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Roomies @BLUE NOTE PLACE(20230411)

 精鋭たちが紡ぎ出す、グルーヴに満ちた小宇宙。

 東京のネオソウル/R&Bシーンで秀抜なスキルと独創性で存在感を発揮しているRoomies(ルゥミィズ)が、昨年12月以来2度目の恵比寿・BLUE NOTE PLACEに登場(前回 →「Roomies @BLUE NOTE PLACE」)。好評だったこともあってか、今回は4月11日・12日の2デイズ公演に。その1stデイズに足を運んだ。

 4月9日にBLUE NOTE PLACEのサイトにて、「アーティストの都合により、ベースがサポートメンバーに変更」との情報がアップされていたのだが、その後、ベースの"えーちゃん”こと吉川衛が脱退するとのアナウンス。活動の方向性の違いということらしいのだが、不穏な別離ではないようだ。帽子が似合う伊達男の存在感あるベースは聴き応えがあったゆえ残念だが、いずれ彼が鳴らすベースに出会う時がくるだろう。吉川に代わってサポートメンバーに入ったのが、JQによるバンド・プロジェクト"Nulbarich”(ナルバリッチ)にも参加しているTakayasu Nagai(永井隆泰)。長身の寡黙な優男といった外見イメージだが、響かせるボトムは漆黒。吉川とはまた異なる腰を揺らすグルーヴで、Roomiesのサウンドを高揚へと駆り立てていた。

 オープニングやセット間のDJは、愛媛県出身のシンガー・ソングライターのナツ・サマーが担当。シティポップやレゲエを聴いて育ち、クニモンド瀧口(流線形)プロデュースでデビュー、2nd EP『トロピカル・ウィンター』のアートワークを永井博が手掛けるなど、アーティスト名も含めて、シティポップ潮流にどっぷり浸かっていそうな気もしたゆえ、シャレオツなライトソウルあたりをプレイするかと思いきや、マイケル・ジャクソン「アイ・キャント・ヘルプ・イット」、宇多田ヒカル「In My Room」、ダニー・ハサウェイ「ラヴ・ラヴ・ラヴ」あたりをセレクト。あまりプレイする姿を見ることは叶わなかったが、ショートカットのキュートな(お嬢)サマーだった。

ナツ・サマー

 1stセットは12月の公演同様に「The End of the Two」「Smile with Thrill」「Do you feel」とアルバム『The Roomies』からの楽曲を連ねる。優しく寄り添うようなミディアム・メロウ「The End of the Two」からマイケル・ジャクソン『オフ・ザ・ウォール』期のビートを想起させるブラコン/ソウル「Smile with Thrill」へ繋げ、腰を揺らせるグルーヴで踊らせにきたところで、どっぷりと溶け込むような甘茶ネオソウル「Do you feel」に落とし込んでいくという流れは、あらかじめ分かっていながらも心地よい。

 「彷徨っているだけ~」以降のファルセットが美味な「Runnin'」、ポロポロと安らぎが静かに剥がれ落ちていくようなやるせなさを仄かに滲ませたノスタルジックな「Not Your Man」を経て、文字どおり夢想へといざなうようなドリーミーなR&B「甘い夢」で前半が終了。Kevinのスウィートなヴォーカルに耳を惹かれるのはもちろんだが、それとぶつかり合うことなく、しかしながら音の粒立ちを明らかに刻んでいくバンド・サウンドとの相性の良さも、Roomiesのひとつの魅力だと感じた。

 2ndセットは心弾むリズムと琴線に触れるメロディラインがタイトルよろしく高みへと導く「Higher」からスタート。それに続く「I just fell in love with you」への流れは12月の公演でも披露したのだが(3月のWWW公演=記事 →「Roomies @WWW(20230304)」では「I just fell in love with you」から「Higher」という順だったが)、Roomiesの"鉄板”ラインなのだろう。Takayasu Nagaiのファットなボトムと斎藤渉のアグレッシヴな鍵盤インプロヴィゼーションを経て、及川、高橋、小野という風にワンパートソロを組み込んだイントロから「I just fell in love with you」へ雪崩れ込むという導入は、なんとも贅沢。メンバーが実に朗らかな表情を垣間見せているのもいい。

 ここで一気にギアを上げて……とせずに、水面に滴が零れていくような瑞々しさとアンニュイなムードが美しく重なる「きみとふたり」でクールダウンさせるという手口も、ソウルやファンク特有の焦らしマナーのようでいじらしい。耳に残るフレーズのリフレインのなかをKevinのしなやかなファルセットが泳いでいくようなエンディングは、機微を穿つのに充分だ。

 そして、WWW公演では圧倒的なパフォーマンスで白眉のステージとなった「In My Dream」へ。Kevinのヴォーカルがたゆたうやわらかな前半から、高橋がギターを爪弾くのを合図に、小野が刻むタイトなドラムと永井の蠢くように這うベースとのせめぎ合いの間を縫うように、及川のシンセの後押しを受けて、ジャズ・インプロヴィゼーションよろしく斎藤が恍惚の鍵盤捌きでフロアの熱を上昇させていく。ディープハウス・マナーのトラックで突き進み、再びグルーヴィなミディアムR&Bへと帰ってくる展開は、強烈な風に抗うように暗闇のトンネルを突き進み、トンネルを出ると爽やかな青い空が広がっていた……そんな絵も描けそうなジェットコースター感が五感を満たしてくれた。

 本編ラストの感謝ソング「Family」でいつものように感謝の念を歌った後は、アンコールに「きっと愛」でエンディング。リゾート・ポップス的なアプローチで奏でる爽やかな作風は、和モノレアグルーヴやシティポップの好事家の耳にも応えるところ。メロウやスウィートネスを横溢させながらも、時にエキサイティングかつグルーヴィに。Roomiesというネーミングは一見こじんまりとした空間のような印象を受けるが、その実は精鋭バンドメンバーたちが織りなす、サウンドの小宇宙だった。まだRoomiesのステージを観始めたばかりだが、観るたびにそのような想いが去来しているのは、単なる上質な音楽性だけではない、奥深さが音やグルーヴとなって放出されているからだろう。

◇◇◇
<SET LIST>
≪1st Set≫
01 The End of the Two (*R)
02 Smile with Thrill (*R)
03 Do you feel (*R)
04 Runnin' (*R)
05 Not Your Man
06 甘い夢 

≪2nd Set≫
01 Higher 
02 I just fell in love with you (*R)
03 きみとふたり
04 In My Dream (*R)
05 Family (*R)
≪ENCORE≫
06 きっと愛

(*R):song from album 『The Roomies』

<MEMBERS>
Kevin / Kevin Masatoshi(vo)
Yuichiro Takahashi / 高橋柚一郎(g)
Takayasu Nagai / 永井隆泰(from Nulbarich /b)※support member
Nagisa Ono / 小野渚紗(ds)
Wataru Saito / 斎藤渉(p) 
Sosuke Oikawa / 及川創介(syn)

DJ:
Natsu Summer / ナツ・サマー

Roomies

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【Roomiesの記事】
2022/12/13 Roomies @BLUE NOTE PLACE
2023/03/04 Roomies @WWW(20230304)
2023/04/11 Roomies @BLUE NOTE PLACE(20230411)(本記事)

もし、仮に、気まぐれにも、サポートをしていただける奇特な方がいらっしゃったあかつきには、積み上げたものぶっ壊して、身に着けたもの取っ払って……全力でお礼させていただきます。