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よりみち読書会のおしらせ

よりみち読書会をインスタグラムのライブ機能を使って行います。

今回取り上げる本は、「震美術論」椹木野衣 著/美術出版社/2017年」選者は菊地です。

日時は、8月18日(水)10時〜

ライブ配信は右のアカウントから行います→ https://www.instagram.com/j.kikuchi714/

よりみち読書会の様子をインスタグラムのライブで中継します。ご興味のある方はご視聴ください。事前に本を読まれた方でトークにも参加されたい方は、ご連絡ください。ライブ機能を使ってオンラインで参加いただきます。ご質問、ご感想などは随時チャット機能をご利用ください。アーカイブは残しません。

当日の読書会ではA4程度のレジュメを参加者3名がそれぞれ用意します。noteにレジュメを読んでいただけるように準備しますので合わせてご覧ください。

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関連書籍として、上記の写真の書籍を上げておきます。よろしければこちらもご覧ください。

今後、毎月第3水曜日を目標に読書会を予定しています。一人では積読になっていた専門書などを一緒に読んでみませんか。


レジュメ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
20210818
よりみち読書会①
椹木野衣『震美術論』(美術出版社、2017)読後メモ
滝口克典
●概要
・『日本・現代・美術』(新潮社、1998)において、戦後の「閉じられた円環」を名指す概念として示された「悪い場所」。そこでは、〈歴史〉が垂直に積みあがっていかず、忘却と反復とが永劫に回帰する。『震美術論』ではそれが、戦後のねじれではなく、日本列島の大地動乱に由来するものとされ、列島の災害史を「地」とした「図」として再解釈されていく。それを著者に促したのは、東日本大震災(2011)の経験である。
・繰り返しやってくる災害ゆえに(災害がトラウマ=起源を構成することなく)〈歴史〉=アイデンティティの確立が困難となる「悪い場所」。そうした場所における「美術」とはどのようなものであるのか、ありうるのか。ひとつには、繰り返される災害を事前に伝えるメディアとしての「美術」、もうひとつは、おびただしい数の災害による死者たちを慰霊するための「美術」。著者はこれを「七難の到来に応えうる美術」と呼ぶ。
※感想
・列島の災害史が「悪い場所」をもたらしているだとしたら、それは列島の美術史のみならず、あらゆる領域(政治/経済/社会/生活/文化/…)において歴史の読み替えが求められることになる。「七難の到来に応えうる政治/経済/社会/生活/文化/…」とはどのようなそれであろうか。
・私たちにとって「悪い場所」が所与のものなのだとしたら、近代日本が範としたヨーロッパのような〈近代〉や〈歴史〉を求めてもしかたがないということになる。そうした場所で、それでもなお私たちの誰もが自由かつ平等、そして幸福に生きられる社会を求めるとしたら?換言するなら、(戦後民主主義ならぬ)「災間民主主義」は可能だろうか。

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2021.08.18 椹木野衣『震美術論』 読書会
(小笠原)

「悪い場所」とは何か。
『日本・現代・美術』では、「悪い場所」とは非歴史的な場所。(問題は、吟味され発展されてきたのではなく、忘却され反復されてきた)時間の話
→『震美術論』では、「悪い場所」とは災害列島。(p.142平静を装うことで事態を外部へと押しやり、同様に繰り返される悪循環のなかを、記憶を葬り去ることで健忘症的に生きてきた)場所の話

はたして「悪い場所」とは、【悪い】のか。


p.201災害列島における美術館・博物館の在り方、展示の在り方とは。(収集と保存=図書館の議論とも通じる?)

p.162「この島国には、『事前の記憶』を扱った反歴史的な表現がうずたかく積み上げられている」
「忘却と反復」から生まれいずる表現とは。非(反)歴史的なものにどのような価値があるのか。

P.344「環境(エンバイラメント)」=「環境保全より、環境による建築概念の批判的拡張、ないしはその超克」
21世紀型オリンピック「博多湾モデル」と、実現してしまった「2020東京オリンピック」について。

p.371村上隆《五百羅漢図》の展示は、なぜ東京でなされたのか。あるいは、なぜ東北で行われなかったのか。(鎮魂の絵であるのであれば、なおさら)

p.434「本当は、この日常が、いつ何をきっかけに、災害下の『ただちに影響はない』ような日常=非日常に変貌してしまっても、まったくおかしくないはずなのに。」
まさにこの本そのものが「事前の記憶」のようになってしまった。このコロナ禍において、どのような表現が今後生まれるのか。あるいは生まれないのか。

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震美術論 読書会レジュメ

菊地純

・「悪い場所」8P、82P
避けがたい事前の問題 84P
悪い場所への緩やかな肯定 88P

・日本国と日本列島 114P
「悪い場所」の視座の転換
日本国(日本画、和菓子?)=共同幻想
日本列島=風土

・「想定外」(宇宙)を「想定内」(日常)へ 140P

・「事前の記憶」158P

・196P

全体の読後感は、中盤(7章あたり)までの盛り上がりに比べ、後半は興味があまり持てなかった。
著作は2017年なのだけど、コロナ 禍の現在、西日本での豪雨のなか読むと、主題の「悪い場所」閉じられた円環と今が地続きであり、回収されているような読書体験だった。(あとお盆の時期もあると思う)

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