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【2023夏 スペイン人指導者クリニック】 300人以上の日本人選手とのTRを終えて見えたものと今シーズンのバルセロナでの去就について
※この記事の内容を動画で視聴されたい方はコチラから
皆さんこんにちは! お久しぶりです、高田純です。先日約1ヶ月の日本滞在を終えてバルセロナに戻ってきました。約3年ぶりの日本帰国となった今回の大きな目的は「MLT BARCELONA サッカーサマークリニック2023」開催です。
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自分自身がここ数年のバルセロナ生活の中で指導者として感じたことを日本の子供達に発信すること、また普段スペイン人指導者が行っているトレーニングの形式を通して少しでも日本の選手たちにプラスになればという思いからずっと前から実現したかった企画でしたが、コロナウイルスの影響を含め今回の開催までに時間を要することになりました。
今回、本当にたくさんの方々のご協力のおかげで合計9クラブ(兵庫・大阪・愛媛・三重・石川・岐阜)において、300人以上もの選手と出会いトレーニングを行わせていただきました。感謝です。
MLTバルセロナサッカークリニック開催🎉
— FC.Avenidasol [公式] (@FC_Avenidasol) July 16, 2023
2日間でU15〜U11までのカテゴリーをみっちりTRして頂きました🙇♂️
TR構造への細部に渡るこだわり、熱量、オープンなフィードバックなど、担当のマチュカも通訳もプロフェッショナル👏 pic.twitter.com/HGHccSrocf
共に来日したスペイン指導者も、日本特有の湿度の高い気候に苦戦しながらも、美味しい日本食と共に日本人の選手に対してトレーニングを行いながらたくさんの発見があったそうです。
ということで今回の記事では、この夏スペイン人指導者と日本人選手とのトレーニングを観察する中で感じたポイントをいくつかに集約して書いていきます。
また、記事の最後には僕自身の今シーズンの去就についても少し触れられたらなと思います。自分にとってバルセロナ10シーズン目となるシーズンはまた新たな挑戦となります。ご購読いただけると幸いです。
この記事を書いてる人↓
-バルセロナの育成現場が少しでも気になる方は以下必読!!-
早い段階に外の環境/人に触れ視野を広げる
まじはじめに、今回のクリニックでは一番小さくて6歳、マックス18歳までの幅広いカテゴリーに対して各地でトレーニングを実施しました。
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開催者である自分がこんなこと言ってはなんですが、正直この1-2日間の単発なトレーニングのみで選手たちのパフォーマンスを1から10に一気に上げられるとは僕らも思ってはいなく、そこに第一目標を置いてはいませんでした。これは各クラブの指導者の方々ともお話したことです。
もちろん、行うからには少しでも多くのコンセプトやプレーの手段を吸収してほしいなと思いトレーニングを準備し行うわけですが、一番には普段は中々生で触れ合うことのできないスペイン人指導者の指導を肌感覚で受ける、コミュニケーションをトライしてみる、質問をしてみる…ことで彼ら選手に何かの刺激を与えることができたらなと思っていました。
今回僕はコーディネーター兼通訳としてクリニックに参加しましたが、純粋にとある地方にポツンとあるサッカーグランドに見えるスペイン人指導者と日本の子供たちが笑顔で楽しく交流している姿を見るだけで幸せいっぱいな気持ちになって、この光景を見るだけでも開催してよかったなって思うんです。
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育成年代において重要なこととして選手目線では「視野を広げること」、指導者目線では「彼らに多くの選択肢を与えてあげること」があると思ってます。
僕自身、高校を卒業しバルセロナに渡りましたが振り返ってみると育成年代の小さい頃から海外の環境に触れる機会が家庭内にもありました。何が言いたいかというと、彼ら自身は今の段階で気づきもしないと思いますが今回の経験が彼らの将来への思考に無意識に必ず影響しているということです。
-12歳プレーヤー2人組のバルセロナ挑戦の様子
-U-10日本チームのバルセロナ遠征挑戦の様子
子供達にはたくさんの経験を通してたくさんの選択肢と可能性を持ってキャリアを進んでほしいです。
サマークリニックでの4つの気づき
ではここからもう少し具体的に本題に入ります。僕自身、普段バルセロナにいることから実際に日本の選手たちのトレーニングを見ることが中々できない中、今回の滞在はたくさんの気づきと学びを改めて得ることができました。その中でも、スペイン人ともコメントを交わしながら感じた4つのポイントを順番に見ていきます。
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①我々指導者の固定思考が彼らの可能性にリミットをかけている?
