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小説感想「貞子DX」

いまやリングシリーズから離れ貞子シリーズとも言える映画シリーズ最新作。
ホラー作品として極上の恐怖を感じさせてくれた原作からは遠く貞子のキャラクター化が著しいですが、作者の鈴木光司先生が歓迎しておりそもそもホラーが好きじゃないとまで言われれば原作至上主義者としては作者=神の言葉に手のひらを返すのは当たり前というもの。
ホラーエンタメとして思い切り楽しんでやろうと読みましたが呪いとウィルスが融合するリングの続編としてとても面白くまた恐い作品で大満足でした。

著者の牧野先生によると本作は貞子3D、3D2と繋がっているとのことでしたが見逃しているのかその要素は感じられず、二十年前に映画「リング」とほぼ同じ事件が起きそれが都市伝説として語られている世界の物語という感じでした。

天才女子大生・文華がひょんな事から「呪いのビデオ」に関わる突然死事件に巻き込まれ、妹や母親も巻き込み呪いの解き方を探すという大筋は他のシリーズと同じく、20年前に語られていたビデオをダビングして他の人に見せるという解呪方法はもはや有効ではなく今回は一体なにが鍵なのか仮説を重ねていく過程が面白かったです。

なぜビデオを見てから死ぬまでの時間が24時間と短くなってしまったのか、ウイルスとしては増殖に不利な条件になった謎。
呪われた者達の最期をよく観察すると一見超自然の力で身体を動かされているように見えるが実はそうではないこと。
呪われた者達の前に現れる貞子の擬態はあくまで物理法則に則り、例えば空を飛んだりはしない。
呪いとウイルスという超自然と科学の融合が実に面白かったです。

増殖するために弱毒化した貞子の呪い。もはや普通のお札で足止めが可能というところはキャラクター化した感じもありこれもまた面白かったです。

呪いを解く鍵は見つからなかったけれど呪いの期限を引き延ばす方法は見つかった。
人々は24時間に1度呪いのビデオを見続けなければならない。
ウィズコロナならぬウィズ貞子の時代の到来。
実にこのコロナ禍に生まれた貞子らしい結末だと思いました。

ビデオテープから始まりネット動画にその呪いを拡大していった貞子。
この先時代に合わせて呪いはどんな進化を遂げていくのか。
とても恐ろしくも楽しみです。

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