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「FFKT 2023」@長野県木曽郡木祖村・こだまの森

2023年5月27(土)~28日(日)。

長野県・信州やぶはら高原「こだまの森」で、FFKT。

この2日間は、横浜でグリーンルームフェス、幕張でPOP YOURS、埼玉・東松山で麦ノ秋音楽祭、錦糸町でニクオン、愛知県蒲郡で森道市場と、フェスが全国のあちこちで。グリーンルームには大好きなヴィンテージ・トラブルが、ニクオンには大好きなザ・たこさんが出演するというので、それらも観たかったんだが(どちらもめちゃめちゃ盛り上がったようだ)、自分はチケットを去年から獲ってあった長野県・こだまの森のキャンプ・イン・フェス、FFKTへ。

TAICO CLUBの時代から10数年行っている大好きなフェス。だが、先頃「こだまの森」での開催は今回が最後だと発表された。

TAICO CLUBの時代からいろんなDJやバンドを「こだまの森」で観た(聴いた)。もとより名のあるアーティストを観るよりも、たまたまここで観て「これはすごい!」と思って名前を覚える、そういう「発見」の喜びがどのフェスよりも多く得られたのがTAICO CLUBでありFFKTだった。アルファ・ミストもジョー・アーモン・ジョーンズもダナ・レイクもFKJもデイム・ファンクもアルカもマウントキンビーもトロ・イ・モアもクラークもSmerzもジョン・キャロル・カービーも、初めて観たのはこだまの森だった。後にフジロックのホワイトステージに大勢の客を集められるまでになったトロ・イ・モアをこだまの森で観たのは朝方のチルアウトタイムでユルユルだったし、去年のサマソニ、今年のコーチェラに続いて、フジにも出るFKJも、こだまの森でやったときはそこまで知られていなかった。TAICOやFFKTでいち早く観ることができて「いいな」と思ったアーティストが、数年後にフジとかに出て評価をグンと高める、そういうケースが少なくなく、それは喜ばしいこと(自慢したくなること)でもあった。

そういう素晴らしいDJやバンドをたくさん観たことも思い出として残っているけど、そのアーティストの音を聴いているときにまわりは深い闇夜だったなとか陽が沈む頃だったなとか明け方だったなとかものすごく寒かったなとか酔っぱらって聴いたよなぁとか、振り返ればそういう景色や温度が一緒に浮かんできたりもする。そして、結局のところ僕は「こだまの森」というあのロケーションこそが好きだったんだなと改めて実感する。今回は「こだまの森」での開催は最後なんだ、もうこの場所でこんなふうに遊ぶことはできないんだと思いながら過ごしていたので、尚更そのことを実感した。何度もすべったスベリ台もなんだか愛しく感じられた。

来年以降はここじゃないのかと思うと、とてもさびしい。けど、この会場は今年が最後だということを主催側が事前に発表してくれたのは、ありがたかった。誰かもツイートしていたが、終わってからそう発表されるフェスだって少なくない。今回のFFKTは、この場所は最後なんだと思いながら悔いを残さず楽しむことができた。ありがとう、FFKT。ありがとう、こだまの森。また、いつか。

さて、「FFKT」としては今回3度目の開催。朝の7時に家を出て、今年も諏訪湖のSEで蕎麦を食べ、昼前に会場に到着。快晴。夏日のよう。なのでテント設営後、まずはビール。ここで呑むビールほどおいしく感じられるものはない。テントで少し昼寝してから上のONGAKUDOへ行き、15時半の松浦敏夫さんのDJからスタート。そこから翌朝まで、観たのは以下の通り。

松浦敏夫→CMYK→七尾旅人→Perko→小袋成彬→スチャダラパー→GEZAN→Actress→どんぐりず→Rrose。2時間半ほど寝て、SUCHI→Cabanne。

松浦さんのDJは意外にもアンビエントからスタート。まだ人数少ないONGAKUDOの芝生に寝転んで、鮮やかな青空と新緑を見ながらその音を聴いていたら、世界に嫌なことなんかなんにも起きてないような気がした。少しするとかかる音楽はアンビエントから徐々にジャズ~ディープソウル方向へ(デンゼル・カリーの「Lonely Man」にしびれた)。これぞ松浦さんという感じ。そしてラテン方向の踊れるやつも挿みながら、今度はドアーズなどロック方向にも行き、スザンヌ・ヴェガを挿んで最後はU.F.Oの「The Planet Plan」で締め。どういう状況でもいい曲を紹介し続けたい、自分のやるべきこと、モチベーションが見えた、みたいなことを話されていて、その言葉も響いた。

