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社内のリスクを一手に集約したビジネス・プロダクトリスク相談窓口を仕組み化して事業を加速する~攻めるためには守りをきちんと固めよう~

官僚からスタートアップへ転職して1年経ちました

こんにちは。Ubie DiscoveryでPA(パブリック・アフェアーズ、公共政策渉外・企画)を担当しているjuncos(@juncostk)です。Ubieに転職するまでは10年ちょっと国家公務員として中央省庁で働いていました。このnoteの前に入社エントリーを書いていますが、それから1年以上経ち相変わらず楽しく働いています。
業務の中心はもちろんPAではあるのですが、PAから派生してLegalっぽいことをやったりユーザーサポートをやったりBizDevとして色々な業務をやっています。(こういうところがまさにスタートアップだなぁと思います。)
その中で、昨年後半から社内にリスク相談窓口を設けたことについて、今回はnoteにしてみようと思います。
いかに事業の推進とリスクテイクのバランスを取りながらスピード感を持って伴走していくと良いのか、この辺りにもやもやを抱えているスタートアップのリスク・コンプライアンス界隈の方の参考になれば幸いです!

コーポレート・マーケット・プロダクトの乖離と葛藤

Ubieはもともと開発組織であるUbie Discoveryを中心にして拡大してきた経緯があり、私が担当するPAを含むリスク・コンプライアンスを司るLegalやSecurityなどの機能は当初はUbie Discovery内に存在していました。

組織が徐々に大きくなり、昨年コーポレート組織(Ubie Corporate)が新しく立ち上がりました。リスク・コンプライアンス機能はプロダクトだけではなく全社的に必要なものなので、Ubie Corporate立ち上げとともに、Legalなどの機能の大部分がUbie Discoveryから移管されました。

とはいえ、よりプロダクトに近い立場からリスクを検討する体制がUbie Discovery内にも引き続き欲しい。都度コーポレート組織に相談していたら、開発スピードを損ねることになるかもしれない。
それに加えて、プロダクトに何らかのリスクがあったときに、LegalやPAは直接手を動かして対応することは出来ず、実際に対応するのはテクニカルなことが分かるエンジニア勢であるという葛藤を感じていました。

だったら、法令・ガイドライン等のいわゆるリスク・コンプライアンスに関するアセス機能とプロダクト側のテクニカルアセス機能を一緒にして、リスク相談窓口を作れば良いんじゃない?という発想で、プロダクト / マーケットリスクを横串的に俯瞰するチームを立ち上げ、Ubie Discovery内の主にプロダクトに関係するリスクを事前に相談する窓口が出来ました

Slackでスタンプを押すだけ!リスク相談窓口の仕組み

Slackチャンネルで簡単ワンストップ相談

Slackの実際の画面


Slackに専用の相談チャンネルを作りました。
新規施策に取り組む際、主に法令・ガイドライン / セキュリティ /  医療倫理等のいわゆるリスク・コンプライアンス的なものを相談出来るチャンネル(リスクレビュー)と、テクニカルな問題を相談出来るチャンネル(テックレビュー)を作りました。Ubie Discoveryのメンバーであれば誰でもレビューを依頼できます。

リスクレビューではプロダクト的な法令・ガイドライン対応ということで、事例によってはコーポレート組織の法務も関わりますが、規制当局と普段からやり取りをしているPAの私とmoeshiが主にチェックしています。その他プロダクトセキュリティ担当者や医療倫理担当として医師がチェックする等、多角的な観点からレビューを行っています。
またテックレビューについても、他のプロダクトへの影響がないか、データベースに影響がないか等のテクニカルな点について多角的にチェックを行っています。

関係者が一つの相談チャンネルに集まっているので、相談はこのチャンネルだけで完結してたらい回しにされることはなく、迅速に進めることを可能にしています

具体的なレビューの手順としては、Slackの相談チャンネルに相談したい施策について投稿し、チケットのスタンプを押すと自動的にJIRAと連携してチケットが生成されます(Halpという連携アプリを活用しています)。その後はSlackのスレッドでやり取りを行うとJIRAのチケット内にもやり取りが同期されるようになっています。

新規施策について論点が少なかったりちょっとした確認程度のものであれば、Slack内でのやり取りで完結しますが、複雑な案件でSlackの短文だけでは説明しづらいといった場合にはnotionで作成したテンプレに施策の詳細を記載して貰い、スレッド内で共有した上でそこでやり取りをすることもあります。

相談する側・受ける側どちらにもメリットがたくさん!


やりとりが明確でスムーズになった!