今回のクリニックセッションの作成は自分自身ほとんど介入せず、スペイン人に任せていました。
が…セッション当日に彼とミーティングする中でメニューの内容を見て「いやこれはお前、このカテゴリーに対しては難易度高すぎないか?」といったメニューの構造や「多分この形式は日本の選手にはフィットしないと思うで…」と言った内容で口論が毎回生まれていました。(今思うと彼からするとかなり面倒臭いコーディネーターだったと思います笑 ごめん。)
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ただ、そのような自分の意見に対して彼は「いややってみないとわからないでしょ」と平然な顔で返答してくるわけです。一番わかりやすかったのが6-8歳のカテゴリーに対して行ったセッション回。
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普段バルセロナでトップレベルの選手を指導している彼はなんの躊躇もなくゾーン分けをはじめとするこの学年にしては複雑なノルマを要したポゼッション形式のメニューを行うわけですが、それを見たクラブの指導者も思わず「いやマチュ(彼の名前)、そんなメニュー普段やったことないで…」とツッコミを入れます。
予想通り、開始5分は全く現象も出ないどころかメニューの構造に対して
迷子になる選手続出。ただ、「そりゃそうやで…」と思っていた束の間、10分ほど経過すると少しずつボール保持者に対して両幅がとれるところから始まり、深さを我慢できるところに発展し、ライン間でボールを要求する選手が現れ出しました。
また別日、違うクラブでU-12のチームに対して自動化トレーニングを行った際も同様でした。普段中々行われない特殊なトレーニング構造を見てポカンと口を開ける選手の表情を見て、自分はその日通訳を務めながら「マチュ、勘弁してくれ」と心の中で呟いていましたが、実際に行うと表現力の高い選手たちはしっかり構造を理解し、ベストトレーニングとなりました。
ここで彼の姿勢から学んだことは、自分も含め我々指導者の頭に持つ何か固定思考のようなものが彼らの可能性を制御し、本来そのカテゴリーに応じて必要なコンセプトの習得の指導から目を逸らしているシーンが多いのでは?ということです。
今回のクリニックを見ても、(前提に自チームの選手ではないのでプレーモデルを含めた細かな指示はできないということはありますが、)スペイン人自身何か特別に小難しいキーファクターを送っていたわけでもないのですが、まずは彼らに対するリスペクト(信頼)を送ることから忍耐強く彼らと向き合っていたことを見ると、重要なことはそこにはないんだなと感じました。
②日本人の子供が苦手なTRメニュー形式
次は少しTRのメソッド的観点からです。普段別のSNS媒体でも発信していますが、バルセロナの育成では小学生は長くても1時間15分、ユース年代になっても長くて1時間半(残り練習はなし)の設定の中で、各チームの指導者からすると1分1秒がその日の命となり、可能な限りTRがスムーズに進行するためのTRデザインと、プレーの継続性を意識します。(それが行き過ぎる時、給水タイムすらカットしてしまう指導者もいます)
今回のクリニックで少し気になったのは、1メニューと1メニュー間の継続性と、切替の部分。前提に初めての指導者、ましてやそれが外国人コーチの前で戸惑いもあったとは思います。が、1メニュー1メニューが終わるごとの何か1度スイッチが完全停止してしまうような感覚は少し気になり、折角に士気が高まってきたところからまた再度彼らのメンタル面にマネジメントをコントロールしながら次のセッションに入らなければいけないことに少し苦戦をしました。
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また継続性という意味では、メニュー内でも同じで何かローテーションの多く常に頭を動かす継続性が必要なメニューや、プレーの展開が早まるトランジションが多発するようなメニューも苦手でその都度その都度で足が止まってしまう印象を受けました。ただこれが、これらのメニューの説明をする際からその構造を理解するのにもかなり苦戦していたので、普段あまり行わないような形式の1つなのかなとも感じました。
③プレーリズムとバックパスの定義
次はよりプレー内の話について。合計30セッション以上を行う中で、スペイン人と共に日本人プレーヤーの特徴を分析しながらクリニックを進行していました。その中でカテゴリーやその日のテーマに関係なく、どのTRでも彼らに伝え修正していこうと決めたコンセプトが以下の3つでした。
プレーリズムの定義
バックパスの有効性 (なぜ行うのか?)
