夏、お客を待ちながら。

夏、湿気を含む空気が腕にまとわりついている。
日焼け止めを塗り忘れた肌を太陽はジリジリと焼いて、気づけば肌はトーンを落とす。

こんなに暑い毎日にもお客はなんとなく来てくれる。みんなが汗をかきながらうちを目指してくれていることを考えるとありがたみと誇らしさを感じる。

カウンターの中で待つ僕はドアを開けたその人がどんな風にうちに来たのか少し考えながらお水を出したり、会話をしたり、店の説明をする。

店には駐車場がないから、お客の多くは徒歩、もしくは自転車でくる。
電車を乗り継いで駅から10分の喫茶店を目指してきてくれる人は一体どんな人なんだろうか。

悩んでいるお客にはメニューの説明をして、相談して飲み物を決めて注文を受けて、飲み物を作る。

店に来るお客は、話に来る人や単純に珈琲を楽しみに来る人、時間空間を楽しみに来る人、落ち着きに来る人、様々な人がいるし、年齢層も小学生から杖を付く人まで様々だ。

みんなが少しずつ違うから、みんなの話を聞きながらなんとなく合いそうなものを選ぶ。

シロップを炭酸で割って、氷を入れて炭酸をもう一度入れる。グラスの中で泡が水面に向かっていく、少しかき回してからアイスクリームを乗せる。
あるいは、豆を挽いてドリッパーにセットしてお湯を回しかける。少し待って、ゆっくりとお湯を注いでいく。赤茶色の液がポタポタと落ちて、お湯を足すと、ツーっと落ちていくようになる。ゆっくりとゆっくりと、そうしてグラスを満たす。

コースターと一緒に飲み物を出して、ケーキの注文があれば、前日用意したものに少し手を加えてお客に出す。

すべてを出し切ったら、お客の動きを見ながら会話をしたり、次の注文を取りに行ったり、本を読んだりしながら時間を過ごす。

時たま作るご飯も気まぐれで作っているから、出たり出なかったりする。
夏の間の人気はカレーライスだ。

玉ねぎを炒めてトマトを加えて何種類かのスパイスを加えて煮込む。
シンプルに少しだけ手をかけたお家のカレー。

手をかけたものを用意することがなんとなくお客のためになる気がするから、しっかりと手をかけて、お菓子と珈琲、時々ご飯を用意して、暑い中来てくれる人を待つ。


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