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ご近所付き合い

 僕の住んでいるマンションは、けっこう年代物で、住んでいる方も年配の方が多いのです。

 そのせいかどの住人の方も礼儀正しくて、必ずエレベーターで会うと皆さん挨拶をしてくれて、夜なんかは「おやすみなさい」と言い合ったりしています。

 その中でもよく喋るのが同じフロアに住んでいるちょいワル風のおじさん。喋ると言っても、「兄ちゃんどこいくんだ?」とか「今日は女連れ込んだのか?」とか本当に軽い立ち話程度の関係でした。

 そんなある日、後輩から大量のみかんが送られてきたので、思いつきでおじさんにお裾分けしたんですね。そしたら昨日突然うちのインターフォンが鳴らされまして、開けたらそのおじさんがいて「昼飯行こうぜ。みかんのお礼にさ」なんて誘われて、行ってきました。

 おじさんは、元々芸能系の仕事をしていましたが、今は引退しているそうで、日々痴呆症になってしまった奥さんの面倒を見ていると教えてくれました。おじさんの昔の写真も見せてくれたんですが、すっごく男前で。だいぶ遊んだんじゃないですか?と聞くと、おじさんはこう言いました。

「まあな。その時は嫁さんを蔑ろにしてなあ。だから今は嫁さん孝行してるんだ。そうやって人生ってのは帳尻が合うんだよ。それに、ボケちゃってるけど、嫁さん可愛くてなあ」

 なんて素敵な・・・ご家族のことも教えてくれて、息子さんはオーストラリアで美容師をされているそうで、お孫さんの写真も見せてくれました。その時のおじさんは本当に嬉しそうな表情を浮かべていました。

 まさかのご近所付き合い。でも、とても心温まりました。そして、僕もおじさんみたいな素敵な家族に囲まれた人生を歩みたいなと、新しい目標もできた良い休日でした。

僕は37歳のサラリーマンです。こらからnoteで小説を投稿していこうと考えています。 小説のテーマは音楽やスポーツや恋愛など様々ですが、自分が育った東京の城南地区(主に東横線や田園都市線沿い) を舞台に、2000年代に青春を過ごした同世代の人達に向けたものを書いていくつもりです。