見出し画像

突然の来客者

 花束を頂くと、率直に「嬉しい」というよりは、「お、来ましたな。」というグッと身構える気持ちになります。

 まず、その豪華な梱包のビニールを解いて環境問題を頭にちらつかせながらゴミ箱に捨て、赤い模様の入った厚手の紙を「なんかに使えるかな、どうしよう」とオロオロするところから始まります。それから花瓶を何個か出してきて、長すぎる茎を切ったり切りすぎたりして活けなければなりません。

 そのあと第2の問題が起こります。お花の色の組み合わせがどうも好みに合わないのです。いやいや、プロのお花屋さんが季節に合わせたお花を選んでくださっているのは重々承知なのですが、まあ好みの問題ですよね。
そんなときは、1つの花瓶に1種類のお花を活けて解決しています。ですので1つの花束から3~4個の花瓶に分けて、家じゅうに配置する。小さいものはトイレや洗面所にも置けますし、1種類の色でスッキリと、本来の植物の美しさをストレートに味わうことが出来るような気がします。

黄色いバラ

 さて次の第3の問題。これがある意味一番の、シトシトと降り続く長雨のようにじんわりと私を襲ってくる大問題なのです。
 ある日突然何の連絡もなしに家にやってきて、「どうもお邪魔しまーす。今日からここに住みますんで宜しく」居座ったあなた。それなのに私のスケジュールも気にせず、「僕を描かないんですか?今ちょうどいい感じの時なんですけどー。」とガンガン匂いで訴えかけてくるってどういうことですか!
いや、きれいだし描きたいけど…今日はちょっとやらなきゃならないことあるし…。とマゴマゴしてると、花びらを茶色くさせたりなんかして。飾っている間、ただ眺めるだけということを許さないのです。じんわり刻一刻と、いや時にはすごいスピードで枯れていってしまう切り花のはかなさに、さすがのんびり屋の私も「いや、描きますよ。描かせていただきます。」と、スケジュールそっちのけで描きました。いやはや、なんとも奔放な来客者なのです。

カサブランカ

 『おすすめの手土産』という特集記事で、「やっぱり花束ですよね。とても喜ばれます」とかいうのを見たけど、いやいや、それは人によりますよ。と独り言をぼやきました。

こんな感じで、花束を頂くと私は身構えます。もちろん嬉しいです、部屋が華やぎますからね。私のスケジュールなんて、まあ少しぐらい乱れてもなんとかなります、きっと。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?