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2日遅れの国際女性Dayネタ:オルブライト元国務長官と稲田朋美議員。

国際女性デーに発信しようかなと思っていたら一日どころか二日遅れてしまった。

ここ数年、ジェンダーについて、社会の変化を肌で感じる。昔だったらスルーだったであろう森元首相の発言の一件で、一部ではなく、男性もメディアも含め多くの方が声をあげるのを見たり、女性議員の皆さんが、若手の男性議員も巻き込んで政策を推し進めている姿を見たり。。。

そんな中で、最近あった、この日のテーマに相応しい二つの話を紹介したい。

一つ目は、国際女性デーに合わせて、第64代の米国務長官マデレーン・オルブライト氏が私の母校の大学院のイベントで登壇した内容。

二つ目は、昨年末に稲田朋美衆議院議員を訪ねて行った時のインタビュー内容。

オルブライト元長官の会のハイライトはこちら。RBGなどと同様、私にとっては、もはやレジェンドの域にある方の、苦労、そして強さを感じる内容だった。

・ 国務長官に指名されるときに、「女性だとアラブのリーダーと交渉できない」と言われたが、実際はアラブのリーダーより、「本当は自分たちがなるべきなのに」と思っている自国内政府の男性陣の方が問題だった。そんな中で、指名したクリントン大統領が、会議で「国務長官のいうことを聞きたい」と振ってくれたのが大きかった。そういうChampion(擁護者)が変化を進める。

・ リーダーシップポジションの場合、Mediocre(平凡)な男性は許されるが、Mediocreな女性は居場所がない。Excellentにならなくてはならない。

・ 会議に出るとき、「何があっても喋る」と決めていた。バカなことを言っているかもしれない、大したことじゃない、そう思って喋らなかったらあとで後悔するし自分が嫌いになる。しかも、手をあげて順番を待つのではなくて、話を遮って入ることをうかがう。そうすると、下手なタイミングで入れないし、発言の精度を高めるために、会議の理解も一段深まる。


そして、稲田朋美衆議院議員。大変僭越で失礼なことを言えば、私は報道だけで知る稲田議員に、以前あまり好印象を持っていなかった。超保守的ポジションで偉い方に引き上げられた…そんな印象を持っていたかもしれないし、ご本人を知りもしないままにメディアを通じたバイアスを持って見ていたかもしれない。

しかし、三浦まり先生率いる「パリテ・アカデミー」の企画で、「誰でもいいから政治家の話を聞いてきていいよ」と言われたときに真っ先に思い当たったのは稲田議員だった。

防衛大臣などを歴任される中で挫折を経験し、その後「女性議員飛躍の会」を立ち上げ寡婦控除を未婚のひとり親にも広げる税制変更を強力に推し進める…近年の稲田議員は、私が今まで持っていたイメージを覆す事ばかりをされているように見えて、どんな心境の変化があったんだろう…と気になって仕方なかったからだ。

そして、実際に会いに行った稲田議員はとてもチャーミングな人だった。実は、訪問した日は、第五次男女共同参画基本計画案が議論されており、議論が紛糾してミーティングの時間も大幅に遅れ、議員は昼食を食べる暇すらないような、大変お忙しい中だったが、それでも我々名もなき押しかけ女子3人に、しっかりとお時間を割いてくれた。

沢山の、そして率直なご苦労のお話も伺う中で、等身大の姿を感じ、とても勇気をいただいた。ぜひ、多くの方に読んで欲しいなと思う。

以下に、インタビューの全体を掲載する:

自民党の女性議員の少なさは絶望的に感じる一方、日本で女性議員が増えるためには、自民党の変革が不可欠と感じます。自民党において女性議員が増えるために考えられる具体策は何でしょうか。9月に下村前選対委員長が提出された「令和12年までの国会・地方議会での女性議員3割」の目標やクオータ制の導入に関する提言について、党内ではどのように受け止められており、今後どのような施策が進んでいくのでしょうか。
 
2019年3月に「女性議員飛躍の会」という議連(議員連盟)を作り、様々な提言[1]を出すことができた。寡婦控除[2]で大きな成果が出て、その今年3月にも、女性議員を増やすための方策に関する要望書を提出。その際に三浦先生にもアドバイスをいただいており、政党助成金の傾斜配分、地方議会での取り組みなど色々ご教示いただいた。
 
