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梅津和時プチ大仕事2023(梅津和時×七尾旅人)@新宿PIT INN

2023年3月26日(日)

新宿PIT INNで「梅津和時プチ大仕事2023 DUO『TIME TRAVELER』」 。出演は梅津和時と七尾旅人。

プチ大仕事恒例、梅津さんと旅人のライブ。昨年は何かと重なっていたため観に行けなかったので、自分にとっては2年ぶり。「DUO」と銘打っている通り、ふたりだけ。今回もまた実に濃密で素晴らしかった。⁡

ふたりは何の曲を演奏するかを前もって決めずにステージに立っている。信頼のなせる技だ。旅人はたくさん用意した譜面をパラパラめくり、「梅津さんと一緒にやりたい曲がたくさんあるんだよな」「なにやろうかな」とその時の気分にフィットする1曲を探して「よしこれやろう」とひとつの譜面を選んで前に置き、演奏を始める。その歌と演奏に瞬時に反応し、サックスまたはクラリネットを合わせる梅津さん。新作『Long Voyage』の楽曲は多く演奏されるだろうと、梅津さんはいちおう一通りの曲のキーを把握して臨んでいたそうだが、「覚えてきても、さっきの曲みたいに旅人くんはキーを変えて歌ったりするから」と笑っていた。

ボブ・ディランの「北国の少女」に日本語詞をつけた曲から始まったこの夜のライブ。ほかにも中盤でエルトン・ジョンの「僕の歌は君の歌」、終盤でルー・リードの「ワイルドサイドを歩け」を日本語詞で歌い、それらを聴きながら自分のなかで元曲の解釈の幅が広がった気がした。

新作『Long Voyage』からは「Wonderful Life」「入管の歌」「ソウルフードを君と」「if you just smile(もし君が微笑んだら)」「Dogs&Bread」「パン屋の倉庫で」「ミファ」などが歌われた。バンド編成による『Long Voyage』全曲ライブを自分は1週間ちょっと前に大阪で観たばかりで、だからそのときの音の質感もまだ自分のなかに残っていたが、梅津さんとふたりだけで演奏されるそれらの曲(旅人のアコギと梅津さんのサックスまたはクラリネットだけで鳴らされるそれらの曲)はずいぶん違う響きに感じられた。切迫感、奥行き、厚み、心の芯にグッと届く響き……。どっちがいいという話ではなく、これもまた“もうひとつのLong Voyage“だなと感じられた。

「ソウルフードを君と」では、曲の途中で梅津さんに「(梅津さんの出身地の)仙台のソウルフードはなんですか?」と訊き、梅津さんが「ホヤ」と答えると、歌詞にホヤを入れ込んで歌ったりも(その後も梅津さんは度々「ホヤ!」とシャウトしてたw)。また「Dogs&Blead」では梅津さんがクラリネットなどの楽器で犬の鳴き声を表現し、旅人も声で「ワンワンワン!」。2~3年前のライブでは梅津さんが象の鳴き声をサックスで表現し、ふたりでかけあったりしていたものだったが、そんなふうに音で動物ごっこしているふたりは子供みたいに楽しそうだ。

ほかに、SNSで話題になったことはないが自身の楽曲のベスト5に入る出来だと思っていると話して歌われた「Tender Games」(『兵士A』収録)、それから梅津さん作曲の「東北」も深く胸に入ってきた。

最後は演奏しながら客席を練り歩いて退場していったふたり。改めて梅津さんと旅人の音の合わさりの特別さを強く感じた夜だった。⁡

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