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プレーの前進を可能にさせる”7角形ポゼッションTR”とは?
【この記事を書いてる人】
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当記事の内容を動画で視聴されたい方はこちらからご覧ください。
”ポゼッション式トレーニング”
サッカー指導者の方なら一度は聞いたこと、行ったことあると思います。育成年代においてカテゴリーに関係なく頻繁に導入される練習メニューの1つです。
”ボールポゼッションがゴールとなってはいけない。ボールポゼッションはあくまでも相手ゴールへ向かって前進するための1つのツールにすぎない”
今回の記事ではそんなポゼッション形式トレーニングの中でも「プレーの前進」を促すために非常に有効なポゼッションメニューを1つ紹介します
がその前に…
ポゼッション形式と聞いたことがある指導者は多くいても、その形式の特徴や利用シーン、導入のタイミングやポゼッション形式という同じ形式の中にある異なったタイプの分別と整理を行った上で、現場のトレーニングで実践をている指導者はかなり少ないです。
今の時代、特に指導者に求められるタスクはそれら存在するトレーンング形式の特徴をしっかりと理解した上で、それに応じた適切なタイミングで導入を行うことです。
トレーニング形式の名前や、構造だけ知り実行さえすればいいのであれば、誰でも携帯片手にネットを開けば知ることができます。
ということで本記事の内容に進む前にまずはこちらの動画を視聴した上で、ポゼッション形式トレーニングの整理をしてみてください。すでに間違った利用シーンでトレーニングを行ってしまっているかもしれません。
”斜めのパスをを誘発したかった”
少し時間は遡りますが、2020/2021シーズンのチェルシーvsマンチェスター・シティの決勝戦を覚えているでしょうか。
当時、チェルシーを率いていたのはドイツ人監督トーマス・トゥヘル。シティは現監督でもあるペップ・グアルディオラが指揮をとる中で、名将同士の対戦という意味でも非常に注目されていた一戦でしたが、結果は1-0でチェルシーの勝利。
この試合、もちろん注目されたのですが、試合内容以上にヨーロッパの指導者界隈でも話題となったのが試合前日にチェルシーが行っていたとあるウォーミングアップでした。
我々指導者にとっては非常に贅沢なことに、試合前日のチェルシーのトレーニング様子が地上波で流れていたのですが、その中でも特に注目を集めたのが今回のタイトルにもある当時の監督トゥヘルが行っていた「7角形ポゼッションTR」でした。
トレーニングの主な構造は以下の通り↓
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人数構成: 7vs7+8フリーマン(グリッド外7人とグリッド内1人)
※外/中のフリーマンの配置は、実際のシステムを想定したもので可能。この試合の場合、チェルシーは攻撃時はシステムが1-3-4-2-1に変動し、ウェルナー・ハヴェルツ・マウントが前線の3枚として構成されていたのでもしかするとフリーマンの配置イメージは図にも記している通り、3-4-2-1を想定したものだったかもしれません。ただ動画を見る限り、それぞれのポジションでプレーしている選手を見ればそこまでのこだわりはなかったようにも見えます。
ノルマ:
① 外フリーマンは1タッチのみ
② ”外フリーマン間”のパス交換は無し
③ 外のフリーマンはそれぞれの辺でプレー
④ グリッド内のプレーヤーの配置は自由
各フリーマンは、ボール保持チームとプレーをし一定のタイミングで中と外のチームのローテーションが行われます。かなり縮小されたスペース設定の中で行われているのでトレーニング自体のダイナミック性が出ることも特緒的です。
またこの類のポゼッションは、トゥヘルがチェルシー時代のみに行っていたものではなく以下にも共有する通りドルトムント/PSG時代にも同じ形式でのトレーニングを行っていました。
ただなぜポゼッションTRを7角形で行うのか?その目的が一番気になるところですし、興味深ところですよね。
以前トゥヘル本人がとあるインタビューにてこのような話をしています。
これまでの私たちは(彼がマインツを指揮していた時代)サイドに張るサイドバックへの横へのパスや、サイドバックから幅をとっているウイングへの縦関係のパスをすることが頭の中にコード化されてしまっていた。私はそれが嫌で、チームに前進するために必要な斜めのパスを実行して欲しかった。
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少し注目されたトゥヘルのダイアモンド型ポゼッションはこのような過程で生まれたそうです。 https://t.co/rRY0wNVkXJ pic.twitter.com/PLmrjKLL1i
— Jun Takada / 高田 純 (@ney10jun) May 31, 2021
この考えをトレーニング上で再現するために生まれたのがコートの角を切って行うこの7角形ポゼッショントレーニングだったというわけです。つまり達成したいコンセプトをトレーニングのフォーマットによりプレーへの制限を与え、この斜めのパスというコンセプトを現象として出させるように促したわけです。
我々の選手たちには横パスや縦パスといった決断に簡単な選択肢以上に、よりクリエイティブな斜めへのパスを実行して欲しかった。そのために、口で指示を送る以上に、トレーニングの構造でその現象が出るように意識をした。
トゥヘルはトレーニングを途中でストップさせることが嫌いとも頻繁に述べており、そのような方法はもはや機能しないとまで断言している。そのためには、現象を自然と出させるようなトレーニングの構造が必要でした。
この7角形ポゼッションの明確な特徴でありメリットであるのは、「斜めのパスの誘発」にあり、横パスを減少させることにあります。また、先ほどのノルマにもあった外フリーマン間のパス交換を禁止にしているのは単純な縦パスを防止することにも理由があるかもしれません。
偶然か、必然か、このトレーニングをした翌日の決勝ではその斜めのパスが連発された流れからゴールが生まれ、見事にチェルシーは優勝。
「トレーニングで行ったことは試合に起きる」この言葉、僕はかなり信じる派です。
皆さんはどう考えますか?
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