私が自民党の幹事長代行の時、下村先生が選挙対策委員長で、私も選対委員会においても副委員長を務めた。選対委員会の会議で女性は私一人だけだったが、選対の会議で「飛躍の会」の提言である「女性議員を増やし 真の民主主義を実現するための要望書」を発表した。諸外国ではクオータ制などなんらかの後押しする制度を導入することで女性議員の比率を高めていることを伝え、日本が国会議員における女性議員の割合が10%のままである現状についての危機感を伝えた。例えば、自民党の女性議員の数が非常に少ないのを可視化して見えるようにした日本地図など色々な手段を活用した。その後下村選対委員長は各級の女性候補が30%になるように進めていく、と応えてくださった。
 
2020年9月7日に、下村先生は選対委員長の在任の最後に、2030年に国会や地方議員で女性議員の割合を30%にすることを目指し、クオータ制の導入の検討を柱とした提言を二階幹事長に提出された。下村先生は現在、政調会長となられた。提言でも女性議員の数値目標を30%と入れることができたので、今後、少しづつ自民党が変わるきっかけになるかな、と思っている。
 
女性議員を増やす施策において、実際問題として壁となっているのはどんなことでしょうか。
 
壁は、「政治は男性がやるもの」という意識があることではないか。
 
そのような意識が自民党内部にあるし、特に、保守的な地盤のところでは大きい。政治家は男性が多いし、政治家を応援している後援会も圧倒的に男性が多い。そういうところから女性が認められていくというのは、非常に難しいことだ。例えば、自民党は県連組織が非常に強い。しかし、県連は男性中心の組織。たとえ、そこから女性の議員が誕生しても、女性の議員と県連との関係も非常に難しいという実情もある。
 

寡婦控除の件では、素晴らしい女性議員たちの連帯を拝見しました。自民党の女性議員達の中で、何か変化があったのでしょうか。
 
今まで、先輩の女性議員は一人で頑張っていた。野田聖子先生なんかも、若い頃は「パンツスーツは着てはいけない」と指摘されるなど、そのような息苦しさの中でキャリアをで築いてこられた。
 
ところが、女性議員一人がすごく能力が高くても、現状は政治を変えられない。少ない人数でも女性が固まって一定の方向を目指してやっていくことが必要なのではないかと考えるようになった。
 
自分も防衛大臣を務めた時に挫折もしたし、勉強もした。そのような経験を踏まえて、今度後輩の女性議員が大臣になるときには、自分の反省も含めて「こうした方が良い」ということをアドバイスしてあげたいと思った。
 
ただ、女性の国会議員は地元でも苦労していて、すぐに「候補者のすげ替えをしよう」となってしまう。実際に、女性の候補者はスキャンダルがあった後など、難しい選挙区に立てられることが多い。しかし、その一時的なスキャンダルなどの状況が落ち着いてくると、「(本来出るべきなのは)お前じゃなかった」と思われることもある。
 
選挙で大きな票を取っていたり、重要な役職に就くなど国会で活躍していても、地元の関係や県連との関係が、次の選挙の公認取り付けの障害になることもある。候補になるのも大変だし、議員になった以降に続けていくのも大変なことが多い。私は現在当選5期であるが、自分より上の期数の人の女性議員の数は限られている。
 
 
次は、先生個人のお話についてお伺いさせてください。
政治生活の中で、女性であることの一番のご苦労は何だったでしょうか。

 
最初は、先輩議員からも目をかけられましたし野党時代は当選2期で代表質問に抜擢されることもあった。しかし、ある一定のところを超えてその先に登っていく頃から、「厳しいな」と感じる、冷たい目で見られていると思うこともあった。
 
正直、マスコミも、女性議員に対しバイアスがかかっていると思うことも多い。人数が少ないからかもしれないが、例えば、女性の発言の方が揚げ足を取られる、服装などを変な風に取り上げられるなど。男性で「変な色のスーツ」、「派手なネクタイ」と取り上げられることは、なかなかないと思う。報道の仕方も、客観的ではなくて、茶化したり、意地悪な見方をしているな、と感じることもある。
 
そのような苦しい経験があった時に、どのように消化しているのでしょうか。
 
最初は、少しでも変なことを書かれたらとても気にしていた。しかし、段々、「ま、いいか」と気にしないようになった。Twitterのコメントなどは、もう見ないようにしようかとすら思っている。それでも、不愉快なことは沢山ある。それは地方議員の女性も一緒だと思う。「女性議員飛躍の会」にも地方議員の皆さんに来てもらってお話ししたりするが、国会以上に理不尽なことがあるなと感じている。例えば、夫婦別氏に賛成したら自民党を除名された、とか、女性県会議員が知事に出たいといったら辞めさせされた、など、女性だからこそ極端な対応をされたり強く当たられることも多いのではないのだろうか。
 
