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【華麗なるギャッツビー】お洋服観たい心に残る映画

「Gatsby? What's Gatsby?」

アメリカ文学史を代表する傑作の一つ
「華麗なるギャッツビー」

学生時代、授業でこの小説がテーマになった時、あまり感情移入が出来なかった。私の心がまだ未熟で幼く、この物語の深みに気づけなかった。

1974年公開のロバート・レッドフォード&ミア・ファロー版は、世代が違い映像の雰囲気が少し古く感じた。
2000年に公開されたテレビ映画版は、未視聴。
一方、2013年公開のレオナルド・ディカプリオ&キャリー・マリガン版には一気にオチた。
煌びやかな映像、鮮やかなハイブランドの衣装とジュエリー。
空間を一気に染める音楽。
今年で映画2013年版が公開されてから10年。
映画館で涙した想い出が蘇る。

どうしてこの小説がここまで愛されるのか、今の私になら理解できる。

今日のnoteはギャッツビーの切ない一生に思いを馳せる。

以下、壮大なネタバレあります。


①ギャッツビーの欲は、最愛の女性デイジーが暮らす上流階級社会の闇に吹い込まれる

ギャッツビーは大富豪。
連日に渡り、セレブを集めて豪勢なパーティ三昧の日々。
人々は疑問に思う。
「ギャッツビーって何者なの?」
「どういう経歴の人?」
得体の知れないセレブリティの
ジェイ・ギャッツビー。
噂には上るけど、素性がわからぬまま時は過ぎる。
ヒロインのデイジー・ブキャナンは裕福な良家のお嬢様でありパーティの華となる美人。ギャッツビーにとって、最愛の人。
ただし、彼女は既婚者であり子持ち。嘗ては恋人だった二人だけど、再会した頃、時すでに遅し。愛するデイジーのために成り上がり、満を持して迎えに来たギャッツビーは、不倫関係として彼女との愛を繋ぐ。

デイジーは貧しい人とは結婚ができない。裕福な暮らししか知らない彼女は生活のレベルを下げることができない。それを知っている農民出身のギャッツビーはハングリー精神を奮い立たせて努力する。
ギャングと繋がり、密造酒の販売やインサイダー取引、ドラッグに学歴詐称...全ては恋に堕ちたデイジーのために。

やがて、限界がくる。

ギャッツビーは銃殺されてしまう。
「他人の不倫」の咎で命を落とす。
ギャッツビー自身の因果応報で身を滅ぼしたのではなく、「上流」に属するブキャナン夫妻の闇に飲み込まれるように人生が幕引きされてしまった。
背筋が凍りつくシーンとして、いまだに胸が痛む。
ギャッツビーの功績は、から騒ぎの残像。その突然の死があまりにもあっけなく、あんなに浮かれていた面々の薄情さに引いてしまう。ギャッツビーの自業自得の結果だとわかっている。善人ではないかもしれないけれど、不器用で一途、憎めない人物として不憫に思う。
デイジーが言う「ジェイ、あなたは求めすぎよ」のセリフ通り、ギャッツビーの焦りが出てしまうところにイチ視聴者としてハラハラする。

デイジーは現実の世界にもいそうな女性。
原作者フィッツジェラルドの元恋人がモデルになっているそう。
無意識、無自覚に周囲を振り回す。
目線が低く、自分ファーストを通せる人生。
ギャッツビーが心底焦がれた女性は、デイジー自身なのか、上流階級社会そのものなのか、謎のまま。

劇中では、ギャッツビーの葬式にデイジーの姿はない。
デイジーは、何もなかったかのようにギャッツビーから距離を取り
姿を消す。変わり身の早さに引いてしまう。
「華麗なるギャッツビー」は人間関係における教訓がたくさん詰まっている。
愛する人が正しい行いをする人とは限らない。
相手に同じ温度の情を求めてはいけない。
急いては事を為損じる。

ギャッツビーが正しい選択をしたのは隣人ニック・キャラウェイに招待状を送り、彼を友人(オールドスポート)として迎えたところ。
ニックに「Great Gatsby」として心に残る存在となれた。(ニックは病んでしまうけど)
この哀しい物語の救いは、語り手であるニック・キャラウェイの存在。
ギャッツビーがいる世界において唯一の良心。
ニックがいるシーンはほっとする。

ギャッツビーにも心ある友達がいて良かったと安堵する。

②村上春樹さんの翻訳に惹き込まれる

僕がこの村上訳「グレート・ギャッツビー」について心がけたことはいくつかある。翻訳の基本方針と言っていいだろう。
まずひとつは、これを「現代の物語」にすることだった。
この作品は1924年に書かれており、舞台は1922年に設定されている。
(中略)ニックやギャッツビーやデイジーやジョーダンやトムは、文字通り僕らの隣で生きて、同じ空気を呼吸している同時代人でなくてはならなかった。
・・・
もう一つ僕が心がけたのは、文章のリズムである。スコット・フィッツジェラルドの文章には独特の素晴らしいリズムがある。(中略)
だからまずそのリズムをなんとか日本語という土壌に移植し、そのまわりにメロディーやサウンドやリリックをくっつけていくことを心がけた。

グレート・ギャッツビー 翻訳者として、小説家としてー訳者あとがき

村上春樹さんの翻訳によって、私の中の「華麗なるギャッツビー」はしっかりと色のついた「現代の小説」となり、一気にその世界観に惹き込まれた。

さらさらと、流れるように読みやすい文章とセリフまわし。
ギャッツビー達は隣人であるかのように共感の対象として読みすすめられる。人物描写にわざとらしさがなく、登場人物一人一人が躍動して、感情の波がある。
狂騒の20年代のアメリカの中で浮かれ、迷い苦しんでいる。
人間模様はリアルの塊。
これほど長い年月が経っても、人間が作り出す喜怒哀楽の感情は変わらないんだと教えてくれる。

③舞台を彩るハイブランドの衣装とジュエリーにうっとり

ギャッツビーの世界を彩る衣装はPRADA、MIU MIU、ブルックス・ブラザーズ。ジュエリーはTiffany。ギャッツビーの邸宅のインテリア、磁器やスターリングシルバー製のフラットウェアなどもTiffanyで、画面いっぱいに「ゴージャス」が拡がる。

これでもか!というくらいのセレブの迫力満載。

息を呑む美しさ デイジー
Tiffany  ハイジュエリー
ジョーダン
ようこそ 皆さん

Young and Beautifulが映画のイメージにぴったり

映画の中で流れるLana Del Reyが歌う「Young and Beautiful」は
ゆったりと歌い上げるメロウな旋律でギャッツビーの世界へ没入させてくれる名曲。
デイジーがギャッツビーへ向けて送るメッセージのような歌詞。

Will you still love me when I'm no longer young and beautiful?
・・・
Dear Lord, when I get to heaven
please let me bring my man
When he comes
Tell me that you'll let him in
・・・
He's my sun
He makes me shine like diamonds

Young and Beautiful  Lana Del Rey

歌詞には、デイジーを心底愛してくれるギャッツビーへの真摯な気持ちと不安が入り混じる。my manはギャッツビーなのかな。

せめて、歌の中ではデイジーに愛されているギャッツビーを味わいたい。


Junko Summer

余談:高いところからシャツを投げるセレブの遊び、
ギャッツビーごっこ楽しそう。


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