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【122.水曜映画れびゅ~】『658km、陽子の旅』~人間不信のヒッチハイク~

『658km、陽子の旅』は、今年7月公開の日本映画。

「TSUTAYA CREATORS' PROGRAM 2019」脚本部門で審査員特別賞を受賞した室井孝介の脚本を原案にした作品で、第25回上海国際映画祭にて最優秀作品賞・最優秀女優賞・最優秀脚本賞の3冠を達成しました。

あらすじ

42歳 独身 青森県弘前市出身。人生を諦めなんとなく過ごしてきた就職氷河期世代のフリーター陽子は、かつて夢への挑戦を反対され20年以上断絶していた父が突然亡くなった知らせを受ける。従兄の茂とその家族に連れられ、渋々ながら車で弘前へ向かうが、途中のサービスエリアでトラブルを起こした子どもに気を取られた茂一家に置き去りにされてしまう。陽子は弘前に向かうことを逡巡しながらも、所持金がない故にヒッチハイクをすることに。しかし、出棺は明日正午。北上する一夜の旅で出会う人々―毒舌のシングルマザー、人懐こい女の子、怪しいライター、心暖かい夫婦、そして立ちはだかるように現れる若き日の父の幻により、陽子の止まっていた心は大きく揺れ動いてゆく。冷たい初冬の東北の風が吹きすさぶ中、はたして陽子は出棺までに実家にたどり着くのか…。

公式サイトより一部改編

人間不信のヒッチハイク

極度に人との関わりを避ける陽子は、自宅で苦情受付のチャット対応の仕事をしていた。家から一歩も出ず、人間関係を最大限忌避きひした毎日を過ごしていた。

そんな彼女に、従兄のが急に訪ねてきた。茂は陽子に告げる。

「お前の父ちゃんが死んだぞ」

茂の家族の車に乗って、陽子は東京から地元の青森まで、父の葬儀に出るために向かった。

しかし…

休憩に立ち寄ったサービスエリアで、陽子は1人取り残されてしまう。いや厳密にいえば、”取り残された”わけではなく、茂の息子がけがをして、茂夫婦は病院に行っていたのだ。

しかし茂はサービスエリアに戻ってきた時には、そこに陽子の姿はなかった。

極度の人間不信であるはずの陽子は、ヒッチハイクで青森を目指していたのである。

不安しかないロードムービー

人とまともに目も合わせられない、声は小さい、とにかく暗い…

そんな陽子が、東京から青森までの658kmをヒッチハイクで進んでいく物語の本作。

とにかくこの作品を観ていて思ったのは「不安しかないっ!」ということです。

まずヒッチハイクを頼むところから、「こりゃダメだろ…」って感じ。乗せてもらえることになっても、不愛想をかまして、半ギレされる始末。「もう、何やってんだよ!」って心のなかで叫びまくりました。

しかしその気持ち、わからなくもない…。

というのも、私も中高では対人恐怖症みたいな部分があって、人に話しかけるのが大の苦手だったんですよね。だから、心の中では陽子に怒りを感じる反面、とても同情してしまってもいたんです。

そんな陽子が一期一会で、いい人や悪い人、ちょっとウザい人に会って、そして別れて、少しずつ自分の欠点を痛感していく姿に感動してしまいました。

菊地凛子って、やっぱすげぇ~

そんな陽子を演じたのは、菊地凛子

もう…本当に凄かったです。

独特の暗さと、とっつきにくさ、そして自己中な部分などをしっかり演じきって、「こういう人いるよな」っていう説得力が役から滲み出ていました。

さすが世界の"Rinko Kikuchi"。
上海国際映画祭最優秀女優賞も納得です。

そしてもう1人素晴らしかったのが、風吹ジュンさん。

この人は圧巻でしたね。自然体で、飾り気がなく、あそこまで"おばあちゃん"役に徹しているのは、脱帽です。樹木希林さんに匹敵するほどの存在感でした。

・・・

そんな本作、ちょっとレビュー記事の投稿が遅れて、現在公開しているところはほぼなくなってしまったかと思いますが、いつか機会があれば、ぜひ見ていただきたい良作です!


前回記事と、次回記事

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次回の更新では、マーティン・スコセッシ監督、レオナルド・ディカプリオ、ロバート・デ・二―ロ共演の"Killers of the Flower Moon”キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン(2023)を紹介させていただきます。

お楽しみに!