保守的な支持層を持ちながら、男女共同参画など反発を招きそうなアジェンダを進められるその勇気はどこから来るのでしょうか。
 

確かに、そのようなアジェンダに取り組むことで「あなたはダメだ」「もう、応援できない」と言われ、批判されることもある。憲法改正や尖閣問題や外交・防衛などの保守として重要な政策にももちろん取り組んでいるが、夫婦別氏の問題に関して、婚前氏を使うことができる制度ついて少し発言するだけで、排除されてしまう。ただ、それは、少し偏狭ではないかと思う。全体の中でちょっとしたことが違うだけで、全てにおいて「ダメだ」となるのは、男性議員は経験しない現象ではないだろうか。そのような厳しい批判を受ける度に不愉快な気持ちになるが、それでも進んでいる。
 
本当は自民党の女性議員でも、そういった政策を進めて欲しいと思っている議員もいると思う。ただ、それについて発言すると大変なことになるので、みんな沈黙してしまう。沈黙せずに、発言していこう、と思う。寡婦控除の件も同じ話。未婚のひとり親は自民党の今までの伝統的家族観からして排除すべき存在だ、ということでずっと来た。それに対して「違うやん!」と声を上げるのは非常に勇気がいる。今は、幸い、賛同してくれる若手の男性議員もいるので、彼らの協力も得ながら取り組んでいきたい。夫婦別氏の問題は非常に重い問題でもあるので、これを問題提起しただけで、今日も一時間の会議が二時間半の会議になった[3]。
 
夫婦別氏については、政治家でも通称を使えるかどうかの問題がある。国会は通称で選挙に出れるが、地方議会では場所によって議会は通称が認められない場合がある。例えば、神奈川県でも半分は旧姓を使うことが認められていないとの調査結果がある。
 
昨今、女性議員を増やそうという提言と、夫婦別氏に関するこの提言を出して、残念ながら、相当、男性の仲間が離れていった。自分としては選択式夫婦別氏ではなく、届出して使いましょうという折衷案を出したのだが、聞く耳を持ってもらえなかった。女性の国会議員でも反対している議員もおり、「誰も困ってない」とおっしゃる方もいる。国会の場に、困っている人の声が届いていないと思う。それを是非届けて欲しい。
 
寡婦控除の議論の時にも、シングルマザーの皆さんも「自民党が頼れると思わなかった。だからこれまでずっと野党に陳情に行っていた」と言われた。しかし、野党は国民の話を聞くことができても、制度や法律を単独では実現することができない。実現する能力があるのは、与党である自民党なので、是非、自民党に言いに来て欲しい。自分も野党時代を経験した。野党時代に辛かったのは、どんなにいいことを考えても、それを実現する術がないこと。だから政権を取らなければならないと思った。
 
ご家庭と政治活動との両立をどのように実現されているのでしょうか。両立において、悩まれたことはありますでしょうか。
 
もともと弁護士だったので、共働き家庭で子供を育ててきた。家の近くに住む夫の両親や私の父に手伝ってもらっていた。お掃除に方にきてもらったりもしていた。東京に移って国会活動をしているときは、子供達と一緒に住んでいる。子供は二人育てているのでPTAも小中学校お受験もしている。夫は仕事で今大阪にいるので、月の半分は夫の両親、半分は父が来てくれる。その意味では、みんなに助けられないと難しいのが現状。
 
一方、男性の国会議員は、地元に奥さんがいて、奥さんがお葬式など行事に行ってくれる。自分はそういう人もいないし、子供もいるし、両立はかなり難しい。
 
そのように両立が難しい状況の中で、それでも議員になる勇気はどのように持てば良いのでしょうか。
 
私の場合は、最初、政治家は目指していなかったので、直接の参考になるかわからない。「選挙に出てください」と安倍さんに声をかけて頂いた時に、自分は弁護士としてやりたいことをやっていたので、選挙に出る必要があるのかと迷った。しかし、その時、政治通の夫が「自民党から出れるのだったら出た方が良い」と言ってくれた。普通だったら自民党の公認候補になるのはすごく難しい、落ちても失うものはないので出た方が良い、と夫が背中を押してくれた。また、郵政解散選挙という機運もあった。
 
