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救急車を呼ぶ前に

大阪では救急車のサイレンの音の鳴る回数が多くなっているように思います。コロナ禍で救急車を呼んでも受け入れの病院が見つからず救急車の中で47時間も過ごす事になったというニュースが先日流れていました。

医療介護のお仕事は『お年寄りの突然の死』に関わる事も多いです。
状態にもよりますが、『救急車を呼ぶ』判断はつくづく難しいと感じます。
ケアマネとしても対応が難しいと感じたので調べた事をケース別にまとめてみました。

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救急車を呼ぶ必要のあるケース

持病もなく元気で暮らしていた人が急に苦しみだした場合。
皆さん迷わず119番で救急車を呼ばれるでしょう。

しかしこんなお話を聞いた事があります。

お年寄りがお風呂場で倒れた。
まだ息があったのですが、あわててご家族さんが110番をして警察を呼んでしまいました。
駆けつけた警察が救急車を呼ぶことになったが
救急処置が間に合いませんでした。死後にご遺体は解剖され、ご家族は悔やんでおりました…

救急車を呼ぶと困るケース

これとは逆に救急車を呼んでほしくないケースがあります。
一番にお願いしたいのは診療所に通院していた患者さんが自宅ですでに亡くなっていた場合には先ず主治医に連絡してほしいのです。
救急車を呼んでも患者さんはすでに亡くなっている。すると救急隊は警察を呼びます。警察官が何人も家にきます。下手をすると「不審死」の扱いとなって検死をすることになります。場合によっては検死解剖までされることになります。

患者さんが亡くなっていることが明白な場合の正しい対応は主治医を呼んで死亡診断書を作成してもらう事です。患者さんの病状を理解している医師がその死亡に不審なところがないことを確認できれば死亡診断書を書く事ができます(診察のあと24時間以内という限定はありません。

救急車を呼ぶのに迷うケース

元気だったおじいちゃんが急に倒れて息をしていない場合、あわてて救急車を呼びますね。救急隊は到着したらすぐに心肺蘇生(心臓マッサージ)を始めます。少し心臓が動きだします。救急車はおじいちゃんを救急病院に運びます。心臓が何分間止まっていたかわかりません。
心停止時間が長かった場合、心臓は動きだしても脳の機能が元に戻るとは限りません。
植物状態になる可能性も出てきます。

近頃の救急病院では救急隊からの依頼に対して患者が高齢者の場合には「気管内挿管や人工呼吸を望みますか?」と確認してきます。このような状況は突然やってきますから、本人の意志を事前に確認してあればよいのですが、そうでなければ家族は「最善を尽くしてほしい」と救急搬送をお願いすることが多いのです。難しい問題です。心停止しても救急で蘇生されて笑顔で帰ってくる80歳以上の患者さんたちもあります。一概に「こうすべきだ」とは決めきれません。

リビングウィルとは

延命措置を望むかどうかを元気なうちに明らかにすることを「リビングウィル」といいます。すなわち尊厳死を選択するかどうかという意思表示です。尊厳死とは「無理な延命措置をして患者の尊厳を損なわないように対処すること」です。尊厳死は「安楽死」と異なって違法ではありません。

リビングウィルの例文
終末期医療に関する事前指示書
私は、自分自身の終末期の医療・ケアについての私の意思を明らかにするため、下記の通りの指示を致します。
(延命措置)
私の傷病が不治の状態であり、既に死が迫っていると診断された場合に、延命措置を取ることをお断り致します。意識がなくなった場合はもちろん、はっきりと意思表示が出来ない場合も同様に扱って下さい。
・鼻管の挿入をしないでください。
・胃瘻の処置をしないでください。
・人工呼吸器を取り付けないでください。
・昇圧薬の投与・輸血・人工透析・血漿交換の実施をしないでください。
(苦痛の緩和)
私の状態が苦しく見えるようであれば、その苦痛を緩和するための処置・治療はお受け致します。下記の措置を取ることに同意いたします。
・苦痛を和らげるための麻薬などの適切な使用による措置以上が私の終末期医療に関する事前の指示書となります。これらの要望を受け入れ、治療に当たった方に深く感謝を申し上げるとともに、これらの指示内容に従って行った行為の責任はすべて私に有ることを表明致します。 
作成日   年  月  日

在宅で静かに見送る

先日、長く在宅で療養されていた利用者さんが自宅でなくなりました。朝に訪問したヘルパーさんが病状悪化を察知して救急車を呼ぼうとしたのですが、訪問看護師さんが制止して主治医に相談してくれました。

もうすぐ100歳のその女性は意識がすでにない状態で安らかに呼吸だけしています。主治医は息子さん夫婦を呼んで「最善の処置」として何もせずに見送ることを提案されました。そのまま二人に一晩付き添っていただき次の朝に看取られました。あの時あわてて救急車を呼ばなくてよかったと思います。

主治医がいる場合
まず、病院に連絡します。診察後24時間以内に、持病が原因で死亡したときは、改めて診察を受けなくても、死亡診断書の交付が受けられます。

診察後24時間経過していたら、主治医の診察を受けて、持病に関連していると判断されたときは、死亡診断書の交付を受けられます。しかし、持病との関連性が認められないときは、医師が警察に届出をし、検視・検案をします。

主治医がいない、または連絡が取れない場合
主治医がいない、または連絡が取れないときは、検視が必要なので、まず、警察に連絡します。遺体はそのままの状態にしておき、暑い夏でも、遺体をドライアイスや氷などで冷やすことは避けましょう。

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突然起こる出来事に医療介護従事者やご家族さんはとっさの判断に悩む事が多いと思いますが

正しい知識前もっての準備をしっかりとしていれば、慌てる事なく落ち着いた対応を行う事ができると思います。

コロナ禍の現在、医療がひっ迫するなかで
現場の最前線で働く人の負担が少しでも軽減されればと願っています。

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