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脳はアートをどう処理しているのだろうか 【なぜ脳はアートがわかるのか】

画像は日本科学未来館の展示物。

逆光学問題


我々はモノを直接見ているのではなく、モノに反射した光を見ている。物体は3次元だが、反射した光が網膜に映った時点でそれは2次元映像になっている。しかし、脳はそれを3次元映像として再構築している。もちろん私たちは3次元の物体を3次元として認識できている。

一体どうやって2次元から3次元情報を構築できるのか?3次元から2次元に圧縮した時点で情報は失われているのに。しかも、我々はほとんどの人で3次元の同じイメージとして自動的に再構築ができている。

これにはボトムアップ情報とトップダウン情報が関係しているらしい。そしてこれらがアートを認識する際の鍵だという。

ボトムアップ情報

脳の神経回路に生まれつきに備わっているモノで、物体や顔の位置、輪郭、奥行きなどを自然と構築できる。子供がすぐに人の顔を認識して識別できるのもこのためだとか。

アート面においては、肖像画や風景画などいわゆる具象芸術は、こちらの情報を起点に解釈されている。


トップダウン情報

想像、学習などによって、過去の経験的な部分からイメージを補完していく。物事の曖昧な部分は、個人の経験的な学習からトップダウン情報で補われる。これは個人の心理的な文脈によって左右される。ボトムアップ情報だけで解釈できない部分は、トップダウン情報が動員されている。

アート面においては、抽象芸術はこちらで解釈されている。


アートと情報処理

アートと言われて理解がしづらいのは、いわゆる抽象芸術の方だと思われるけど(一見すると、落書きみたいに見えてしまうけど)、こういった秩序も法則もないような芸術を見て、よくわからないけどなんかこういう感じなのかなとか思ったりすることはあると思う。よくわからないけど人の顔っぽいなぁとか、ちょっと怖い絵だなとか、神々しいように見えたり、闇が深そうに見えたり。もちろん落書きにしか見えないこともあるだろう。

こういった抽象芸術を見て想像を補っているのが、ここでいうトップダウン情報ということのようだ。これによって、抽象芸術を想像力で補って解釈することができる。そして、それは過去の経験や学習、心理的な文脈で左右されるので、人によって感じ方、解釈の仕方は異なるということだ。

抽象芸術が我々に与えるものは、私たちの脳が進化の過程で再構築できるようになったイメージと根本的に違うイメージを解釈させようと挑戦してきていることだという。クリエイティビティを高めるためにアートをみる意味は、こういうところから来ているのかもしれない。

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