プレーにブレーキを置く
この中でも彼らのプレーを観察する中で気になったのがプレーリズム。僕らがメニューの中で”プレーリズム”というワードを強調すると「プレーのリズムを高める」のみに頭が走ってしまうという点。3人目の動き時の2人目の落としは必ず1タッチだとか、トランジション時は必ず前に速攻だとか。
バルセロナの育成でも頻繁に話されるプレーリズムに対する定義は、「プレーに緩急をつける」こと。それは何も高めるだけではなく、あえて2タッチをしてプレーに緩急をつけることも含まれます。このプレーに緩急を与えられる選手が、インテリジェンスの高い選手としても評価されますが、根本的なプレーリズムに対する理解が異なるのかなと見ていて感じました。
④過度なフリーズ(プレー介入)と規律性から生まれる弊害
今回、スペイン人の指導者からのTRということで明らかに選手たちは緊張していました。そんな彼らの士気を上げようと、メニュー中の声かけや介入を意識的に増やし、冒頭にも言ったように少しでも多くのことを吸収してほしいということから普段よりもかなり多くフリーズの機会も設けていました。
そこでやはり難しかったのが、過度な介入から引き起こる選手間でのコミュニケーション不足です。フットボールにおいてかなり重要な役割を担うコミュニケーションの部分を彼らの中で生み出すために,2つ目のメニューからは意識的に介入の数を減らしたりしていましたが、やはりその瞬間TRがシーンとしてしまうことが多々起きました。
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他にも、今回の滞在期間でスペイン人が一番学び感銘を受けたのが彼らの規律性の部分でした。TR用具の回収スピードや、荷物の整理整頓。規律ある振る舞いにびっくりしていたのですが、それがその場その場での判断を求められるフットボールにおいてネガティブに働く部分を多く見たともコメントしていました。
先ほどのプレーの継続性ではないですが、例えばポゼッション形式やゲーム形式などを行っている際に、少しボールがグリッドから出た場面でコーチの様子を見て、何かコーチからのオーダーをずっと待っているシーンも多く見受けられました。
国民性や選手のキャラクターも含めれるこのテーマは難しい部分ではありますが、普段から行う指導者と選手間におけるマネジメントと関係性次第では、自由度と規律性のバランスは縮めれると考えます。
ということでざっくり、自分自身のインプットも含め夏の振り返りを書きました。まだまだ話したいこともありますが、またyoutubeなどでも小分けにして発信したいと思います。とにかく、言いたいことは僕自身が一番学びを得た夏になったということ。選手含めた全ての人の感謝です。
新シーズンの去就…
最後に個人的な話ですが新シーズンの指導者としての活動について少しだけ。先日バルセロナに戻った2日後には早速チームのプレシーズンがスタートしたのですが、2023-2024シーズンは同クラブUE CORNELLA にてユースの最高学年のカテゴリーチームに所属します。ユース一部になるのでバルサやエスパニョールの他に、以前香川選手が所属もしていたレアル・サラゴサのユースチームや、岡崎選手も所属していたウエスカなども同グループにいます。
このディビジョンになると、ほとんどトップと同じようなシーズンの過ごし方になります。今シーズンは同じディビジョンに離島マジョルカのチームが3チームいるのでアウェイ戦では飛行機での移動も発生します。
当クラブでは8シーズン目の活動となりますが、育成年代のマックスのカテゴリーでの指導は初めてなのでまた自分にとっては新たな挑戦です。
長いシーズンの始まりですが、この環境に浸かれることに感謝しながら過ごしていきます。またその都度その都度チームの話は更新します。
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