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豊かさとは何か。お金があれば豊かなのか?芦田多恵氏の展示会に思う。

Jun Ashida & 芦田多恵氏の2022年、秋冬展示会へ弊社併設スクールMFJのオフィサー櫻田と伺ってきた。

あたたかなお出迎えのあとはムービー鑑賞を。
櫻田が撮ってくれてました。シャンパンを頂きながら拝見するムービー&この空間が美しい。


ココシャネルの言葉


世の中には、お金持ちの人と豊かな人がいるの。There are people who have money and people who are rich.


孤児という貧しく恵まれない環境で育ったココ。

私の人生は楽しくなかった。だから人生を創造したのよ

とも言っている。


名だたるラグジュアリーブランドの創業者たちは、貴族階級の生まれが多い中、恵まれない境遇・環境から一代でシャネルを世界的ブランドに成長させその偉業は永遠に語り継がれることだろう。

こうした唯一無二ともいえる彼女の生き方からしか見えてはこない
お金持ちと豊かな人との違い。
お金がないと、エレガントになれないのか?という究極の問いを確かめるために、彼女は本物とフェイクの真珠を混ぜたネックレスを身につけ
ミニマルなデザインと無駄のないシルエットで、上流社会に一石を投じたのです。

19世紀から20世紀、彼女が生きた時代の上流社会の女性たちは、絢爛豪華に着飾ることが富の象徴だったが 彼女の目には醜いもの、センスがない人たちに写っていたのだ。

どうせフェイクを身に着けていても、本物と見分けがつかないでしょ、というわけだ。

こういうところに、彼女の人生を面白くした、創造があると思う。
真のデザイナー魂。実に豊かな発想、チャレンジ、生き方である。


芦田多恵さんの豊かさ


着る人の個性が引き出せる服を作りたい、と言う芦田多恵氏。

そして、芦田多恵さん。名だたるデザイナー 故・芦田淳氏がお父様。お父様がご健在のころから Jun Ashidaのショーにもお招きいただき、その重厚で圧巻なショーの空気感は、歴史を背負い、皇室ご用達ブランドとしての品格に溢れていた。そんな記憶は、今も決して薄れることがない優雅な時間。

Jun Ashidaを引き継ぎ、Tae Ashidaを発展させるお姿を眩しく見つめながらいつも思うのは

多恵さんの作品は
新しいクリエーションへの挑戦と、引き継ぐ伝統の融合の素晴らしさだ。

Jun Ashidaのアーカイブ作品。現代の新しい感覚で選ばれた生地には驚愕。
触ると驚くほどやわらかく、見た目の固さはゼロ。カパカパしそうなこの生地、実はプリント加工でこの金を乗せている。着心地も最高にいいだろう。


芦田多恵氏のクリエーションから見る
豊かさとは、何か。



引き継ぐ伝統、洗練されたデザインを遺しながら、そこに留まらず、発展させていく心意気。遊び心。
唯一無二な柔軟な発想は培ってこられたメゾンの歴史とものづくりの揺るがない基本があってこその【自由】だ。

時代のニーズに応えるファー部分は人口とリアルを組み合わせるなどの工夫がされている。まるでシャネルのパールネックレスのように。リアルファーの加工技術と同じようにフェイクを扱うので、見た目はリアルと変わらない。

豊かさとは何か。

時代がフェイクファーへと移行する中、飛びつくだけではなく試行錯誤。
決してすべてをなくしていくことだけが真のサステナブルといえるのかどうか?
私自身もこのあたりは慎重に、深く考え、たくさんの実態を見たり
デザイナーの話を聞いて判断していきたいと思っていることだ。

こうした じっくりとした取り組みにも 私は豊かさを感じる。
本物、は飛びつかないし、独自の信念を持った上で
時代に対応していくセンス
がある。


モノクロのシリーズの豊かなコーディネート、生地の組み合わせなど、本当に品があるブラックだ、モード感というよりエレガンスな仕上がりなのがさすが。


ジローラモさん登場?

