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行け!稲中卓球部!前野天才論③ その95 生まれた理由

 ある時部室にやってくると、一人の女子生徒の前で部員たちが楽しそうに騒いでいた。

 この女子生徒は、人の前世を見ることができるのだという。
そこで、前野が占ってもらうと、何とオーストラリアかニュージーランド当たりの羊だということだった。

 しかし、その羊は飼い主に対する猛烈な怒り、恨み、理不尽さに対する鬱憤をため込んでいたのである。
 女子生徒はそれを知るや否や、恐ろしい恐ろしいと震えあがるのだった。

 どうして女子生徒がここまで震え上がったのかというと、羊という動物の特徴を思えばよくわかる。教会では迷える子羊たちよ、と私たちに神父さんが言うように、羊はとてつもなく大人しく、様々な攻撃的被害などに対しても、大人しく、防衛本能からの攻撃性というものも持たないものなのである。

 そうした羊が、飼い主に対してとてつもないほどの怒りを覚えているというのは、これは異常なことなのである。

 さて、それを知った前野は、自分の前世を知ることになり、前世からの願いを知ることとなった。

 そんな折、突如オーストラリア、ニュージーランド旅行のための卓球大会が開催されることを知る。

 ところが部員たちはそれを見るや否や、前野が止めるのも聞かず、練習に没頭し始めるのであった。

 自分のオーストラリア行きについて言えば、部員たちは大人になってから行けばいいだろ・・・という感じでまるで相手にしない。そのため、前野は彼らを見て、死んだ魚のような目をしてやがる・・・と感じ、とうとう静かに「キレ」る。

 あばよチンカスども。

 といって、悪魔の格好をしてその場を後にする。

さて、ここで前野が感じたことは一体なんだったのか!ここが前野の天才的な一つの特徴だ。

 つまり、今、目の前に「前世からの思いを発見した人間が立っている」ということについて、部員たちは全くと言っていいほど無関心なのである。皆さんも想像してみよう。目の前に、「前世からの思い、今世に生まれた意味」と言ったものを発見した人間が目の前にいて、そしてそれを叶えるだけの手段が舞い込んできた。オーストラリア行である。

 もし事の重大さが理解できているのであれば、前野にぜひオーストラリアへ行くように協力するのが仲間という者なのではないだろうか。

 しかし、彼らはそんなことおかないなしに、自分がとにかく行きたいという思いを優先するのである。彼らは、「前世からの思いを発見した人間」の、「前世からの思い」を達成させてやることよりも、「自分がオーストラリア&ニュージーランド+50万円の賞金」を手に入れたいという気持ちを優先するのである。

 そこが前野にとって信じられない行動なのであった。

 しかし、前野は「井沢の志望動機」だけは理解を示す。なぜかというと、偽エルビス対マングースのショーを開催すると書いてあるからだ。つまり、「そこでしか見ることのできないものを見るために」井沢は行くことを選択したのである。

 だが、井沢以外の部員たちの目的は、自分の楽しみやら、竹田に至っては岩下京子とのいちゃつきが目当てだという。

 もう一度考えてみてほしい。「前世からの思いを叶えるためにオーストラリア&ニュージーランド」に行く男と、「自分の彼女と海外旅行に行って、あわよくば・・・」という男。前野と竹田の目的。皆はどちらが行く価値があると思うだろうか?

 少なくとも前野は、自分の方がよっぽど、オーストラリアに行くべき人間であるという考えを持っているのであるし、私もそうだと考えている。

 まだ「井沢」はOKだ。なぜなら、井沢の見たいものは、その場でしか見る事が出来ないのだから。だから、そこへ行くだけの意味はある。
 しかし、竹田のは本当に遊興だし、彼女との進展は、言ってしまえば他のところでも出来ると言えばできる。しかし、竹田は自分の楽しみを、前野の人生の目的よりも優先するのである。

 私は前野の価値観に1票!私だったら前野のオーストラリア行を応援するぞ!絶対にそんなことがないから言えるんですけどね。

↑ これ安いと思う。


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