それまでも、契約レビュー等定型的な相談については、専用のSlackチャンネルを作り、運用を型化して回していました。他方でプロダクトの相談となると、一応LegalチャンネルやSecurityチャンネルは存在しており、各チャンネルに相談を持ち込むこともあれば、それぞれのプロダクトの開発チャンネルで適宜担当者をメンションする等、窓口が一本に徹底しきれておらず、リソースの問題等もあり対応が型化出来ていませんでした。

そこで、まずは窓口の一本化を行いました。これにより、相談先が明確化され、近い関係者以外にはどこで誰が何を相談しているのか良く見えにくい(※)ということがなくなり、透明性が向上しました。
※ 基本はSlackのpublicチャンネルでやり取りしているので、見えない訳ではもちろんありません。

また、事前に相談用の簡易なテンプレを公開しており、相談の際に何が最低限押さえるべきポイントになるかが明確であることから、準備もしやすいし、論点がはっきりした状態でやり取りすることが可能です。

ただ、これはテンプレがあるから、ということだけではなく、UbieではOKRという共通の目標を持ち、その達成のために常に本質(Why, What)に向き合って事業推進を考えるということを組織のカルチャーとして大切にしています。そのため、相談する際も何が本質的な論点となるのかを相談する側も受ける側もメンバー1人1人が意識しているから、スムーズにやり取りが出来ているところもあるのではないかと思っています。

知見が集約されて生産性が向上した!

また、窓口を一本化したことで相談を簡単に一覧化して見られるようになりました。特に、Slackだけだとどうしても情報がすぐに流れていきがちですが、前述の通り、全てのSlackでのやり取りが同期されてJIRAのチケットとして残るため、チケットをクローズした後にも簡単に検索可能なので、類似事例をすぐに確認でき相談前に一定あたりをつけることができます。

こんな感じで簡単に検索できます

事前にあたりをつけて検討可能なため、手戻りが少なくなりメンバーの生産性向上にも寄与していると思います。

負債を回避しながら事業を推進!

以前は相談フローが型化されていなかったため、リスク検討がきちんとされないまま実施されていた施策もおそらくあったかと思います。
幸い大きな問題にはならずに今まで来ていますが、今も気づいていない何らかの負債としてどこかに眠っているという可能性もあるかもしれません。
今は新規施策を開始する前には必ず相談するという意識が社内にかなりしっかり根付いてきており、知らないところで負債が積まれていく、ということはほぼなくなってきているのではないかと思います。

もしかして相談するとリスクが見つかってLegalやSecurityに止められるからこっそり進めてしまえ、という輩が出てくるのでは…?と思う方もいるかもしれませんが、相談を受ける側の基本的なスタンスとして事業をスピード感を持って強力に推進したいと思っています
仮に何かリスクがありそう、となってもじゃあ止めて下さいということにはせず、事業についてきちんと理解した上で、どういう対応をすれば施策を実現できるか一緒に考えるというスタンスが伝わっているからこそ、各メンバーにもちゃんと相談をするぞ、という意識が根付いたのではないかと思います。

良い仕組みはどんどん横展開

そんなわけで、開発組織であるUbie Discovery内に出来たリスク相談窓口は数か月で良い感じに運用が回るような状況になりました。
Ubieにはコーポレート組織(Ubie Corporate)と開発組織(Ubie Discovery)の他に医療機関向け事業組織(Ubie Customer Science)と製薬企業向け事業組織(Ubie Pharma Innovation)があります。
リスクアセスが求められるのは主にプロダクト開発の局面が多いのですが、その他の組織でも全く何もないということはないものの、きちんとした相談窓口の仕組みは出来ていませんでした。

そこで、Ubie Discoveryで立ち上げたリスク相談窓口をほぼ踏襲する形でコーポレート組織にも作って、全社的に展開すれば良いのでは?という話になり、先日、Ubie Corporate内に各組織向けの相談チャンネルが開設され運用が開始されました。
こうして他組織で出来た良い仕組みがシュッと横展開される、というのもUbieらしいところかなと思います。

人が足りません…!

リスク相談窓口を開発組織に作り、さらにそれを全社展開して良い感じに運用しているところです!が、窓口は広げたものの、レビュワーとして対応している人員は実は全然増えていません…
特に、我こそはバランス良くリスクテイクしながら事業を推進していくぞ!というLegalのメンバーを切実に募集しております!!!!
Legal自体はコーポレート組織の所属になるのですが、それ以外でもUbie Discoveryではめちゃめちゃメンバー募集中なので、是非是非ご検討下さい。
お待ちしております!


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