豊かさとは、何か。


人々との付き合い、コミュニケーションなくしては感じられないこと。
お伺いするたびに、素敵な訪問者をさらっとご紹介くださる多恵さん。
この日はジローラモさんがいらして
「政近さん、ジローラモさんがいらしているんですよ」と温かくお引き合わせくださいました。

ジローラモさんはパーティーなどでお見かけしてきましたが、その際はブラックタイでバシッと決めている感じ。
ラフなスタイルを拝見するのは初で新鮮!で、こちらのスタイルは「ジローさんがお選びになって、どれかご着用した姿をぜひに」とリクエストしたら
迷いはゼロでこちらのジャケットをさらっとご試着。

袖部分がデニム素材のカジュアルジャケットですが身頃のジャガード刺繍部分の存在感と華やかさは格別です。着られてしまいそうな一品をカジュアルに。自然なスタイルだなぁ。さすが洋装の国イタリア。ナポリ出身の彼の情熱が伝わってくるよう。

そう、豊かさとは人間関係。

多恵さんのお人柄や作品を愛する世界中のファンの皆さまの影響力。お金があるから買うというマインドではなく、ご自身の人生の物語に、多恵さんの作品を登場させている。メンズのラインナップには 櫻田も大興奮!
次々に着せていただいて、緊張と喜びの連続で大汗かいてました。笑

櫻田の鍛え上げたボディーに一番マッチしていたライダース。
日本を代表する商社で勤め上げた後、遊んで暮らす予定が弊社スクールのオフィサーに就任。やはりロックで破天荒なマインドなくして、今はないと思うので、そうした彼のマインドとライダースが一致。ルイズレザーのような強すぎない革とタエさんの品格あるデザインが櫻田が着るとしたら?なライダースとして ぴったりですね。
パーティーシーンを彩るタキシード類も充実。
スタッフさんの商品への愛情、そのエデュケーションの正確さが信頼できる。


知識の交感+マインドの共有ができる時間


多恵さんを支えるスタッフの皆様の知識の豊富さ。そして知識だけではなく
ブランドに対する熱い思いを聞くたびに【単なる説明】ではない豊かさに触れ心が充実します。この日は特に生地にお強い担当者さんのプレゼンにて
イタリア生地や縫製の素晴らしさについて語り合える時間がプレミアム。帰りに「とても勉強になりました」などとお礼をくださいましたが
知識の交感+マインドの共有ができる時間は、豊かさに溢れていると思う。

生地はイタリア産が多いAshidaブランドですが ツイードはやはりフランスもの。
どこの国で誰から、どういう工場で、といった選び切る信用は長年積み上げられた経験からの凄み。商品を見たら溢れ出ています。
私の顧客に説明していく際の大きな決め手になる生地や縫製のこと。
美しく力強いツイード。
そしてしなやかさ。日本産にも多々よいツイードがあるがこの
つややかさ、セクシーさはフランスならではかな。


ちょっと画像がピンボケしてしまったのが残念なんだけど、この一枚仕立てのコートの贅沢さ。もうね、羽織っていてストレスゼロ、縫製の美しさ、デザインの洗練度、カジュアルにもパーティードレスの上でも、そのときそのときのシーンを確実に上げてくれるギフトなコートは一目ぼれ。


貧乏もよい。貧乏くさいのがよくないのだ。


豊かさとは何か。


贅沢、というのは決して悪い言葉でも選択でもない。
貧乏もよい。貧乏くさいのがよくないのだ。

そのとき贅沢に思うような価格帯であっても、私は30年着ているものばかりだから結局贅沢どころか、究極のサステナブルになっています。

このコートも間違いなくそのようなものに値する出来栄え(一枚仕立てをここまで美しく縫製できる工場は残念ながら日本にはほぼないと思います。また真っ白なカシミヤコートなど、汚れるのを恐れ縫いたがらない工場も多く、芦田メゾンには自社の縫製部を構えているからこそのラインナップに息を呑みます。)

たぶん、これを羽織った私に息を呑んだ櫻田の手元が震えたのね~~笑

リモートスタイルにも対応。こちらはパーカのバックスタイル。ラグジュアリーなディティールが盛り込まれているので、単なるジャージとはわけが違う。
ドレスとしても、羽織にも。


★柄ベロア素材のドレスやトップスラインアップ。


TAEブランドの一番目立つところにこちらのガウンドレスが。

問いかける、服。


豊かさとは。

私がTAE作品に感じる豊かさの一つは、これを着ていれば絶対大丈夫!と言わせない新しさを感じるところがあります。
お父様のJUNでは、よい意味でそのシーンが確定されるような安心感があり、そこを引き継いでもいらっしゃるとも思いますが

