見出し画像

足底腱膜炎の評価〜治療

今年より臨床+に参加させていただきました、武田(@takedajunichipt)です。よろしくお願いします。

さて、今回のテーマは「足底腱膜炎」です。

クリニックではよく診られる疾患の一つだと思います。

特にランナーに多く、ランニング障害のなかでも3番目に頻度の高い疾患と言われています。近年のランニングブームにより、足底腱膜炎の患者さんを診る機会が増えた方も多いのではないでしょうか?

本稿では、足底腱膜炎の発生機序から考える評価〜治療について解説させていただきます。

●足底腱膜炎の病態解釈

|足底腱膜の解剖

まず、足底筋膜の解剖についておさらいします。

青とオレンジ フィットネス・ワークアウト クール プレゼンテーション

足底腱膜は足底全体を縦走して支持するため、特に内側縦アーチの保持に寄与すると言われています。

|足底腱膜炎とは?

足底腱膜炎は腱膜の局所的な炎症や変性をきたした状態です。

好発部位は、踵骨隆起内側の付着部付近ですが、中央内側や中足骨頭部にも疼痛が生じることもあり、その疼痛部位は多岐に渡ります。

画像2

|足底腱膜炎の患者さんの訴え

患者さんの訴えとして多いものは以下のような症状です。

・朝、起床時の1〜3歩目の痛み
・長時間座った後に立ち上がった瞬間や歩き始めた時の痛み
・スポーツ後の痛み

|足底腱膜炎に関わる基礎知識

|トラス機構とウィンドラス機構

足底腱膜には足部アーチに関する2つの機構に関与しています。

画像3

画像4

トラス機構はクッションの役割として衝撃吸収に作用し、ウィンドラス機構はバネの役割として推進力の増加に作用します。

この2つの機構は歩行やランニング、そしてジャンプ動作に重要となります。

その反面、これらの機構の担い手となる足底腱膜には強いストレスが加わり、障害に発展しやすいと言えます。

|アーチ保持に必要な筋

足底腱膜炎はアーチ機能の破綻により発生しやすい疾患です。

アーチ機能に関わる筋について簡単に復習をします。

まずは内在筋です。

<内在筋の機能>
・動的アーチの維持
・機能的なアーチ補正
・着地動作の衝撃吸収
・外在筋の負荷の軽減

つまり、内在筋が弱くなるとアーチの維持が困難になり、衝撃吸収能力が低下し、外在筋への負荷を増し、下肢全体の機能低下につながります。

青とオレンジ フィットネス・ワークアウト クール プレゼンテーション

次に外在筋です。注目すべき筋は、長腓骨筋後脛骨筋です。

長腓骨筋は3アーチ全てに動的支持組織として関与しますし、後脛骨筋は内側縦アーチと足根部レベルの横アーチに関与しています。

これら2つの筋は足底で交叉して走行し、両筋で協調してアーチを引き上げ、足部の安定化に寄与します。

これはクロスサポートメカニズムと呼ばれます。

|アキレス腱ー踵骨ー足底筋膜ユニット

足底腱膜は踵骨を介してアキレス腱と連結しています。

画像6

画像7


よって、アキレス腱を構成する下腿三頭筋の柔軟性評価は必須です。

|歩行のフェーズから考える足底腱膜炎の発生機序

足底腱膜炎の発生機序は、歩行のフェーズで考えるとわかりやすいと思います。

画像8

図のように足底腱膜には歩行のフェーズに合わせて圧迫ストレス伸張ストレスが加わります。

これらの機械的ストレスが繰り返し足底腱膜に加わり、組織に微細損傷が発生します。その結果、炎症や変性を起こすと考えられます。

歩行は日常的に行われるため、患部の安静を保てず、組織の修復を遅らせます。そのため、長引く痛みとなりやすいのもこの疾患の特徴です。

|足底腱膜の緊張から考える足底腱膜炎の発生機序

足底腱膜の緊張状態から発症機序を考えることもあります。

①足底腱膜の緊張が亢進した場合
②足底腱膜の緊張が低下した場合 
参考:運動器疾患の「なぜ?」がわかる臨床解剖学

足底腱膜の緊張が亢進した場合、歩行のミッドスタンス〜ターミナルスタンスの伸張ストレスにより痛みが生じやすいと思われます。

一方、足底腱膜の緊張が低下した場合は、イニシャルコンタクト〜ミッドスタンスにかけての圧迫ストレス(荷重応力)を分散できないため、踵骨付着部に応力が集中して痛みが生じると考えられます。

足底腱膜の一部の線維は斜走線維束を持つと言われ、この繊維束の形態から荷重応力の分散機能を持っていると考えられています。

足底腱膜の緊張が低下していると、この応力分散機能も低下し、圧迫ストレスに負けてしまいます。

このように、同じ足底腱膜炎であっても足底腱膜の緊張の違いで痛みの発生機序は変わってくるので、チェックが必要です。

|足部アーチから考える足底腱膜炎の発生機序

足部アーチの高さによっても足底腱膜炎の発生機序は変わってきます。

①高アーチ:凹足、回外足 →特に伸張ストレスに弱い
②低アーチ:扁平足、回内足 →伸張ストレスと圧迫ストレスに弱い

低アーチの場合、足底腱膜の緊張状態は亢進にも低下にもなりうると考えます。

低アーチにより足底腱膜が延長して緊張することもあれば、足底腱膜が覆う内在筋群の緊張が低下することで、足底腱膜自体の緊張も低下することがあると考えています。

|発生機序のまとめ

下記の図から自分の患者さんがどのような組み合わせで痛みが発生しているか考えてみてください。

画像9

最も一般的なものは、低アーチで足底腱膜の緊張が亢進して痛みになるケースです。

画像10

そして、他には高アーチで伸張ストレスが原因で痛みになるケース、

画像11

足底腱膜の緊張低下が原因で圧迫ストレスに負けてしまって痛みを出すケースなどがあると思います。

画像12

最後のケースは稀ですが、難渋しやすいので注意が必要です。

●局所評価

では、具体的評価に移ります。まずは局所評価です。

ここから先は

4,345字 / 24画像
この記事のみ ¥ 500
期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?