NHKドキュメント「嘘と政治と民主主義 ―米議会乱入事件―」

  NHKドキュメント「嘘と政治と民主主義 ―米議会乱入事件―」を見た。二夜連続で前後編を録画していたので続けて観た。
  2021年1月6日にトランプ支持者がアメリカの国会議事堂に乱入した事件を中心に取材したドキュメントだ。
  トランプが2016年の大統領選挙に出ようとしているところから取り上げていたが、彼のやり方は常に同じだったのだ。自分の都合の悪いことは全て嘘と言い続け、敵と見なす人は全て徹底的に叩き潰すと言う手法を一貫して取っていた。つまり、その段階で民主主義国のリーダーの資格はないはずなのに共和党は易々と認め、今も擁護している。そして、大統領となってからは、自分の目的を達成するためには、社会的に悪と見なされているグループとも手を組む、それを大統領の4年間やり続けた結果、白人至上主義者やナチス主義、武装集団まで白日の下に出てくることになったのだ。これまで公然と行動を起こすことが憚られた世間の良識を外れることを恐れる必要がなくなったのだ。それこそ彼らの心の底の心情を行動に表わす快感を知ってしまった。平気で弱者を差別し、暴力を加えると云う近代的市民の常識を踏みにじる喜びを味わったのだ。それが1月6日の国会議事堂占拠事件で5人の死者まで出す状況を作り出したのだ。それを煽ったのは、明らかにトランプだった。全ての状況証拠がそれを証明している。さらに、それを支えたのは、共和党の大多数の議員たちであり、アメリカの分断の大きな原因を作ったのはそうした共和党の大多数の政治家なのだ。
  私が思ったのは約1世紀前にドイツでヒトラーが出現し国民を煽動して破局に導いた状況と酷似したものがアメリカにあり、今のアメリカの政治状況にも色濃く表れているものと感じた。公然と権威を敵とし、人種差別、宗教差別を煽るやり方はナチスがドイツでユダヤ人を敵と見定め、攻撃を加えている行動をドイツ国民は支持する心情にまで陥っていたのだ。アメリカでも多くの国民がその思いに囚われているが、昨年の中間選挙の結果を見れば、崖っぷちで踏みとどまっているような状態なのだろう。
  ヒトラーが率いたナチスは断罪された。しかし、アメリカでは、トランプが全く罪にも問われないで、公然と活動をしている。その有様は、ヒトラーが咎められることなく日常的に活動を展開しているのと同様の状態なのだ、と思った。ただこのような状況は、どこの先進国でも起こりうることなのだと言うことを肝に銘じる必要がある。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?