植物と動物と愛する人　1

　なぜ、私が大学院に進学した理由は、亡き主人が経営していた鍼灸整骨院の差別化をすること。そして、もう一つは家族の健康を最先端の医療で守りたかったのです。植物のエキスで研究ができないか？と考えていました。植物の薬効にも興味があったので、進学を決意した訳です。

　私は幼い頃から祖父母に植物の育て方や、近くの山に生えている木々の実が食べられるのか、どんな花が咲くのか、そして、その見分け方などを教えてくれました。不作の時に花を咲かす植物も教えてくれました。そんな経験から興味を持ち、私の夢は育種家になることでした。

　たまたま、小学生の時に見たBBC放送で、シャクナゲの品種改良を行っている番組を見たのです。それは、とても綺麗な花を自分で作れるというものでした。今までは自分で作るという発想はなく、与えられた図鑑３冊と、祖父母の経験則だけでしたが、この番組に衝撃を受け、お小遣いから、日本のシャクナゲをやっと中学生になった時、買うことができたのです。

　学校の帰りにたまたま見つけた近くの植木屋さんに行き、そこのオーナー夫婦と仲良くなりました。中学生がシャクナゲに興味を持つことが珍しかったらしく、オーナーは育て方を丁寧に教えてくれました。高価なシャクナゲもありましたが、私には自由に使えるお金というものは、殆ど無かったので、買うにはとても勇気がいるものでした。まず、私は伯母夫婦の許可を得ないと、お小遣いから好きなものを買うことは許されませんでした。お年玉もそのひとつです。買い物をする習慣というのはレコードとピアノのための楽譜のみでしたから、大人になるまでお金を使うことは殆どありませんでした。