青空。新緑。音。

好きな場所であるCabaretでCMYK観て揺れたりしながら、ONGAKUDOに戻って七尾旅人。この日は鍵盤のTAIHEIとのデュオ編成。中盤「Wonderful Life」「入管の歌」と重めの曲が続いたが、後半で「Rollin' Rollin'」「サーカスナイト」とフェスにもってこいの2曲を続けて沸かせ、前のほうの観客にカラダを預けながら歌ったりも。TAIHEIさんへの絶大なる信頼感が如実に伝わってもくる素晴らしい約50分だった。あと、TAICO CLUBというかつてのこのフェスの名を何度か呼んでいたのもよかった(僕は2011年のTAICO CLUBに旅人が出たときも観ていて、3.11のあった年だっただけにそのライブをよく覚えている。そのときも「星に願いを」を歌ったし、あと、福島の話をして「圏内の歌」を歌い、それで僕は泣いてしまったのだった)。

Perko、そして小袋成彬のDJを少し聴いてから、スチャダラパー。さすがの集客力。いつものロボ宙に加え、演奏でLUVRAWとKASHIFが参加しての特別編成。ブギーバックもサマージャムもLUVRAWのアレンジによるバージョンで、聴きなれた曲でありながらもアレンジが変わればわりと新鮮に聴こえるものだなと。そういえばBoseが旅人のライブのことに触れて「暗いでしょ」みたいなこと言ってたが、しかしそんなBoseは旅人のステージを(僕が観てた場所のすぐ近くで)熱心に観ていたのだった。

去年のFFKTでも圧巻のライブを見せたGEZAN。深夜でありながらこの日の熱量もハンパなかった。ただヴォーカルマイクの出力に限度があったのか、演奏の出音の迫力に声がやや埋もれてしまっていた印象も。ラスト、持ち時間がなくなって、終わりかと思ったメンバーがはけるも、マヒトが呼び戻して「1.5倍速でやるから」と言い、1.5倍速で「DNA」を。圧巻でした。

どんぐりずは、去年のCabaretから昇格してメインステージのONGAKUDOでのライブ。去年最も多くフェスで観たのがどんぐりずだったんだが、今年初めて観た彼らはまたグンとライブ力をつけていて、その進化の度合いに驚いた。若いから成長の速度がすごいのだ。この社会、この現状に対しての怒りやメッセージを圧倒的な音と言葉にしてたたきつけるのがGEZANのライブなら、どんぐりずはとにかくいまこの瞬間を踊り倒して楽しむことで何か突破できるんだと絶対的に信じているライブ。極限まで言葉とメロを削ぎ落した曲ほど強度が感じられるという、そのあり方がマジですごいと思った。柵にのぼってラップしたりの森くんのしなやかさ・自由度も一層増した感。誰よりもこのフェスを楽しんでいるのがこのふたりなんじゃないかと思ったりも(森くんは朝方もSTEELステージ前でビール片手に踊ってましたね)。

STEELステージで深夜に観たActress、それからRrose。Actressはアブストラクトな感じからBPMあげて展開させていく構成力にも唸らされたし、Rroseは逆に展開させない音の続きで脳を破壊しにかけてくる感じ。どっちも踊れる感じではないのだが、とにかく音がかっこよくて、たまらんものがあった。

テントに戻って2時間半程度寝たあと、もったいないからとムクリと起き出し、急遽参加の決まったSUCHIのDJを。この人は緩急自在で、インド味入れてダンスミュージックとしての機能もありまくり。かなり楽しかったし、センスええわぁと思った。そのあと妻の仕事の都合もあってテントを片付け、Cabanneをしばらく楽しんでから会場をあとに。

観たかったKelly Lee Owensが直前でキャンセルになるなどして、うーむ、今年は目玉と言える目玉がないかなともチラと思ったんだが、行ってみればそんなこたぁ関係なく、やはり始まりから終わりまでずーっと最高に楽しく気持ちいい時間が続いたのだった。

なので、もう一度。ありがとう、FFKT。ありがとう、こだまの森。この場所で過ごした時間と浴びた音楽、それに新緑。忘れんぞ。


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