「アメリカの銃規制問題と日本の施策」

 非営利団体「ガン・バイオレンス・アーカイブ」の6月8日までの集計によると、死傷者が4人以上の銃撃事件は2022年に入ってすでに251件発生し、1日あたり1.6件にのぼるということだ。
このうち今回のような「大量殺人事件」は12件。去年一年間で銃撃で亡くなった17歳以下の子供は前の年より13%増え、1500人を超えたという。
米国は民間で4億丁の銃を所有しているとされていて、100人の住民に対して120丁の割合となる。世界第2位のイエメンは52丁なので、米国は地球上で群を抜く銃社会だ。
 にも拘らず、一向に法律が規制の方向に向かわない。それは全米ライフル協会と云う最強のロビー団体が強力に共和党議員にアタックしているからだ。共和党は上院ではいかなる立法措置も止めることができる勢力を有しているからだ。前大統領トランプも強力な銃容認派なのだ。
 しかし、我が国に振り返って考えてみると、強力なロビー団体として考えられる組織がいくつもある。それは日本の場合は、金よりも票に結び付く。 だから、強力に我田引水の施策がまかり通り、税金がそちらに流れていくのだ。それ等が、アメリカのように国民の命を直ちに奪う行為にならないから目立たないだけで、日本の失われた30年の元凶はその辺にあるのではないかと思われるのだ。つまり、国民の生活に直結している施策に反映しているのだ。
 例えば、日本医師会。この勢力のおかげで、日本のコロナ対策の医療部門の施策が進まなかったのはいまだに生々しい記憶としてある。遠隔診療、医療のデジタル化、ワクチン注射の要員の緩和、本格的なかかりつけ医制度の導入など、ことごとく日本医師会の意向でねじ曲げられてきた。
 さらには、コロナ禍で中小企業対策として、多くのゾンビ企業を延命させてきた。今後、この援助が切れた時、倒産する企業が続出し、政府は貸し倒れで多額の税金が回収不能になることだろう。これも、全国の中小企業が集う商工会議所は強力な圧力団体で地域の選挙の実働部隊だ。この集票組織は自民党の屋台骨を支えてきたのだ。さらに強力なロビー団体は農協などいくつもある。これらのロビー団体の要望をまとめたのが、今の政府の施策であり、先進国で唯一30年も国民の所得が上がらない状態を生み出しているのだ。政府は決して国民全体のことを考えていない。やはり強力なロビー活動団体の意向に流れていくのが常なのだ。
 だから、アメリカの銃規制が進まないのと日本の支配構造が変わらないのは同根なのだ。
 アメリカの国情を嘆くだけではなく、同じ原因が日本の沈みゆく経済を作っていることを知らなければならない。
 実際に人が目の前でバタバタと死なないが、真綿で首を絞められるような状態が今の日本ではないだろうか?

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