プチ連載小説「カニが浮く」第2章
「月に一度の嵐の日」
とても大きな音がして目が覚める。僕は今、冬眠中のはずだけど彼女がストーブをつけたり消したりして、うまく冬眠できないでいるのだ。
本日、部屋の温度が異様に高い。のぼせそうだ。
僕は片足だけ小石の上にひっつけて斜めに浮かんだまま何事かと目を開けてみる。
部屋中がひっくりかえっている。まるで上下逆さまにしたように、きちんと逆さまになっているのだ。イスや机や本棚なんかが。そのまん中で彼女もひっくり返っている。大分ごりっぷくのようすだ。
彼女は元々少しかんしゃくもちだけど、月に一度きまってひどくかんしゃくもちになるのだ。男の僕にはどうしてそんなにひっくり返ったりするのか、とうていわからない。
ほら、又何か始めたようだ。僕は「さわらぬ神にタタリなし」という言葉を思い出すけど彼女にはそれはあてはまりそうにない。
又大きな音と共に彼女の声が。 つづく
(1999年著)
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