チャンスの時には恐れず飛び込む覚悟がないと、この世界なかなか難しいと思う。
 
私は当時46歳だった。それまでは弁護士として活動し、最後の数年は保守的な歴史認識に関する裁判でやって講演もしていたが、演説をする、人前で話をするなど、当時は大嫌いだった。子供の学校で参加したPTAでも、順番が回ってきて発言するのも心臓がバクバクするぐらいだった。それからすると、選挙に出るとすると、自分のポスター貼って何千人もの前で演説するのはあり得ない…と思ったが、実際にやってみたら、できた。
 
振り返ると、自分は弁護士会では異端な存在だった。南京大虐殺等に関して訴訟を起こすなど、左派集団では極右みたいな存在だったが、自民党に来て、自分に近い考えの人が沢山いることに驚いた。最初はシンポジウムに行っても心臓バクバクで話せないなど、ぐちゃぐちゃだったが、それはもう、場数を踏めばできるようになることだと思う。必要なのは、自分が言いたいことをどう伝えるかを考えること。絶対にそれは慣れると思う。
 
先の総裁選にあたって「仲間が必要」と首相がアドバイスされたと報道されていました。現状「ボーイズクラブ」である政治の世界で、女性議員としてどのように男性も含めた仲間を集めていく秘訣は何でしょうか。
 
女性問題に取り組んでいるので、超保守的な男性議員はやや距離をおかれている。総裁選に出るには20人の推薦人が必要になり、ここからどう仲間づくりするかは自分の課題。
 
男性議員については、女性に関わる問題について理解ができないのだろうと感じることもある。クオータ制など、「なんで女性に下駄を履かせるんだ」という感覚。夫婦別氏についても、96%は女性が変えている。そうすると男性で改姓の苦労をしたことがある人がいないので、理解、共感ができない。そういった中で、どうやって共感を醸成していくのかが課題。
 
一方で、女性が女性に厳しいという現象もあり、「政治は男性にやってもらいたい」と思っている女性もいる。例えば、もし男女二人の候補がいたら男性の方が良い、という女性も多い。だから、ある程度クオータ制を入れていかないと女性は増えない現状がある。空白区が出たら女性を優先することなど党で決めないと増えないと思う。例えば衆議院11ブロックの比例の上位を女性にすることで11人は女性議員を増やすという提言も、比例の議席が惜敗率で決まるところを奪われることは理解されないだろう。選挙制度を変えないとなかなか増やすのは難しい。地方議会でも女性が増えないと国会に女性議員は増えないと思う。
  
最後に、後続女性たちが将来首相になるためにどのようなアドバイスをされますか。また、次世代の女性たちのために、どのような政策・社会を実現したいとお考えでしょうか。

 
最高裁判事のギンズバーグ氏が言った言葉に、「自分が大切にしているもののために闘いなさい。でも他の人があなたにそれに賛同するような闘い方をするのです」」というのがある。どうしたら他の人の共感を得て巻き込めるのか、その視点が必要です。寡婦控除の時も最終的に男性をも巻き込んだので成立することができた。
 
女性が少ない中で仲間づくりは難しいがどうやって自分のファンを増やしていくかが非常に重要だと思う。どうしても、女性議員は自分の前の階段を登っていく過程でその余裕がない。目の前のことでいっぱいいっぱいになるけれど、少し余裕を持って色々な人を大切にすることがとても重要だなと思う。
 
次世代の女性たちのためにどのような政策・社会をという点については、自由、公平、多様性が大事だと思う。これらの言葉を挙げると「それは自民党ではない」と言われるけれど、これこそが保守の思想だと思う。謙虚で、多様性を認めて、色々な人の話を聞いて、誰も取り残さない国民政党が自民党であるはず。そういう社会を実現したい。

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[1] 2019年5月28日には女性議員を増やすためのとうの政策として「党として女性候補増加のための崇一目標を設定する」などの項目を含め8項目の提案を実行。
[2] 未婚のひとり親にも等しく寡婦控除を認めるという自民党税調での方針変更。
[3] 同日、自民党では内閣第一部会と女性活躍推進特別委員会の合同会議が開催され、第五次男女共同参画基本計画案が議論されており、選択的夫婦別姓制度について議論が紛糾したと報じられている。

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