタイピングを学び・実践しています。病院にデジタルアートを届けたり、3Dプリンタを使ってケアの現場を支える実践や研究をしています。 NODE MEDICAL代表 / 慶應義塾大学SFC研究所 上席所員