キャッツアイは夜間飛行の香りをつれて
小学生の頃、友人の家へ遊びに行った時に週刊少年ジャンプが置いてありました。その時、一つの連載に目が留まり、あっという間に夢中になった作品があります
キャッツアイ
北条司先生の初連載です
北条先生の作品はシティーハンターの方が有名かもしれません。どちらも素晴らしい作品、補足するなら
キャッツアイは
シティーハンターの生みの親
シティーハンター −1.0
美しい怪盗キャッツアイ
VS
ドジだけど熱意ある刑事
この対立が物語の骨子です
刑事は知らない
まさか自分の恋人がキャッツアイだなんて...そんなワケないと思うから
ついつい喋ってしまう
警察の内情
どうして毎回キャッツに
出し抜かれるんだ?
理由は簡単
刑事自ら手の内を見せてお披露目
しちゃってた
何なら盗聴器で楽屋を公開中
鮮やかな手口で美術品を盗む
キャッツアイ
今日は懐かしの名作について
綴ります
盗みがカッコイイ
キャッツアイは必ず事前にターゲットの美術品を盗む告知をします。予告状のデザインがまずカッコイイんです、これを警察へズバッと差し込みます。
怪盗キャッツアイには使命があります
父親はドイツ人の画家ミケール・ハインツ。幻の古代ギリシア像のアテナイのアフロディーテを所有したことにより世界中の美術シンジケートに命を狙われて失踪します。
愛する家族へ危害が及ばないよう姿を消したハインツ
キャッツアイである来生三姉妹が公然と散逸したハインツゆかりの品々を奪い返していくのにはワケがあります
予告状を出して世間の注目を浴びたら父が連絡をくれるかもしれない、娘から父へ「会いたい」のメッセージが詰まっています
長女/泪さんは戦略を練る頭脳担当、次女/瞳は抜群の運動神経を武器に盗みの実行役を務め、三女/愛ちゃんはメカに強く泪さん指揮の作戦に応じて必要な小道具を発明します。
それぞれが賢く役割を果たし、ハプニングもお洒落にかわす来生三姉妹。類い稀な美貌でセクシーな錯乱を起こすこともあります。
変装
小型盗聴器・発信機
催涙スプレー
ダミー人形
パラグライダー
パラシュート etc...
これらを用いて美術品を華麗に盗む
キャッツアイ
お見事です。
瞳が盗みに失敗するとき
次女/瞳は犬鳴署の刑事・内海俊夫と高校時代から付き合っています。昼は恋人、夜は泥棒と刑事になるスリリングな関係です。俊夫は熱意ある刑事だけどドジなのでいつもキャッツ(瞳)にやられっぱなし。加えてかなり奥手なので恋人/瞳に自分からキスもできません。そんな情けない俊夫は不定期に刑事の地位が危うくなります
今度キャッツアイを取り逃がしたら
左遷/減俸/クビ
この時ばかりはキャッツも盗みの手を緩める「優しい泥棒」になります。
内海刑事に手柄を与えて彼の処遇は元通り、めでたしめでたし
来生三姉妹の中で次女/瞳は一番心を痛めています。恋人を騙している罪悪感、キャッツがいなければ俊夫はいい刑事のハズなのに...瞳は並々ならぬ覚悟でキャッツとしての使命を果たし、恋人を出し抜きながらも彼の立場を守ろうとする矛盾と向き合う女性です。物語を読み進めていくと、瞳は俊夫が大好きであるエピソードが登場します。俊夫は美人のキャッツにセクシーなアプローチをされるとすぐに鼻の下を伸ばしてしまうので、瞳は変装した自分に気づかれない安堵と同時に歯痒くなります
ちょっと俊!
この浮気者!!
俊夫はアタシとキャッツ
どっちが大事なの?
キャッツとして盗みを重ねていくたびに抱える葛藤。俊夫が自分から離れていくような不安から苛立ちがピークに達することもあります。
キャッツでなければ
俊夫と普通の恋人同士になれる
でも
キャッツを追っている俊夫が好き
瞳は俊夫だけを見つめる一途な女性なのです。
一方、俊夫も最後は漢になる
九州男児の俊夫は普段情けない一面ばかりが目立ちますが、やっぱり瞳だけを愛する一途な男性です。キャッツに警備の穴をつかれ美術品を盗まれて悔しがりますが、キャッツの身に危険が及ぶ場合は自身の立場を顧みずにキャッツを案じてしまうのです
キャッツを捕まえたら瞳と結婚したい...けどキャッツは全然捕まえられず
瞳と距離を感じるようになると周囲が後押ししてくれます
瞳ちゃんにプロポーズしろ
婚約指輪を瞳に内緒で(ローン)購入
ちょっとここは時代を感じます
瞳に相談なしで色々先走る俊夫です
しかし
俊夫も徐々に気づいていきます
瞳はキャッツなのかもしれない
実は
俊夫はハインツに容姿がそっくり
瞳はファザコン
(泪さんと愛ちゃんも実は俊夫が
かなりお気に入り)
俊夫は来生三姉妹に愛されている
モテ男であった...犬鳴署の他の刑事は「なんで俊夫ばっかモテるんだ」とボヤキます。俊夫は母性本能をくすぐる愛されキャラなのでした
やがて
瞳がキャッツと知ってしまった俊夫も葛藤します
刑事を辞めなくてはいけない
そしてきちんと
瞳とキャッツに向き合う素敵な漢になるのです
夜間飛行の香りをのせて
瞳がつけている香水がGUERLAINの夜間飛行。当時小学生の私が初めて覚えた香水の名前です
なんてカッコイイ
香水をつけるのは大人の女性というイメージが沁み込みました
この香水がきっかけで、犬鳴署の女刑事/浅谷光子に気づかれるシーンがあります
瞳さんは夜間飛行をつけているの?
キャッツと同じ匂いがするわ
勘のいい浅谷さんは俊夫と違うアプローチでキャッツを追い詰めます。浅谷さん自身も同じGUERLAINのミツコ、自身の名前と同じ香水をつけています。
漫画の紙面上、アニメの映像からは
唯一嗅ぎ取れない「香り」を仄めかす設定に想像力が掻き立てられます。目の前で動く美しい三姉妹がリュクスな香水を振り撒いてハインツの美術品を狙うストーリー
そして
ステージは
シティーハンターへ引き継がれます
先日、巨匠鳥山明先生が68歳という若さで旅立たれました。第一線で活躍される先生方から寄せられる追悼メッセージは鳥山先生がいかに偉大であったかを物語ります。その中で、ワンピースの原作者/尾田栄一郎先生が訃報に接し公式に寄せた文章に胸を打たれました
僕は血液レベルで鳥山先生が大好き
近づくほどに存在の大きさに
気づかされる
その存在は大樹
尾田栄一郎先生に
ここまで言わしめる鳥山明先生
キャッツアイが連載されている頃、鳥山明先生の連載ドクタースランプアラレちゃんが爆発的ヒットをしていました。私も可愛いアラレちゃんに笑い癒され、当時の文通相手には「んちゃ」「バイチャ」を連発していました。生活の一部に漫画がありました。尾田先生の言葉を借りるならば、大人も子供も漫画を読んで楽しむ時代を作った一人に北条司先生も間違いなく選ばれるでしょう。少年漫画の中に現れた美しい女性達、非日常のスリリングな世界、全てが粋です
これからも名作を何度も
読み返します
心からの感謝を込めて
Junko Summer
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