見出し画像

Drawingの幅

説明的にならずに、自分の解釈・デザインを効果的に伝えるか。建築プログラムが始まって約1ヶ月半で最も悩んだところだ。

ここではどれだけ自分のデザインを削ぎ落とせるか、どれだけそれを美しくアウトプットできるかが問われている。誰が見ても分かるようなプレゼンテーションではなくても良く、フォーカスしているポイントの鋭さ、そのストーリーの強さが求められる。

その点、こっちの学生(留学生もかなり多いが)は柔軟でポジティブな人間が多い。Drawingという概念の幅がとても広い。所謂図面とは思えないものが多く刺激的だった。

そして、私はそこが弱いことを痛感した。別に建築主への説明資料を作っている訳でもないのに、どうしても「分かるように」描いてしまう。担当教員からは何度かLiterally(説明的)すぎると言われた。日本の大学ではもう少し「読める図面」を描きなさいと指導された覚えがあるが、真逆だった。

しかし、英語の壁はやっぱり高い。自分のデザインを説明するのに、すごく低レベルな言葉しか出てこない。大したことは考えていないように聞こえている気がして辛い。そして、ディスカッションは更に厳しい。できるだけ議論が盛り上がる前に自分の意見を言ってしまうようにしている。

以下、この一ヶ月の振り返り

コロンビア大学建築大学院建築コースの卒業要件は毎学期4つのクラスをパスし、トータル108単位を取得することである。修士設計や論文などは無く、また日本の大学院のような研究室制度も無い。自分の興味のある教授のスタジオやクラスを受講することで専門性を高めるというスタイルである。とはいえ比較的必修授業が多く一年目はほぼ全て必修で埋まってしまう。今年の建築コースは約90人、半分かそれ以上が留学生である。やはり中国系が多く30人程度、その他カナダ、ヨーロッパからの学生が10数人。日本人は私1人(3年まで含めてコース全体でも他に日本人はいない)である。


◆Core Studio 1 (設計課題:一般のクラスの3倍にあたる9単位、週に12時間の枠)
学期を通して3つの課題が与えられる。今月は1つ目の課題:The way things go というアート作品の動画を見て、その空間的な特性と起こっている出来事を白と黒の線だけを用いて図面化するという内容。2週間半で提出というウォーミングアップを兼ねた短期課題。実務を10年経験して頭が固くなってきている身としては、この極めて抽象的な課題を、どうアーティスティック、コンセプチュアル、かつグラフィカルな美しさを両立させて描くかという点に苦労した。他の学生の作品はとても多種多様であり、(担当教官の指導方法に依るところが大きいが)抽象画のようなものも多くあった。アウトプット以上に、彼らの視点の広さと解釈の幅には驚かされるところが多く、非常に刺激的であった。


◆ADR (ビジュアルプレゼンテーション)
2次元、3次元、4次元のプレゼンテーション方法を学ぶ。今月は3次元モデルをRhinocerosで作成し、2次元ドローイングとして表現する課題に取り組んだ。


◆QAH 1 (建築史18世紀から20世紀初頭)
建築本体はもちろん、その背景となる社会や思想について議論する。レクチャー、ディスカッション、レポート課題、毎週100ページ程度のリーディング課題。


◆AT 1 (環境工学)
基本的な温熱・光・音環境のレクチャー、データ・ソフトを用いた解析・比較方法を学ぶ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?