Tae作品には「自分のマインドに聞け!」【自分の人生に聞け!」といわれているような楽しさと攻め感があるんです。

これはウイメンズだけど 櫻田が着たい~といったのでチャレンジ。メンズ ウイメンズと分ける必要さえ感じないラインナップも。
思い浮かぶ、顧客たちの顔、人生、豊かな日々を送るお手伝いをしている私にとって、
【誰から買う」はとても重要な決め手になる。

【自分のマインドに聞け!】と試されているようなブランドにおいて、
表面的に顧客の顔を思い出すということは、ほぼ皆無。

そこに生き方があって、そのひとが【在る】こと。それがなければ
作品を見ていても顔が思い浮かぶことは、ない。

しみじみと、顧客の中身、今のマインドを考えながら服を見ます。
そうじゃないと、表面的な似合うほど、マインドレスで貧弱なものはない。
良い物を買う価値が生まれないから。

櫻田にとっても、商社勤めのころ出会い、例えば顧客になっていたとしても
私はあのライダースを勧める事はなかった。
彼が私のNHKラジオを聴き、
いても立ってもいられず会いにきた、その行動力からファッションを学び、今では新しい人生を歩みだしたという、リアル&マインドあってこその
展示会同行でもあったかなぁ。

あなたは誰?と問われているようなブランドはもちろん他にもあるが
以前紹介したマット君のツナギが、なぜ素敵か。

ショーでご一緒したマット君の姿。タエ作品を見事に着こなしていて惚れ惚れ。
マッド君がタレントだから、ではなく、マッド君の唯一無二なこれまでの経験や思い、マインドがタエさんのクリエーションと一致。会場でも一際輝くマット君。左は息子と。
息子は耀司とKENZO+ユニクロで伺ったが、yohjiにもいつも問われている気がしますね。


自分が、在るか。見せ方より、在り方。

豊かさとは。

自分が【在る】ということ。
どう見せるか、より どう【在るか】があるということ。

パーソナルスタイリストをこの国で日本発で立ち上げてから22年。
一見豊かに見えるご家庭の自宅に上がり込み
たくさんのワードローブを見てきました。
ワードローブには、その人の幸せも悲しみも詰まっています。

人にこう思われたい、見せたいからで選んだ服たちは
結局は粗末に扱われています。
会う人のことを思い、そのソーシャルを想定し、その場を価値あるものと
していく心のあり方がない限り、高い服は、ただ高価で生かされてはいない。

本当の豊かさは、お金があるからと贅沢をしているだけの人に、服を着ることはできても「表現できるもの」ではない、ということ。

豊かな人が創り出す世界は 売り上げ「だけ」重視ではないので 自分が【在る】人でなければ着られてしまうんです。

かといって、自分自分といった浅はかな表現ではなく
謙虚さと表現者という二つの知的要素をかね添えた【在り方】を
感じるのである。

私はこういったことを【装いはギフト】という解釈で世の中に伝えているけれど、そこには精神的な豊かさと知的な知識の両輪があって
成立する、とても自由でどこまでも拡張できる学び。

豊かさについて、ファッションの領域から少し書いてみたけれど
ラストはこの作品にて。

ショーで富永愛さんが着用したドレス。私は究極の一枚、30年前に仕立てたブラックドレスをいつ何時もよく着ているのですが、次の10年を考えたくなったドレスです。

それにはどう、豊かに生き、マインドを整えて
自らの人生の物語を創っていくのか【問われてる】のも同じこと。

その【問い】こそが豊かな時間。
自分の生きるシーンを思い浮かべるだけではなく、創っていこうとする
気概や遊び心が自分に在るか。

多恵さん、熊井さんをはじめとする広報スタッフの皆様、いつも温かいおもてなし、ありがとうございます。
これからも豊かなクリエーションを、楽しみにしています。

いつも頂戴する素敵なお手土産たち。豊かな空気が漂います。
おくらでできたケーキに健康を考える配慮を感じるし、流儀ありな素材選びで、今期使用したマテリアル、柄がプリントされてるハンカチーフなど、丁寧な御もてなしに溢れていますね。


豊かさについては、今後も深く語っていきますね。

多恵さん 30周年心よりおめでとうございます。








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