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胡蝶蘭の本音

 フランス旅行した時、パリのカフェに飾ってあった胡蝶蘭が、足をとめてじっくりと眺めたくなるほど素敵だった。直径50センチほどの火鉢のような形の植木鉢に5~6株の寄せ植えされていて、そこから花の芽がピュウ~とあちらこちらと自由に伸びて、少し小ぶりの花が3つ咲き始めたところだった。その鉢植えは、テーブルよりは少し低い台に載せられて、店内とテラスの間の柱の前に飾られていた。
 胡蝶蘭の葉っぱは根元に付くから、そこから花芽だけが伸びていくのに、この鉢と寄せ植えの感じがとてもバランスが良い。しかし花芽は太陽の方に伸びていくだろうからおそらく支柱がついているのだろうが、その支えが風や重みの支えだけであって、強制的の支えでないところが、遠くからも目を見張る美しさを放っていた。それは日本でよく見かける贈答用の胡蝶蘭とは別物だった。

 贈答用の胡蝶蘭の花を頂いたときは、お水を全く上げずに2か月くらい楽しみます。この花びらの光沢をどこから捻出しているのか、植物の生命力には感心させられる。ようやく上の方から1つ2つとしおれていき、最後の3~4個くらいになったら花瓶に入れて楽しみ、鉢を解体。まず花芽を消毒したはさみで切り、茎と針金が5cm間隔でがっちり固定されているテープをはがし、針金を力を入れて引っこ抜く。発泡スチロールで固定されたビニール鉢を取り出し中身を押し出すと、パンパンに根っことミズゴケが詰まっている。これらを優しくほぐして素焼きの鉢に植え直す。
これがなかなか大変な作業で、いつも重い腰をあげて取り掛かるのだが、これを窓辺において無精な水やりするだけで、翌年には自由に花芽を伸ばして小ぶりのかわいい花をつけてくれるので、やらないわけにはいかない。

贈答用の蘭はそれはそれは豪華で見事なんだけど、そのあとの家でのんびりくつろいだ蘭は、自由でのびのびしていて、無理をしていない美しさがある。
いや、でも贈答用胡蝶蘭からしたら、「たくさん栄養補給して、コルセット(針金)はめなさいよ!もっときつく!美しく見せなさいよ!」っていう胡蝶蘭もたまにはいるかもしれない。

贈答用と、カジュアル使用の贈答用というのを作ったらと思ったりします。そうすれば贈答用胡蝶蘭も納得して、「どうよ!」って感じで高層階の社長室とかに置いてもらえるし、カジュアル贈答用はカフェのオープンに立ち会ってもそのままずっと可愛がってもらえるに違いない。

でもあのパリの寄せ植えがなかなかマネできないんです、家でも挑戦してるんですけど。


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