交渉する人々

日本領事館へ夫の日本入国ビザを申請しに行った。いつもは数えるほどしか待つ人のいない部屋に、この日は立って待つ人もでるほどたくさんの人が申請に来ていた。

ビザ申請用の窓口は基本一つ。番号札を取って座って待つ。もちろん必要書類を持って。

ビザの申請というともちろん目的地の国のルールにしたがって、お役所の人にこうしてくださいと言われればそのように、が当たり前の当たり前。例外なし。と思っていたら、日本領事館の職員の人たちが親切な対応をするのが裏目に出たのか、なんと交渉しだす人々が湧いてきた。

ある男性。どうやら奥さんのビザ申請に代わりに来たらしい。委任状を持たずに。ご本人は?と聞かれた彼。長ーい説明が始まった。どうでもいい説明の後に(こんなに説明しても)だめですか?とゴリ押し。決まりは決まり、職員さんが本人をよこすように言ってもあーでもないこーでもないと、とにかく長い。何人もの『オーマイガー』が聞こえて来そうなくらいに。最後はようやく奥さん本人が領事館へくるということで決着の模様。

そうこうするうちに、少し前に入ってきた若い女性がすっと立ち上がって窓口へ向かった。もう待てなくなったと見える。(とはいえ彼女が入ってきたのはほんの10分ほど前。彼女が来るより前から待っている人がまだまだいる状態。)パスポート受け取りだけの人が二人ほどいてその後ろへ並んだ。二人がパスポートを受け取り去っていくと、蚊の泣くような声で窓口の職員さんへ声をかける。聞こえませんよと言われてしまってボリュームを少しあげた。

「あのー、もういいですか?」

職員さんは彼女に番号をたずねた。もちろん職員さんはこう言う。

「あなたの番号はまだですね。」

「でも私、書類全部持ってますけど。」

となんだか訳のわからない主張をしだす彼女。ここで少しゴネたらなんとかなると踏んだらしい。部屋は狭いわ、空気は淀んでるわで、長いこと待ってる人だってウツウツとしているところにこんな訳のわからない女子が登場して、その場の空気は『何言ってんだお前は??』

こういう主張をする人々に職員さんは慣れているのかもしれない。はいはいもう戻って番号がくるのを待ってくださいよーと事務的に進めて行く。さすが。少しバツが悪かったのか席に戻りかけたが、今度は窓口へ大きな声で聞いた。

「今日中にビザ作ってもらえるんですよね?」

と。今度は職員さんの声も大きかった。「今日???今日中は無理ですね。」職員さんは決して口に出して言わないけど、『何言ってんだお前は??』と軽い脱力が見えた。

こういうの一人や二人じゃないしね。こういうゴネる人たちはどこの大使館・領事館でもこうなのだろうかとふと思う。どの国のお役所でも?

アメリカにきてからビックリしたことの一つが、あちこちに湧いて出る交渉する人々だった。どうでもいい事、どうにもならない事をとにかくゴネる。子供も大人も。まあ大半はゴネる必要のない事柄で、そんなにエネルギー使うかねといった感じである。

このクソ忙しいときに!ゴネラー(もうそう呼んでやる。)やペラペラペラペラ喋るヤツらがいなければ、もっと時間かからずにサクサク行くのに、ちっ。と思いながらのビザ申請だった。






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