「FFKT」@長野県木曽郡木祖村・こだまの森

2019年6月1日(土)~2日(日)

長野県木曽郡木祖村・こだまの森で、「FFKT 2019」。

TAOCO CLUBが昨年で終了し、その後継フェスとして同会場で今年からスタートしたのが「FFKT」だ。「FFKT」とは「the Festival Formerly Known as TAICOCLUB」(かつてTAICOCLUBと呼ばれたフェスティバル)の略。the artist formerly known as prince(かつてプリンスと呼ばれていたアーティスト)みたいな感じでしょうかね。

まず、どうしてTAICO CLUBは終わったのか。どうして「FFKT」として新たにスタートすることになったのか。

こちらがTAICO CLUBの創設メンバーであり、『FFKT』主催者である森田健太郎さんのインタビュー。CINRA.NETに、昨年6月に載ったものですね。

因みに下は、『FFKT』メンバーと袂をわかち、TAICO CLUBを終わらせることを決めた張本人である安澤太郎さんのインタビュー。TIME OUT TOKYOに、これも昨年6月に載ったもの。

僕が初めてTAICO CLUBに行ったのが何年だったかは忘れちゃったけど、たぶん2009年か2010年頃。まだ客の数的にそんなにパンパンじゃなくて、いい意味でのユルさがあって。出演者には邦楽アーティストもいたけど、主宰者の意志とかセンスがしっかり見えてくるラインナップだった。そういうこだわりの感じられる出演者セレクトと、こだまの森という緑豊かなロケーションが最高で、大好きなフェスになったのだ。特に忘れられないのが2011年で、震災のあとちょっとだけ鬱っぽくなっていた僕だったのだけど、夜の七尾旅人や明け方のあらかじめ決められた恋人たちへの歌や音を聴きながら大泣きし、救われた気持ちになったりしたものだった。

フェスの傾向がちょっと変わってきたなと思い始めたのはサンボマスターなんかも出た2013年あたりで、サカナクションとかくるりなんかも出た2014年になると決定的に客層の変化を感じた。そういう国内のメジャー・バンドの出演が増えるのと並行して邦楽系フェスを好む騒ぎたがりの若い子たちが多くなり、フェス全体の雰囲気がずいぶん変わったし、単純に客数が倍加したため大人にとっての快適さ度数が減っていった。

そういう体感があった上で、上にリンク張った主宰者のインタビューを読むと、まあそうだよなぁと大いに納得がいったりする。で、初回を迎えた「FFKT」。そこからは主宰者の、ある部分においての原点回帰だったり、「らしさ」の見つめ直しだったり、何をやりたいのかの意志だったりがとても感じられて、僕はこれ、しばらく行き続けるなとハッキリ思ったのだった。

まず、出演者。上の森田氏のインタビューの通り「動員の見込める国内のメジャー・アーティスト」を優先するのではなく、主宰者側が何を薦めるか、いま誰を聴いてほしいか、音楽第一の拘りと意識を強く感じられる出演者が揃えられた。それをジャンルで括ることはできないが、強いて言うなら「オルタナティブ」ということになるか。

ステージはというと、TAICO CLUBのときは上と下のふたつだったが、山の上のほうに「Cabaret」という名の、DJ中心の第3のステージが作られた。この場所の雰囲気がとてもよかった。(さらにもう一か所、坂の途中に大きめのテントのようなものがあって、そこでもDJがかけたりしてたので、正確に言えば4箇所で音楽を楽しめる)。

フード関係の店舗数はTAICO CLUBのときよりずいぶん減らし、その分、出演者同様、拘りの店ばかりが並んでいた。ケバブとかそういう類のB級グルメ的なものを提供する店がなくなり、食材にこだわった店が多かった。例えば福井片町の「鮨処 海月」(すしどころ くらげ)。ここは 限定6席の3回転で、予約でしっかり満席だった。また、なんといってもよかったのは、コンビニの冷蔵庫みたいなところにアメリカの珍しいクラフトビールがダーッと並んでいた店(「アンテナアメリカ」)。お店の人が好みも聞いてくれ、僕もテント設営後の暑かった時間に2種類飲んだが、観たいライブが始まらなかったら危うくさらに飲み続けて早くに酔っ払うところだった。

トイレの数はTAICO CLUBのときより遥かに少なく、朝方などは長い列になるんじゃないかと初めはちょっと不安だったが、結果的にそんなこともなかった。そこはちゃんと動員数から設置数を割り出しているのだろう。

あと、会場内のちょっとした装飾がTAICO CLUBのときより大人っぽい感じになっていたのもよかったし、ユルく過ごせる場所が増えてもいた。それからなんといってもよかったのは、TAICO CLUBのある時期まであった、上と下とを繋ぐ長い滑り台が復活していたこと。上から下に降りるのに坂道をグルっと回るのに比べ、滑り台だとかなりラクチン。あれがあるのはずいぶん助かる。

音響の質もけっこう変わっていた。全体的にゴリゴリの圧で迫ってくるというよりは、クリアで広がりがある感じの音になっていたので、耳が疲れることもなく、かといって迫力不足というふうでもなかった。

さて、ライブについてだが、自分が見たのは以下の通り。

Joe Armon-Jones→Mount Kimbie→MIIIA→Spangle call LillI line→Cornelius→Rhye→Skee Mask→Clark。2時頃にテントで寝て、起きてからDonna Leake→SIR UP。

前日に3時間程度しか寝てなかったため、深夜に観たかったライブまで起きていられず5時間も寝てしまったのだが、それでも十分満足。観たのはみんなよかった。

Joe Armon-Jones。ダブ的ジャズで、最高のグルーヴとブリっとした音圧。ジョー・アーモン・ジョーンズは涼しい顔で弾きまくり、女版カマシとも言われるサックスのヌビア・ガルシアも佇まい含めて最高にかっこよかった。朝霧に続いて観たMount Kimbieはぶっちゃけ夜中のほうが相応しい気がした。Corneliusは今の形になって何度か観てるものの、映像にごく最近の芸能ネタや政界ネタを混ぜたりもしていて、いろんな面でアップデートされていたのがさすが。間近で体感できた分、やっぱすげえや!の感もひとしおだった。

今回のベストアクトと言ってもいいくらいよかったのが、Rhye。もっと静かにしっとりと聴かせる感じをイメージしていたが、完全にグルーヴ重視。バイオリン奏者のプレイも際立っていたバンドのアンサンブルが素晴らしく、ずっと踊りながら(揺れながら)観た。こだまの森という場所にあれほど合う音楽もないだろう。この場所で聴けたからこそのよさ、というのはかなり大きかった。

それから、朝起きてから「Cabaret」で観た(聴いた)女性DJのDonna Leake。アフロビートからあちこちの民族音楽までを混ぜて聴かせるそのセンスが最高にツボである上、彼女自身もかわいい&かっこいい人で、すっかりファンになってしまった。来年も絶対来てほしい。

というわけで、スバラシイ音楽&音響と、快適に過ごせる客人数&会場の作りと、なんといっても「こだまの森」という最高のロケーションが合わさって、「ああ、このフェス、好きだわ~」と思わせてくれるものになっていたFFKT第1回目。おかげで未だFFKTロスが続いてたりもしてますが…。もう決めた。来年も必ず行く!!



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